■現在まで、そして未来

現在に至るまで

こうして文字は現在わたしたちの利用している文字になりました。世界中の現用文字はいくつあるのかははっきりしていませんが、だいたい30〜40種ぐらいであるとされています。それらはすべて1000年前ごろにはほとんど今に近い形で存在していました。

楔形文字からはじまった文字が最終的には究極の単純形である「ラテン文字」になったかと思いきや、その筆者すら把握しきれないほど膨大な文字数をもつ「漢字」に分かれたりしたことの経緯を考えると、ひとつひとつの文字には統計では語れないような歴史があることがわかると思います。わたしたち「MOZIの歴史」メンバーは、古今東西に存在した数百種もの文字の中からいくつか重要なものを抜粋し、簡単な歴史と特徴を記したものをまとめました。→文字事典

未来の文字

言うまでもなく歴史は今現在も作られています。文字はその誕生から5000年以上たちますが、その間絶えず進化を繰り返してきました。では、今世界中に存在している数十の文字たちは今後どうなってしまうのでしょう?

ひとつの概念として「世界文字」というものがあります。おそらく今後も文字の淘汰は続き、最終的には世界で共通の文字が一種類のみ残る、という考え方です。その有力候補は「ラテン文字」です。もしかしたら日本でも公用文字がアルファベットの時代が来るのかもしれません。(世界文字について詳しくは「文字の未来」を参照。)

おわりに

ここまで文字の歴史を見てきてわかったことの中で最も大事なことは「文字は利便性を求めて進化しつづけている」ということだと思います。ラテン文字などはすでに簡略化がほとんど完了し、誰でも瞬時に筆記できるものとなっています。比べて漢字はどうでしょう。漢字は画数も多く読みも複雑で、学習や筆記が容易ではありません。しかしよく注意してみると漢字も進化しているのです。分かり易い例に旧字体の漢字があります。これは「栄」と「榮」、「国」と「國」などで、複雑な漢字を簡略したものです。それだけでなく、わたしたちも知らず知らずのうちに文字を進化させているのです。たとえば、部首の門構えの簡略化などです。今でこそ学校や正式な書類でこのような書き方をするのは注意が必要ですが、将来おそらく新字体として正式に漢字の仲間入りをするでしょう。こうして文字は今日も進化しているのです。

また、「文字はいつなくなってもおかしくないことを認識する」ことも大事だと思いました。今なお歴史的文字の中で未解読のものがあることが示すように、文字はその筆者がいなくなったとたんにその価値が失われてしまいます。ですから私たちは文字を守らなくてはいけないのではないでしょうか。「文字の未来」の通り、これから数百年後、数千年後には世界共通文字が生まれるでしょう。そうしたら世界の長い歴史を持った文字たちが失われてしまうかもしれません。漢字・ひらがな・カタカナも例外ではないでしょう。私たちが私たちの文字を残すためには、まず文字の歴史を知ることが大事なのです。