活字印刷

活字とは活版印刷を行う際に文字を印字するためのものである。
おもに木製、金属製のものが多く、
木製の場合においては彫刻、金属の場合においては鋳造によって制作される。
鋳造活字は彫刻活字よりも大量に同じものを生産するという面で勝っている。

活字は中国において発明されたが、
漢字は膨大な種類を持つ点から、最も活字印刷に向かない文字体であった。
記録が現存している最古の活字は『夢渓筆談(むけいひつだん)』に記録が残る膠泥(こうでい)活字である。
これは木ではなく粘性土に彫刻を施して焼いた陶製である。
1300年代には木活字も制作されており、これは欧州へも伝播している。
また、高麗(当時の朝鮮)では1234年ごろに青銅製の活字が実用化されている。

近代における活版印刷技術はヨハネス・グーテンベルクによって
1445年頃にドイツのマインツにおいて完成された。
これは、
1.鋳造が容易な鉛合金による材料
2.正確かつ生産性の高い鋳造技術
3.金属活字との相性が良い印刷用インキ
4.一定の圧力での印刷が可能な平圧印刷機
の開発である。
この技術は瞬く間にヨーロッパに広がり、印刷業は発展を遂げた。
グーテンベルクは従来人の手で行われていた写本の再現に努めたため、
彼の作った活字はゴシック体などと呼ばれる写本用の書体であった。
その後複数の人々によって印刷に適した書体が生み出されるようになった。

この時発行されたものはグーテンベルク聖書という聖書の写本で、
羊皮紙や紙に印刷されておりほとんどのページが42段で構成されているため
42行聖書などとも呼ばれる。
そこからこの写本に用いられた字体はB42(Bible 42)と呼ばれている。

日本では16世紀にイエスズ会がグーテンベルク系統の印刷機を持ち込み、
教育や布教に用いる書物を印刷した。
これがキリシタン版と呼ばれ日本語が初めて活字で印刷されたものである。
活字印刷自体は古くからおこなわれているが、
諸説あるものの764年に発行された「百万塔陀羅尼(ひゃくまんとうだらに)」が
鋳造された金属活字版によって制作された最古の書物とする説もある。
江戸時代には木活字印刷が盛んになり次第に製版印刷と呼ばれる
板一枚に文章を彫り込んで版にするものが盛んになっていった。 その後明治時代に入り外国からも活字文化が流入してきて、
木本昌造が仮名文字活字を整備していき、
築地活版製造所として活字市場を制覇していった。