海の向こうでは? : 国を超えるとき

日本の輸入品に対する規制

次に、日本の輸入品に対する規制を見ていきましょう。

海外で使用されている農薬について、全て把握することは出来ません。
そこで、日本では2008年からポジティブリスト制度というものが利用されています。

これは、輸入品に対する残留農薬の安全基準を定めた制度です。
農薬を3種類に分類して、それぞれの対応が定められています。

・国内で残留基準が設定されている農薬の場合
  →輸入品に対しても同じ基準が採用されます。

・国内では残留基準が設定されていない農薬の場合
→一定量(食品1kgあたりに含まれる農薬が0.01mg)以上残留していたら、その食品の販売などが禁止されます。
なお、国立医薬品食品衛生研究所の畝山智香子氏によれば、一定量とは、「ほとんどの物質でヒトの健康を損なう恐れのない量」です(畝山智香子、『本当の『食の安全』を考える』、2009より引用)。

・健康を損なわないことが明らかな農薬の場合
→ポジティブリスト制度の対象外です。
 この農薬については、厚生労働省によって指定されています。

ポジティブリスト

(図)農薬の基準値の用いられ方について
*登録保留基準…農薬によって人体や環境に被害をもたらすことを防ぐための基準。

厚生労働省「食品に残留する農薬等に関する新しい制度について」より作成

このように、外国産の食べ物についても農薬が安全に使われていることが分かります。



ポストハーベスト農薬の扱い

外国産の作物に特徴的な農薬の一つに、ポストハーベスト農薬というものがあります。

ポストハーベスト農薬とは、post(〜の後で)harvest(収穫)農薬、つまり、収穫後の農産物に用いられる農薬のことです。

外国で作物を収穫してから、日本に輸入されるまでにはタイムラグがあります。作物をそのまま放置してしまうと、カビが生えてきたり、害虫に食べられたりしてしまいます。
ポストハーベスト農薬は、これらの害から守るために使われています。収穫後にすぐ使われる場合もあれば、輸入後に害虫駆除の目的で使われる場合もあります。

しかし、収穫後の作物に農薬を散布して、人体に影響が出ることはないのでしょうか。

まず、海外でのポストハーベスト農薬に対する基準を見て行きましょう。ここでは、アメリカの場合と、カナダ・オーストラリア・EUの場合の二つを紹介します。

アメリカでは、ポストハーベスト農薬として用いられるものに関しては、ポストハーベスト処理に対応した残留基準が設定されています。
収穫後に使用する農薬は、一般的に残留量が多くなるため、基準値が高く設定される傾向にあります。収穫前に使う農薬と区別することで、むやみに基準が高くなることを防いでいます。

カナダ・オーストラリア・EUでは、私たちが食品を口にするときに残留している農薬の量を重視しています。
作物の収穫前、収穫後で使う農薬を区別するのではなく、最終的に残留する農薬の量を規制しているのです。

残留基準

(図)残留基準の考え方
農薬工業会「教えて!農薬Q&A」より作成


次に、日本に輸入される作物のポストハーベスト農薬の規制を見ていきましょう。

日本においても、最終的に残留する農薬の量を規制するという考え方はEUと変わりません。ただし、ポストハーベスト農薬は残留農薬ではなく食品添加物に分類されています。

なぜ、日本では食品添加物扱いなのでしょうか。

それは、外国とのポストハーベスト農薬に対する考え方が違うからです。

ポストハーベスト農薬を農薬扱いする国では、作物に用いる化学物質は全て農薬として捉えられています。
一方、日本では、収穫前に用いる化学物質は農薬、収穫後に用いる化学物質は食品添加物というように区別しています。

しかし農薬も、食品添加物も、残留基準の設定の仕方は変わりません。

食品添加物は残留農薬と同様に、ポジティブリスト制度の対象です。
先に説明したように、基準を超える成分が検出された場合には、販売されることはありません。

なお、食品添加物の場合、指定されていない物質が検出された場合も、販売することはできません。

仮に外国でポストハーベスト農薬が大量に使われている作物も、日本に入ってくるときには日本の基準で検査されています。

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