自分が誹謗中傷されたら

目次

掲載された内容の記録

相談するべき場所

問題の書き込みを削除する方法

損害賠償請求を起こす場合

損害賠償請求の基本的な流れ

掲載された内容の記録

自分自身を誹謗中傷等する内容がインターネット上に掲載されていることを把握した場合は、プロバイダや掲示板サイト管理者等への削除依頼や関係機関への相談、警察への通報・相談の際に必要となりますので、掲載されたサイトやSNSのページを印字し、当該サイトの名称、URL、書き込み者、書き込み日時、内容等を記録してください。

相談するべき場所

インターネット上の誹謗中傷に対しては、官民の相談機関等が対応しています。下記の関係機関等への相談も併せて検討してください。

・ 違法・有害情報相談センター(総務省委託事業)

インターネット上の書き込みにより、名誉棄損やプライバシー侵害等の被害にあわれた場合、インターネットに関する専門知識を有する相談員が、相談者自身で行う削除対応の方法等をアドバイスします。

違法・有害情報相談センター

・ 人権相談(法務省)

インターネット上の投稿による人権侵害など、人権に関する相談を受け付ける窓口です。相談者自身が行う削除依頼の方法について助言を行うほか、法務局が事案に応じてプロバイダ等に対する削除依頼を行います。

人権相談

・ 誹謗中傷ホットライン(一般社団法人セーファーインターネット協会)

インターネット上の誹謗中傷について連絡を受け付け、国内外のプロバイダ等に利用規約に沿った削除等の対応を促す通知を行います。(相談対応は行っていません。)

誹謗中傷ホットライン

問題の書き込みを削除する方法

各サイトで

○掲示板等の作成者や管理人へ削除依頼メールを送る

○掲示板等の連絡(お問い合わせ)フォームに削除の依頼を書き込む

等の削除依頼方法が定められている場合がありますので、各サイトの削除依頼方法を確認してください。

・ 掲示板等の管理人等に連絡が取れない場合は、対象の掲示板等が利用するプロバイダやサイト管理者に削除依頼をしてください。

・ 削除依頼方法の詳細については、前記の違法・有害情報相談センターのウェブサイトを参考にしてください。

プロバイダ責任制限法

プロバイダ責任制限法は、SNSや掲示板サイト等において、誹謗中傷等の権利の侵害があった場合について、プロバイダ等の当該情報の削除行為等に対する損害賠償責任の免責要件、発信者の情報の開示請求できる権利等を規定したものです。

掲示板サイト等への書き込みについては、プロバイダ責任制限法において、一定の条件下でプロバイダや掲示板サイト管理者等(以下「プロバイダ等」)の書き込み削除行為に関する責任制限について規定されており、プロバイダ等は責任制限の下で書き込み削除に応じる場合があるため、プロバイダ等に対して書き込みの日時、内容や侵害された権利、侵害されたとする理由を示して連絡することにより、削除の申立てを行うことが有効な場合があります。

⇒ 発信者情報の開示請求

本人または弁護士等の代理人が請求することができます。 開示請求ができる具体的な主な情報は次のとおりです。

○ 発信者の氏名、住所、電話番号、電子メールアドレス等

○ 侵害情報の書き込み時、同書き込みの対象サービスのログイン時等に係るIPアドレス、ポート番号等

○ 侵害情報の書き込み時、同書き込みの対象サービスのログイン時等に係る年月日及び時刻

プロバイダ責任制限法の詳細及び発信者情報開示請求等の様式・要領等については、プロバイダ責任制限法関連情報Webサイトを参考にしてください。

プロバイダ責任制限法関連情報webサイト

損害賠償請求を起こす場合

もし自分が誹謗中傷を受けた場合、損害賠償を請求することができます。

誹謗中傷に対して損害賠償が認められる場合

法律に誹謗中傷の定義はないうえ、「誹謗中傷の被害に遭ったら損害賠償請求ができる」などという明文規定もありません。 そのため、誹謗中傷をした相手に対して損害賠償請求が認められるかどうかは、ケースバイケースで判断されます。 一口に「誹謗中傷」といっても、その悪質性や影響の程度などは、さまざまであるためです。

そこで損害賠償請求が可能かどうかの判断基準となるのは、民法の709条である、

 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

つまり、相手の誹謗中傷によって名誉など法律上保護されるべき利益が侵害された場合には、損害賠償請求が認められるということです。

ただし、その誹謗中傷が法律上字保護されるべき権利の侵害にあたるかどうかを、自分で判断することは容易ではありません。 単純に言い回しや表現などのみで判断できるものばかりではないためです。 そのため、自己判断で諦めてしまうのではなく、まずは誹謗中傷問題に詳しい弁護士へご相談ください。

刑事罰に問えなくても損害賠償請求ができる場合がある

誹謗中傷に対しては民事で損害賠償請求をするほかに、刑事罰の対象とする方法もあります。 誹謗中傷が該当する代表的な罪状に名誉毀損罪があり、これは「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者が、その事実の有無にかかわらず」問われる罪です。

しかし、この「名誉毀損罪」に問うための要件と損害賠償請求が認められるための要件は、イコールではありません。 たとえば、刑法上の名誉毀損罪を成立させるには、「名誉を毀損」されたことが必要とされます。 つまり、誹謗中傷の投稿によって相手の社会的評価が低下した必要があるということです。

損害賠償請求の基本的な流れ

基本的な流れは次のとおりです。

誹謗中傷の証拠を残す

誹謗中傷の被害にあったらスクリーンショットを撮って証拠を残してください。

スクリーンショットには、投稿の内容、投稿の前後関係、投稿の日時、投稿のURLが映るように撮ってください。

弁護士に相談する

投稿の証拠を残したら、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。 中でも、誹謗中傷トラブルを多く取り扱っている事務所へ相談することをおすすめします。 なぜなら、誹謗中傷への法的措置は時間との勝負であるといっても過言ではなく、経験豊富な事務所であればスムーズな対応がしやすいためです。 相談時には、撮影した証拠に不備がないかどうかについても確認してもらうとよいでしょう。

相手を特定する(発信者情報開示請求)

インターネット上での誹謗中傷では、相手が誰であるのかわからない場合が多いでしょう。 しかし、損害賠償請求をするためには、相手の身元が判明していなければなりません。 そこで必要となるのが、発信者情報開示請求などの手続きです。 発信者情報開示請求とは、相手に関する情報を開示するよう投稿の舞台となったSNS運営者などに対して請求する手続きです。 裁判外で任意に開示するよう請求することもできますが、任意での開示に応じてもらえる可能性はほとんどありません。 そこで、裁判上の手続きによって請求することが一般的です。 ただし、SNS運営者などのコンテンツプロバイダは、投稿者の住所や氏名まで把握していないことが多いです。 そのため、次の2段階の手続きが必要となります。

1.誹謗中傷の舞台となったSNSや掲示板の運営者(Twitterなど)に開示請求を行い、IPアドレスとタイムスタンプなどの情報を入手する

2.1で得た情報をもとに接続に使用されたアクセスプロバイダ(KDDIなど)に開示請求を行い、契約者の住所や氏名などの情報を入手する

なお、2022年(令和4年)10月1日に施行されたプロバイダ制限責任法の改正法により、新たに「発信者情報開示命令」手続きが新設されました。 これは、コンテンツプロバイダへの開示請求とアクセスプロバイダへの開示請求を、一本化して行うことのできる手続きです。 この手続きを用いることで、手続きに要する期間の短縮が可能となる場合があります。

裁判外で損害賠償請求をする

相手が特定できたら、まずは弁護士から書状を送るなどして裁判外で損害賠償請求をすることが一般的です。 相手が請求額を支払ったり、相手からの謝罪を受け入れ多少減額することで交渉がまとまったりすれば、この時点で解決となります。

裁判上で損害賠償請求をする

裁判外で損害賠償請求をしたところ、相手が請求を無視するなど不誠実な対応を取ることもあります。 この場合には、裁判上での損害賠償請求へと移行することとなるでしょう。 裁判へ移行すると、諸般の事情を考慮のうえ裁判所が損害賠償請求の可否や金額を決めます。

誹謗中傷をした相手に損害賠償請求をする際の注意点

投稿の削除申請は慎重に行う

投稿の削除請求とは、SNSや掲示板の運営者に対して、誹謗中傷の書き込みを削除するよう求めることです。 所定の削除依頼フォームから請求する方法のほか、弁護士が書面を送って請求する方法や、裁判上で請求する方法などが存在します。 誹謗中傷の内容によっては、その投稿が多くの人の目に触れる前に消してほしいと願うことでしょう。 しかし、損害賠償請求を予定しているのであれば、投稿の削除請求は慎重に行わなければなりません。 なぜなら、削除請求が認められて投稿が消えてしまうと誹謗中傷の証拠がなくなってしまい、発信者情報開示請求などが困難となるためです。 そのため、削除請求をする際にはあらかじめ投稿の証拠を漏れなく残し、弁護士に確認を受けたうえで行う必要があります。

できるだけ早期に対応する

誹謗中傷に対して損害賠償請求を希望する場合には、できるだけ早期に対応する必要があります。 なぜなら、対応に時間を要すれば投稿のログが消えてしまい、発信者情報の開示を受けることが困難となるためです。 ログの保存期間はプロバイダによって異なりますが、おおむね3か月から半年程度とされていることが多いです。

無理に自分で対応しない

誹謗中傷への対応を無理に自分で行うことはおすすめできません。 なぜなら、相手に対して直接反論すれば火に油を注いでしまい誹謗中傷がエスカレートするおそれがあるほか、相手が投稿やアカウントを消してしまい法的措置が困難となる可能性もあるためです。 また、自分で対応しようと対応方法を調べているうちに時間を要してしまい、ログの保存期間を過ぎてしまう可能性もあるでしょう。 誹謗中傷への法的措置には、法令や裁判手続きに対する深い理解と経験が不可欠です。 自分で行い、希望した結果を得ることは容易ではありません。 そのため、無理に自分で対応せず、できるだけ早期に弁護士へご相談ください。

損害賠償請求の前に相手の特定が必要となる

先ほども解説したように、誹謗中傷をした相手が誰であるのか不明な場合には、損害賠償請求に先立って相手を特定しなければなりません。 相手を特定するのにかかる期間は、おおむね3ヶ月から10か月程度です。 そのため、すぐに損害賠償請求ができるわけではなく、長期戦になりがちであることを把握しておいてください。

インターネット上での誹謗中傷に対して損害賠償請求以外にとり得る法的措置

インターネット上で誹謗中傷の被害に遭った場合、損害賠償請求以外に次の対応が検討できます。 なお、これらのうち一つを選ぶべきということではなく、複数の法的措置をとることも可能です。 ただし、複数の措置をとれば、それだけ費用や時間がかかります。 そのため、弁護士とよく相談のうえ、どのような法的措置をとるのか検討するとよいでしょう。

刑事告訴

誹謗中傷は、刑法上の「名誉毀損罪」や「侮辱罪」などに該当する可能性があります。 これらは、被害者の告訴がなければ捜査が開始できない「親告罪」です。 そのため、これらの罪で相手に前科をつけるには、まず刑事告訴をしなければなりません。 刑事告訴とは、犯罪の事実を捜査機関に申告し、相手の処罰を望む意思表示です。 誹謗中傷にまつわる刑事告訴は、警察に対して告訴状を提出することによって行います。 なお、告訴状の受理後は、捜査が警察や検察に委ねられることとなります。 被害者がいくら望んでも捜査の結果によっては不起訴となったり無罪となったりすることもあるため、この点を念頭に置いて置く必要があります。

削除請求

削除請求とは、多くの場合、誹謗中傷の投稿を削除するようSNSやインターネット掲示板の運営者に対して請求することをいいます。 投稿内容の拡散を避けたい場合には、削除請求も有力な選択肢の一つとなるでしょう。 ただし、先ほども解説したように、削除請求は慎重に行う必要があります。 投稿が削除されれば誹謗中傷の証拠が消えてしまうためです。 また、単に削除請求をしたのみであれば、たとえ削除が認められてもさらに書き込みがなされ、いたちごっことなるかもしれません。 そのため、削除請求をするのであれば単体で行うのではなく、損害賠償請求などと併せて行うと効果的でしょう。

もし自分が誹謗中傷に遭ってしまったら、自分で解決せず、専門家に相談して、専門家の指示に従って解決してください。

アンケート結果
まとめ(解決策)