研究内容

光合成タンパク質を用いたCO2の直接還元

大阪市立大学では、藻類の光合成の仕組みを利用し、太陽光エネルギーをもとに、二酸化炭素からバイオ燃料のギ酸をつくる技術、藻類のタンパク質や酵素を組み合わせて化学反応を起こす装置を開発しました。この技術だと、ギ酸の合成に化石燃料を使う必要がありません。更に変換効率を高め、実用化を目指しています。 この技術では、藻類から得た光合成タンパク質とCO2からギ酸を作る酵素などを組み合わせる。酵素と光合成のタンパク質をそれぞれ電極に貼り付け、導線でつなげます。光合成タンパク質をつけた電極に水中で光を当てると、水を分解して電子が生じます。電子は導線を通って酵素側の電極に届き、水に溶けたCO2をギ酸に変換します。太陽光を模した光を3時間当てると、溶液中のCO2が減り約1%がギ酸になります。

世界最高効率のCO2資源化装置

株式会社東芝は展示会「CEATEC 2022」に、二酸化炭素と水を共に電気分解して一酸化炭素と酸素を生産するPower to Chemicals(P2C)用のCO2電解セルスタックの大型モジュールを展示しました。東芝が開発したCO2電解セルスタックは今までで最大級の大きさで年間75トンのCOを生産できる見通しです。2020年の秋時点の技術では小型モジュール1つで年間1トン以下でした。このCO2セル電解は、電力が太陽光発電由来であれば人工光合成の一種とも言えます。燃料とO2から電力と水を取り出す固体高分子電解質膜(REM)形燃料電池(PEFC)の逆プロセスでもあります。電力をCOに変換する際の電子の利用効率「ファラデー効率」は97%以上で、REM形電解としては世界最高水準です。 (図)

世界最高効率10.5%を実現

豊田中央研究所は、同社が取り組んでいる人工光合成に関する説明会を開催しました。豊田中央研究所では、ギ酸に着目しており、二酸化炭素と水素分子からシンプルに構成されていることから、水素キャリア(運び手)として優れているといいます。太陽エネルギーを使って、二酸化炭素を取り込むことでカーボンニュートラル社会に貢献し、カーボンニュートラル燃料など合成燃料の製造などに欠かせない水素を取り出す事もできる。豊田中研では、このギ酸を作り出す人工光合成システム「MORLIE」を研究開発しており、ギ酸は沸点が水より高い101℃であることから、圧縮水素や沸点がマイナス253℃の液体水素よりも取り扱いが容易だといいます。2011年の発表では太陽光変換効率が0.04%だったが、2015年には人工の葉で植物超えの4.6%を達成しました。2021年には世界最大級の1m角人工光合成セルで世界最高の太陽光変換効率10.5%を実現したと発表しています。太陽光によって生成されたギ酸は液体として水溶液中に出てくるのですが、この水溶液とギ酸の分離方法については明かされていません。実用化の目処を2030年代としており、安定してギ酸を生産するとともに、水素をどう使っていくかがポイントになってきます。

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