同時のパラドックス

同時のパラドックス正しそうに見える前提と、妥当に見える推論から、受け入れがたい結論が得られる事を指す言葉

〜同時に着くはずではなかったの?〜

織姫と彦星が天の川を渡って一年に一度7月7日に会う七夕の話は誰でも知っているだろう。

ある観測者にとって織姫や彦星は天の川のとある地点で同時に出会うが、観測者によって織姫や彦星の体験が変わるはずがない。

ところが、次のような例を考えてみると、特殊相対性理論アルベルト・アインシュタインが1905年に発表した物理学の理論はそのありえないことを予言するようにみえる。

織姫と彦星はお互いの中間地点に光速度光が伝播する速さのことで会いにいくとしよう。

中間地点にたってるAにとって2人は同時に出発して同時に出会う。

では、Aにたいして織姫から彦星の方に等速直線運動している観測者Bからみたらどうだろう。

Bからみると、出会う中間地点は織姫のほうに近づき、彦星から遠ざかっている。

したがってBにとっては織姫と中間地点までの距離は、彦星と中間地点までの距離は短くなるはずだ。

すると光速度は一定であるからBにとっては織姫のほうが中間地点に先に着き、彦星はその後に着くことになる。

これは明らかにパラドックスである。

もちろんBにとっても織姫と彦星は同時に中間地点に着くはずである。

いったい何がおかしいのだろう。

同時が問題となるのは、離れた2点で起こる出来事であった。

この問題では、観測者Aにとって織姫と彦星は同時出発したが、観測者Bにとってその2つの事象(織姫の出発と彦星の出発)は同時ではないのである。

Bにとって彦星が先に出発に出発して、その後から織姫が出発したのである。

こうしてどの観測者にとっても、めでたく織姫と彦星は同時に出会うことになる。


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