作者不明のパラドックス

作者不明のパラドックスギリシア語のpara(反,超)+doxa(意見,通念)の合成に由来する。〈背理〉〈逆理〉〈逆説〉と訳。一般に正しいと考えられていることに反する主張や事態をいう。

 「作者不明のパラドックス」とは、例えば、未来から持ち帰った自分の小説を書き写した作家がいたとしたら、その作品はだれが書いたことになるのか、というパラドックスである。

この出来事は、因果関係としては「自己無矛盾名ループ」であるので、厳密にはパラドックスではないが、作品という情報がどこから生まれたのかという「情報期限のパラドックス」といえる。

何もないところから、意味ある情報が発生したのだ。

 コーヒーにミルクを入れると、ミルクはカップ全体に混ざり合ってゆくが、いくら眺めていても逆にミルクが集まることはない。

物理の法則自体は時間反転対象な形を形成しているが、どこかで時間のすすむ方向が決まっているとも考えられる。

 時間の流れを決めるのは、熱力学の第二法則エントロピー増大の法則*という別名がある.すべての自然現象においては,エントロピーは増大の一途を辿る.このほかにもいろいろな表現法がある。、いわゆるエントロピー増大則断熱系で不可逆変化が起きる場合にはエントロピーは必ず増大する.これは熱力学の第二法則*の別の表現でもある.である。

エントロピーとは「乱雑さ」の意味である。

ミルクが拡散していく現象は、ミルクの分子がとりうる状態の数が増えたため、初めにまとまっていたという情報が次第に失われて「乱雑になっていく」ことでもある。

熱が必ず高い方から低い方へ流れるのも、永久運動をする機会が存在できないのも、このエントロピー増大則が決定打ともなっている。

 情報は減る一方のはずであり、無から生じることはないのだ。

したがって、過去へのタイムトラベルが可能ならば、情報起源のパラドックスは、パラドックスとして残る。

エントロピー増大則と同じレベルで、何かの手段で禁止されなければならないだろう。


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