渋滞回復実験

渋滞の発生は、自動運転車の普及により抑制することができます。
自動運転車が渋滞に有効だということは、こちらで述べた通りです。→原因・解決策

しかし、すべての渋滞を防ぐことは、限りなく不可能に近いのです。
非自動運転の車が1台でもあれば、その車が渋滞の原因になる可能性があります。
また、事故が起こったり、故障車が道をふさいだりすれば、必然的に車の流れが滞り、渋滞が起こってしまいます。
すべての渋滞を予防することは、とても難しいのです。

では、予防しきれずに起こってしまった渋滞を、自動運転車は解消させられるのでしょうか?
ここで1つ実験をし、実際に確認しましょう。

目的

自動運転車と非自動運転の車が、渋滞時にとる動きを比較し、 自動運転車の渋滞解消への有効性を検証する。

準備するもの

  • (1)周回コース
  • (2)周回コース上を走行する、3種類のプログラムを持った自律走行ロボット(詳しくはマインドストームの紹介実験機の紹介写真
            超音波センサーは前との車間距離を測るのに、カラーセンサーはラインを認識するのに使いました。
            そして、Mモーターは左右に舵をきるのに、Lモーターは前後に動かすのに使いました。
            以下のフローチャートでは、Mモーターの回転がマイナスの値の場合右に、プラスの値の場合左に舵をきっています。
    
    • A)低速で等速を保ち走り続けるロボット
    • B)車間距離に合わせて速くなったり遅くなったりする(車間距離を保とうとする)ロボット
    • C)Bの機能がある上に一定時間たったら最高速度が高くなるロボット(擬似的に、周りと協調する車)

実験方法

  • (1)Bの隊列の中に、低速のAを一台投入し、渋滞を起こす。
     その後Aを取り除き、隊列の動きを観察する。
  • (2)Cの隊列の中に、低速のAを一台投入し、渋滞を起こす。
     その後Aを取り除き、隊列の動きを観察する。
  • (3)(1)(2)の結果を比較、検証する。

実験・検証

(1)等速・等車間距離の車の隊列に、速度の遅い車を投入すると、車間が大きく狭まった上に速度が下がって、渋滞が起こりました。
遅い車を取り除いた後も、速度・車間距離は(2)に比べて低いままです。

(2)(1)と同様に渋滞を起こします。遅い車を取り除いた後、全体が同時に加速し、速度と車間距離が回復しました。

(3)遅い車が取り除かれた後の様子を比較します。
(2)では、遅い車が取り除かれた後、全体が同時に速度を上げたことで、(1)より素早く速度と車間距離が回復しました。

結論

以上から、自動運転車は渋滞を解消させられるということが証明されました。

自動運転車は、周囲の車と連携して、全体が同時に速度を上げることで、速度と車間距離を回復させることができ、渋滞の解消につながるのです。

実験を通しての疑問

今回の実験を通して、自動運転車の渋滞に対する有効性について、検証しきれない点や、実験中に発見した新たな課題点も見つかりました。

①まず、この実験では検証しきれない点について説明します。
○非自動運転車が隊列内に存在する場合、自動運転車は渋滞を解消できるか

今回、渋滞が発生するまでの段階では非自動運転車が存在し、発生後に渋滞が解消へ向かう段階では存在しない、という条件の変更を行いました。 そのため、自動運転車と非自動運転車が混在する状況でも、自動運転車によって渋滞が解消されるか否かは、検証しきれませんでした。

②次に、実験中に発見した、自動運転車を渋滞解消への手段にするための課題点について説明します。
○自動運転車を渋滞解消に役立てるには、全ての自動運転車が協調して走行する必要がある

この実験では、隊列内の全ての自動運転車がタイミングを合わせて同時に加速することで、渋滞を解消しました。
これは、自動運転車全てが協調することを前提としています。
「日産自動車の自動運転」でも紹介しましたが、自動運転車が学習した道路状況は、同一社製の自動運転車間でのみ共有される予定です。自動運転車を渋滞解消に役立てるためには、複数の会社で製造された自動運転車すべてが道路状況を共有し、協調して走ることが必要です。

実験をして初めてわかったこと

  • この実験では、非自動運転車と自動運転車が混在する状況で、自動運転車が渋滞解消に有効かどうかはわからない
  • 自動運転車が渋滞解消に有効性を発揮するには、それぞれが異なるメーカーで製造されたすべての自動運転車の間で、道路状況の学習結果を共有する必要がある。
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