DNAがもつれないわけとは?


DNAは非常に長いひも状の分子です。
ヒトのDNAの場合でいうならば、二十螺旋分子の太さは直径2nm(=0.000002o)しかないのにもかかわらず、
ひとつの細胞に含まれる全てのDNAを繋げるとすると2mにも達します。
ヒトの細胞の大きさは直径10〜100μm(=0.01〜0.1o)ほどなので、
DNA分子の全長はその1万〜10万倍ほどに相当します。



このようにDNA分子はとても長いです。どうしてもつれないのでしょうか?


この長いDNA分子同士をもつれさせずに収納するために、細胞内にはDNAの糸を巻きつけるための「糸巻」が存在します。
この糸巻はヒストンという一群のたんぱく質が8個組み合わさってできていて、
ヒストンコアと呼ばれる円盤状の構造をしています。
それの円周上にDNAが2回転ほど巻きつき、巻きついたDNAの最初と最後の部分にはヒストンH1によってしっかりと留められます。
この構造をヌクレオソームといいます。



ヌクレオソームは、DNAの約200塩基対ごとに1個の割合で存在していて、
これを電子顕微鏡で観察すると、ビーズをつなげたネックレスのようにも見えます。
ヌクレオソームはコイル状に巻かれて、直径30nmのクロマチン繊維を構成します。



このクロマチン繊維が、さらに折りたたまれ染色体の中に規則正しく収まっているので、
DNA分子同士がもつれないようになっています。



もつれてしまった場合には、一時的にDNA分子を切断する酵素と再び繋げる特殊な酵素が働くことにより、
DNAのもつれをほどきます。



  第一章