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コラム
鳥の警告色について
性淘汰としての色彩
警告色としての色彩
相互に作用する役割
性淘汰としての色彩
動物園に足を運ぶ理由として、珍しい生物が見たいという好奇心を第一に挙げることが出来るでしょう。その中でもクジャクやキジのような色彩の美しい生物は特に人々の興味を惹きます。ただしクジャクやキジの場合美しい容姿をしているのはオスだけで、メスの容姿は比較的地味なのです。綺麗なクジャクを見に行ったのに、コーナーの中には茶色い鳥しかいなかった、なんて経験も少なくありません。ではなぜ性別によってこれだけ顕著に差が出るのでしょうか。 キジ類、カモ類、またゴクラクチョウ類は性的二型の非常にはっきりした種で、オスだけが美しくメスは地味な色彩です。一般にこうした種では、オスの美しさはメスによる選り好みによって進化してきたと考えられています。これを異性間淘汰、または性淘汰と言います。中でもカモ類は、繁殖期の初期にだけオスの色彩が鮮やかに変化するのです。
警告色としての色彩
では色彩鮮やかな鳥類は、すべてこの性淘汰によって進化してきたのでしょうか。同じ色彩の美しい鳥の例として、モリモズ類を挙げてみましょう。モリモズ類は強い毒性を持ち、捕食相手を死に至らしめます。またモリモズ類の外見はお互いに似通っています。このことから、モリモズ類間にはミュラー型擬態の関係が成り立っていると言えます。つまり、モリモズ類の鮮やかな色彩は性淘汰によるものではなく、自身が危険な生物であることを他に知らせるための警告色なのです。 クジャクの色彩は青を基調にしたものが多いのに対し、モリモズ類の色彩は赤と黒や橙の二色です。これはドクガエルやホタルなどにも共通する代表的な警告色であり、赤と黒の有毒、または不味な生物は世界中に数え切れないほどいます。これはつまり、赤と黒の生物どうしが、分類群にこだわらず、かなり広い範囲でミュラー型擬態の関係にあると言えます。しかし、モリモズのような猛毒を持つ生物を食べた鳥は死んでしまうのだから、赤と黒の模様に意味はないのかという疑問が生まれます。けれども、獲物のその二色を、一部の鳥は“本能的”に避ける傾向にあることが北米の鳥を用いた研究で明らかになっています。すなわち赤と黒と言う配色は見慣れた、見慣れないと言う問題ではなく、捕食者が嫌う本質的なものをその底に秘めているといえるのかもしれません。
相互に作用する役割
性的二型の発達した鳥のオスの美しさについては、もちろん性淘汰で説明できるものも多いでしょう。けれども、捕食者に対する警告色として自然淘汰が働いている場面も多いと思われます。性淘汰と自然淘汰は決して矛盾するものではなく、むしろお互いに補完しあってオスの美しさを進化させてきたのではないでしょうか。繁殖期において鳥のオスはメスの注目が集まる場所でさえずらねばなりませんが、それは同時に捕食者の恰好の獲物となるリスクを伴います。そのリスクを相殺するために、かえって擬態信号は進化しやすいと言えます。鳥のオスの色彩の目的、また性的二型のない鳥の“美しさ”についても、人間社会における男性、女性に置き換えて考えてみても面白いかもしれません。