外来生物を捨てると... 今皆さんが飼っているペットのほとんどは、海外が原産の生物です。ペットとして飼われている動物を本来の自然環境に放してしまうとどのような影響があるのか皆さんは考えたことがありますか。人間が飼っていたペットを自然界に放す理由としては「飽きてしまった」「飼う環境が整わない」「逃がしてしまった」「成長したら飼うことができなくなった」ということが挙げられます。それは、ペットの意思ではなく飼い主の意思なのです。 さて、もともとその地域の自然環境に存在することのない、自然界に放たれた生物たち。彼らはいったいどのような影響を与えるのでしょうか。 一つ目は、生態系バランスの破壊。海外原産の生き物は日本本来の在来種に比べ、繁殖能力や適応能力が強いという特徴を持っています。そのため、比較的似た環境に住んでいる本来の生物を抑えて住み着いてしまうのです。また、捕食する生物にも影響を与えます。一度人間の手によって破壊された生態系を元に戻すことは至難の業です。 二つ目は、遺伝子の撹乱。生態系のバランスを乱すだけではなく、海外原産の生物が日本の在来種と繁殖をし、在来種の遺伝子が消えて遺伝子学上「絶滅」へと追いやってしまうのです。一番有名な例としてはカブトムシ・クワガタムシでしょう。虫かごから逃げ出した、あるいは自然に放たれたそれらの昆虫は交雑種、つまり在来種と外来種の雑種を生み出すのです。その結果在来種の遺伝子が失われてしまいます。沖縄本土に生息するカブトムシの亜種が本州などからペット用として持ち込まれたカブトムシと交雑して遺伝子攪乱を起こしていることが問題になっています。 三つ目は人間などへの健康被害が挙げられます。海外原産の生物が病原体を持っていたり有毒である可能性もあります。たとえば、ペットとして飼われている毒グモ。毎年日本各地で飼い主の不注意により逃がしたという事件が起こっています。実際原産国では死亡事故も起こっていますので、十分注意する必要があります。 人間が軽い気持ちで自然に放してしまうと、後々大変大きな爪痕を残し、収拾がつかなくなります。このことをなくすためにはペットを飼う前に、ペットを飼うことについて真摯に考えることが大切です。ペットをすでに飼っている人たちも自分たちのペットの気持ちと手放したときの環境に及ぼす影響について、もう一度考えてみましょう。
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