色と購買意欲
このページでは、色と購買意欲についてまとめました。
今まで、色と他の関係(食欲・スポーツ・勉強)でも考えてきましたが、その全てに「物を買う」ということは関わってきます。食材や食料品のパッケージ・スポーツ用品・勉強するためのノートやペン。すべてに色があります。そう考えると、「色と購買」は私たちに一番深く関わる事柄なのかもしれませんね。
では、一緒に「色と購買意欲」の関係について考えてみましょう。
■買い物の時に「色」を意識する?
あるアンケートの結果、人が商品を購入した理由として、85%の人が色が主要な理由であると認識しているそうです。85% とは大きな割合ですね。
※参考・参照 How do colors affect purchases?(英語サイト)
私たちも買い物をするときに、「このセーター、気に入ったんだけど、色がちょっとなぁ・・・」とか、「もう少し明るい色があれば買うのに・・」というようなことを感じたことがあるのではないでしょうか?
例えば傘を買おうと思いお店にいくとします。
この3種類の傘。違いは「色」しかない訳ですから、色はとても大事な要素になるといえます。
他にも、スマートフォンなどは同じ型式・同じ機能で色違いを選べる場合がありますよね。あなたは何を基準に色を決めますか?
私たちは「買いものをするときに色を意識するか?」
校内の中学3年生179人(男子127人 女子52人)を対象にアンケート調査を実施しました。また買い物の対象商品を「くつ」と設定しました。
【私たちの予想】買い物の時に色を意識する
【理由】
絶対に意識するよね!
うん、私なんてお店に行く前から、次は白の靴がほしいとか色は決めてから行くよ!
これは女子は100%なんじゃないかな?
【調査結果】 結果は以下の通り179人中154人(86%)の人が買い物のときに色を意識すると答えました。
【感想】 先にあげた例とほぼ同じ割合の86%の人が色を意識するということがわかりました。 意識しないと答えた人のなかには、だって靴は「○○色と決めてるから」という答えもあったのですが、これも色を意識しているということではないでしょうか。
※アンケートにご協力いただきありがとうございました。■食料品パッケージの「色」
では、食材や食料品全般の色を考えてみましょう。
野菜や肉・魚などの食材は、もちろん天然の色なのですが、それでもより美味しくみせるための工夫がされていることがあります。
例えば、みかん。皆さんもみかんがこんな風な赤いネットに入って売られているのを知っていますよね
これは、「色の同化現象」注1 を利用した商品のパッケージ方法なんです。
色がオレンジ色のみかんを赤のネットに入れることによって色の同化を起こし、 より赤みを帯びて、より甘そうにおいしく見えるのです。
※注1)ある色が、ほかの色に囲まれたとき、周囲の色に近づいて見える現象を、「同化現象」といいます。
下の画像をみてください。ネットに入ったみかんと入っていないみかん。この2種類のみかんの色は同じ色です。しかし、右側のネットに入ったみかんのほうがよりオレンジ色に見えませんか?
この他、枝豆やオクラなどもよくネットに入って売られています。こちらもネットに入れたほうが色が鮮やかで美味しそうにみえます。このように色の錯覚を利用した食品のパッケージ方法はさまざまな食品の販売に利用されています。
おかしなどのパッケージにも色は効果的に活用されています。
私たちが食べたことのないお菓子を買うとします。その場合、店頭のお菓子を試食をせずに、その味を想像して買うのですから、パッケージデザインが非常に重要になってきます。
もし店頭に、下の2つのポッキーの箱が並んでいたら、私たちは左側をチョコレート味・右側をイチゴ味 と勝手に想像しますよね。
でもこの箱にはどこにも味や種類は書いていません。二つの違いは「色」だけなのです。
特におかしのパッケージのように、大きさや形にあまり違いのない商品では、色の持つイメージが、商品のイメージの大半をしめているのではないでしょうか?
■衣料品購入時の「色」
次に、私たちが毎日着ている服やくつなどの衣料品を購入する際の「色」について考えみます。
あなたが持っている洋服を思いうかべてみてください。
「青系の服が多い」「黒や白のモノトーンが多い」「明るい服が多い」など何か特徴がありますか?
好きな色やその時に流行っている色などで服を選ぶ場合もありますし、自分に似合う色などを選択する人もいますね。他にも、痩せて見える色・顔色がよくみえる色。たくさんの選択肢があります。
無意識に選んでいるその日に着る服にも、心理状況が影響しています。
また、人の第一印象にも服装の色は大きく関係します。
明るい色の服を着ていれば何となく明るい印象に、反対に暗い色の服を着ていれば落ち着いた印象に見えます。
TPO(時と所と場合)に応じて色を適切に選ぶことも大切です。
例えば、会社員。ほとんどの人(特に男性)は、紺やグレー、黒系などのスーツを着ています。会社で会議があったときに、皆がグレーや紺のスーツの中、一人だけ赤や黄色のスーツの人がいたら、やはり違和感があると思います。
就職活動の学生のスーツも紺などが定番です。どうやら、ビジネスでは派手な服装が好まれないようですね。
他にも、学校行事の保護者(母親)の服装を思い浮かべてください。卒業式には黒や紺など地味な色合いの人が多いですが、数週間後の入学式では一変し、白や水色などのパステル系など華やかな色合いのスーツの人が多くなります。
このように、私たちは自分の好みや気分の他にも、その場にふさわしい服の色を選んでいます。こうしたことを考え、色の持つ効果を有効に活かす服装の色選びをしていきましょう。
■飲食店の「色」
飲食店も、お客さんの購買意欲を高めるように色の効果を利用しています。
一例として、マクドナルドなどのファーストフード店やデニーズ、ガストなどのファミリーレストランには、赤や黄色の看板のお店が多いと思いませんか?
店内のインテリアや食べ物や飲み物のパッケージにも赤や黄色などが多く使われています。これには、さまざまな理由があります。
1.まず第一に赤や黄色(オレンジ)などの暖色系は食べ物が美味しくみえる効果があります。これは、-色と食欲-でも学びましたね。
2.次に赤は 安価だと思わせる効果があります。(お店でセールやバーゲンのときに特売品を「赤札」という場合もあります)はじめの
アンケートでも、「スーパーの赤のチラシと青のチラシ」のどちらが安くみえるか?を皆さんに質問し、その結果、大半の人が「赤のチラシ」と答えていることからも分かります。
3.そして
-色と勉強-でもふれましたが、赤や暖色には時間経過を早く感じさせる効果があります。
1時間しかいなかったのに、1時間半ぐらいいたような気がするのですから、お店側では、お客さんの回転率をあげることができるのです。
客単価が安いファーストフード店などでは回転率がとても重要なはずなので、この赤の持つ効果は非常に有効なのではないでしょうか。
また、反対にゆったりとした時間を提供するようなお店、例えばスターバックスコーヒーや星乃珈琲店などでは、リラックス効果の高い緑や茶色などで店舗が統一されています。
疲れたときなどに、目に入る緑や茶色のリラックス効果で、より、ゆっくりとした時間を過ごしたいと思わせ集客効果につながっているのではないでしょうか。
■製作者側からみた色
さて、ここまで購入者の立場として色を考えてみましたが、反対にモノを創る人、企画や販売をする人は「色」をどうとらえているのか知りたいと思いました。
そこで私たちは、先日学校で行われた「ユニバーサルデザイン」ワークショップで、
芝浦工業大学 デザイン工学部 古屋教授に「モノを製作・デザインする側の立場からみた色」について質問させていただきました。
Q. モノを制作・デザインする側として「色」をどのように考えていますか?
A. 色はとても大切な要素です。商品の企画や製作もそうですが、販売でも様々な工夫がされています。例をいくつかあげます。 スーパーでは、野菜の売り場では青白い蛍光灯を使用したり、食品によって照明の種類を変えることで美味しそうに見える工夫をしています。
また、暖かい飲み物のペットボトルのフタにはオレンジ色のふたが、スポーツドリンクなど涼しさを感じさせるような飲み物には水色のふたが使用されていたりします。
私たちは知らず知らずのうちに暖色・寒色によって温度を想像しているのです。
そうなんですか。確かにペットボトルのフタの色は暖かい飲み物と冷たい飲み物で違いますね。
Q. 食品以外はどうなんでしょうか?
A.
もちろん飲食物だけでなく、物を作る際にも色は大変重要なポイントです。
例えば、車の色は5年ほどかけて実験を重ねて決定していきます。車は熱帯の地域や寒帯の地域なども含めた世界中に輸出されます。そういった点も含めて、日光などによって黄ばんでしまう色はどのようにすれば黄ばまないかなど色の研究はしっかりしています。
他にも、トイレの表示も色で識別している点があります。私たちは赤・ピンクの表示が女性、青・黒の表示が男性などの認識でいます。場所によっては女性・男性ともに黒で表示されているところもあります。
また、色に対する意識は、業界にもよります。どのような色の工夫をすれば物が売れるか、印象が良くなるか、など様々な工夫の仕方があります。
モノを製作や販売する立場の人にとって、色が大変重要な要素であることが分かりました。また、色は私たちにとってとても自然なものであり、普段意識していないところにも色による影響があることが分かりました。 製作者側の意見を伺うことができとても参考になりました。 古屋先生、お忙しい中質問に答えてくださり、ありがとうございました。
物を購入する際に、色はとても大事な要素の一つなんですね! 普段、色をあまり意識せずに購入しているモノ(例えばお菓子など)は無意識のうちに色が商品を選ぶ重要な決め手になっているんだなと思いました。
制服などと違って自分達で好きな色を選択することができる、洋服などにはその人の性格やそのときの気分などが現れやすいのではないでしょうか?
また、人の印象も着ている服や持ち物などに左右されやすいので、自分の好みの範囲で、上手に色の効果を利用し、イメージアップにつながればいいですね。