発電所の種類

  1. 原子力発電とその他の発電の違い
  2. 原子炉の仕組みの違い
  3. 沸騰水型軽水炉
  4. 加圧水型軽水炉
  5. 新型転換炉
  6. 高速増殖炉
  7. プラントの中での核分裂の様子

原子炉の仕組みの違い

       
  1. 原子力発電とは    
  2. 原子炉の種類による核分裂の違い
原子力発電とは
 核分裂を制御、持続させてエネルギーを得る装置が原子炉です。核分裂が連続的に起こることを臨界といいます。臨界の状態では、核分裂で発生した中性子が別の原子核に衝突し、次々と核分裂を連続的に引き起こしています。
 核分裂で放出される中性子は速度が速く高いエネルギーを持っています。このままでは、原子核にぶつかりにくく次の核分裂が起きないため速度を落としてやる必要があります。現在の原子炉で使われているのは普通の水でこれによって速度が落ちて再びウランに衝突すると核分裂するのです。この水のことを減速材といいます。
 また、核分裂が連続して起こると中性子がどんどん増えていくので一定の量になるように吸収するものが必要です。この役割を果たすのが制御棒です。原子炉の中の圧力容器というものの中には減速材である水と棒状の燃料が入っていてその間に制御棒が抜き差しできるようになっています。すべての制御棒を差し込むことで核分裂をとめることができるようになっているのです。
 また、核分裂によるエネルギーで水を温め蒸気にしてその蒸気でタービンを回して発電をするので、熱を取り出し熱くなっていく原子炉を冷却する必要があります。これも、同じく水を使っていて熱を取り出す役割をするものを冷却材といいます。原子力発電では普通の水を軽水といい、軽水を使った原子炉のことを軽水炉と呼びます。
 原子炉では主にウランが燃料として使われています。天然のウランの中には核分裂するウラン235と核分裂しないウラン238が含まれていてウラン235は天然のウランには0.7%しか含まれていないため3〜5%くらいまで濃縮し核分裂する量や形にして安全なように加工して利用しています。
 この燃料は中性子がないためそのままでは核分裂を始めません。また、制御棒を抜いただけでも核分裂は起きません。原子炉で核分裂が始まるためには中性子がなくてはいけないので中性子源といわれる中性子を放出する性質のものが必要です。これにはカリホルニウムが使われています。
 核分裂が連続して起こる時のエネルギーを利用するという意味では原子爆弾と原子力発電は同じです。この2つの大きな違いは核分裂をする物質の濃度です。原子爆弾は核分裂をする原子の割合が90%以上で、制御棒のような核分裂を抑えるものもないので瞬間的に核分裂の連鎖反応が起こりすべてのエネルギーを放出します。これに対して、原子力発電では濃度やさまざまな装置を利用して中性子の数を調節して核分裂をコントロールして適量のエネルギーを持続的に取り出せるようにしています。

 原子力のエネルギーは核分裂によるもので、核分裂では原子が2つの別の物質になり放射線をだします。また、ウラン238に中性子がぶつかるとプルトニウム239など放射能を持つ物質が生成されます。発電に3年から5年使用されて取り出された燃料の中にはウラン以外の核分裂生成物といわれる放射能を持つ物質が含まれているため厳重な廃棄物処理がされます。発電中に発生したプルトニウム239は原子炉の中で核分裂をして実際の原子力発電ではこのエネルギーもウランからのエネルギーとともに利用されています。

原子炉の種類による核分裂の違い
軽水炉
原子力発電でのプルトニウム生成のしくみと方法
 原子力発電の現在の主流である軽水炉ではウランを使用し核分裂を起こしてエネルギーを得ています。天然のウランでは核分裂をするウランであるウラン235は0.7%で残りはウラン238であるため濃縮しないと軽水炉では核分裂を起こしません。このためウラン235の割合を増やす必要があり、軽水炉ではウラン燃料(二酸化ウラン)の割合をウラン238が95〜97%、ウラン235が3〜5%にして利用しています。
 ウラン235は低速の中性子が衝突することによってウラン236になり不安定なウラン236はすぐに核分裂を起こします。このときに大きなエネルギーと2つの原子と2個から3個の中性子が生成します。この中性子がさらにウラン235に衝突すれば核分裂は連鎖反応になり、核分裂しないウラン238が吸収することによってウラン239になりベータ崩壊によってネプツニウム239、さらにベータ崩壊を起こしプルトニウム239が生成されます。さらに中性子を吸収することでプルトニウムの同位体が生成されていきます。ウラン235の核分裂で発生する中性子の数の平均は2.5個で1つは次の核分裂のために、0.9個は原子炉の制御棒やその他の設備に残り0.6個がウラン238と反応しています。  軽水炉のなかでウラン燃料が使用されると、このようにしてプルトニウムが生成されそのうちプルトニウム239とプルトニウム241はすぐに発電に寄与し現在の原子力発電でも発電量の30〜40%はプルトニウムの核分裂のエネルギーによるものになっています。燃料の利用率を示す転換比は0.5から0.6です。  また、軽水炉でMOX燃料を利用するプルサーマルの時はMOX燃料の中にプルトニウムが3〜7%含まれたものを利用し、炉心の3分の1くらいまでの装荷ならそのまま利用できます。
新型転換炉
 新型転換炉ふげんは、MOX燃料を利用するための原子炉です。ここで使われているMOX燃料はプルトニウム含有率が1から2%のものです。このためエネルギー発生率も高速増殖炉などに比べて悪くなっています。新型転換炉では天然ウランや劣化ウランにプルトニウムをまぜたMOX燃料か1.5%か1.9%に濃縮した微濃縮ウランを使用します。そして減速材に重水や黒鉛を使用することで熱中性子の吸収を悪くして燃料の利用効率を高めています。転換比は0.6から0.8程度です。
高速増殖炉
 高速増殖炉はウラン238に高速な中性子を衝突させてプルトニウム239を生成させることによって新しい燃料を生み出す原子炉です。MOX燃料の中にプルトニウムが10から20%含まれたものを使用します。このように大量に使用するのは、プルトニウム239は高速な中性子と衝突したときの核分裂での中性子発生率が大きいためです。
 プルトニウム239の核分裂では平均して2.9個の中性子を放出します。そのうちの約1.3個がそのままでは燃料とはならないウラン238を衝突してウラン239になり、ウラン239は2回のベータ崩壊でプルトニウム239へと変わります。増殖比(転換比)とは1つの核分裂で1.3個の燃料を生み出すこの割合のことで、1以上の時燃料を増やすことができるのです。高速増殖炉で減速材を用いないのは、プルトニウム239は高速な中性子で核分裂ができ、また高速な中性子が多ければ多いほどたくさんのプルトニウムを生み出すことができるからです。

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