原子力施設では放射性物質を外に出さずに炉内に閉じ込めておくことが重要です。このため、万一事故が発生しても周辺への影響がないようにすることを第1に考えています。
多重防護の考え方に基づいて設計は行われています。多重防護とは事故が起こらないように、起きても周囲に影響を及ぼさないようにという考え方です。このための対策は3つあり、安全対策はすべてこれに基づいて行われています。
- 異常を未然に防止するための対策
- 異常が発生した場合に拡大を防止するための対策
- 施設周辺への放射性物質の異常な放出を防止する対策
原子力発電所の安全性は安全装置の性能や作動時間で評価されていてこれを決定論的安全評価といいます。
また、あらかじめさまざまな事故を想定していますが、その範囲を大きく超える事故である
過酷事故となるのは安全装置がすべて故障した時で、その確率は原子炉1基あたり100万年に1回以下であると評価されています。この確率をさらに下げるための対策をアクシデントマネジメントといいます。日本で行われているものに炉心への注水や原子炉減圧の自動化、非常用発電機の手動起動による電源供給などがあります。
間違った操作を受け付けない
インターロックシステムがとり入れられています。
装置が故障しても安全方向に作動する
フェイルセイフシステムがとり入れられています。
高品質、高性能の材料を使用し、余裕を持った設計になっています。
自動監視装置が常時監視していて異常を発見するとすぐに必要な措置を起こせるようになっています。原子炉は異常を感知すると自動停止するようになっています。これらの装置はそれぞれ独立しているためどれかが故障していてもほかの設備が働くようになっています。
軽水炉は炉の出力が上昇しても核分裂が抑制されて出力の上昇を押さえる自己制御性をもっています。これは軽水炉で核分裂が増加すると冷却材の水の沸騰が激しくなって密度が小さくなり、水は減速材でもあるため減速材としての効果も低くなり中性子は高速なままで新しい原子核と衝突しにくくなり核分裂しにくくなります。この効果を減速材のボイド効果といいます。
燃料のなかのウラン238は核分裂しませんが温度が上昇すると中性子の吸収も増えます。核分裂が増加して燃料棒の温度が上昇すれば、ウラン238の中性子の吸収も増えるのでウラン235と衝突する中性子は減少し、核分裂は押さえられ出力も低下します。この効果を燃料のドップラー効果といいます。
非常用炉心冷却装置(ECCS)が設置されてします。この装置は原子炉内の水が失われるという事故が起きても中に水が自動的に注入され炉心を冷やし破損を防ぎます。
5重の壁によって放射性物質は閉じ込められています。放射性物質のほとんどはペレットによって封じ込められ閉じ込めきれない希ガスはペレットを入れてある燃料被膜管で閉じ込められます。圧力容器、格納容器、原子炉建屋によって覆われ、放射性物質の外部への放出を防いでいます。
建物内の気圧は内部にいくにしたがって低くし、放射性物質が外に出ないようにしています。施設はコンクリートで作られ鉛板や鉄板によって外部にもれる
放射線量をできるだけ低くしています。