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岩間 - これはあくまでも僕達の意見ですが、民族音楽は文化的・歴史的な側面を持つと思っています。例えば、「ブルース」の背景とはなっているのは、「奴隷制」であり「人種的な差別」だと思います。それでは、アイルランド伝統音楽の背景とはどのようなものだと思いますか。
ピーターさん - 私は専門家ではないよ。あ、音楽が始まったようだけど、どうしようか。 岩間 - 良いBGMですよ。 ピーターさん - うん、私が知っていることを話すよ。僕達が演奏している音楽は「一般大衆の為の音楽」だったんだ。昔、演奏家は人々に大切にされていた。彼らは国中を回って、村から村へと演奏していったんだ。大体は、ダンスの為にね。人々は単に演奏家の演奏を聴くだけじゃなくて、みんなで集まって踊ったんだ。ダンスの先生が、演奏家と一緒に旅をして人々にダンスを教えてね。 岩間 - つまり、アイルランド音楽はダンスの為にあるのですね。 ピーターさん - 大体はね。後、伝統音楽には歌もあるよ。今日この二人ではやれないけど、歌も歌うことがある。歌に関しては、歌をたくさん覚えるのを得技としている人もいる。彼らは歌を覚えて、次の世代の伝えることが仕事なんだ。 岩間 - つまり、歌を覚えることで生きているわけですね。 ピーターさん - それと、若い人々に歌を教えることでね。若者の中には、ソウル・シンガーになって、アイルランドの伝統を伝えてくれる人もいるだろう。
「踊り」は音楽に合わせて楽しまれる。18世紀には、ダンシング・マスターと呼ばれる職業があった。人々にダンスを教えるのが仕事なのだ。彼らのほとんどは独身で特定の場所に定住せずにアイルランド国中を放浪してダンスを教えた。ダンシング・マスター同士が偶然出会うと、ダンス決闘というものが行われた。このダンス決闘とは、どちらかが疲れきって踊れなくなるまで、ダンス・ステップの見せ付けあいをするというものだった。村人達にとっては、ダンシング・マスターを家に泊めることはとても名誉なことで、彼らは客人としてもてなされたそうだ。 |