私たちは沖大幹先生を訪問したことを通して、水問題は社会や企業の取り組みだけで解決できるものではなく、消費者である私たちの意識を変えることも大切だと感じました。
しかし、水が豊富である日本に住んでいる私たちは、水が十分な量ある環境を当たり前に思い、なかなか水問題を身近に感じることができません。
そこで、水の重要性を改めて感じてもらうために、私たちが日常口にしている食事を示した献立を作り、環境省の仮想水計算機(*1)を基に、献立の食事を作るまでに消費する水の量を計算しました。
そして、それを献立表に表示することで、食事を作るまでに消費する水の量が一目でわかる献立表を作りました。
肉類や小麦など食品の生産には多くの水を消費するため、バーチャルウォーターの量は多くなります。さらに食品だけでなく、オリーブ油などの調味料やお茶やジュースなどの飲料にも多くのバーチャルウォーターが必要となるため、私たちは食事をすることで、思っている以上に多くの水を消費しているといえます。
また、煮物、みそ汁などの和食は、ステーキやハンバーグなどの洋食に比べて肉の使用量が少ないため、バーチャルウォーターの量が小さくなる傾向がありました。肉の生産過程では、飼料用にトウモロコシなどの穀物が大量に使用され、肉を使用したメニューではバーチャルウォーターの量が多くなります。
肉の中でも牛肉はその傾向が顕著で、豚や鶏の約4倍ものバーチャルウォーターが必要となるため、特にハンバーグや、ステーキなどの牛肉を使った料理はバーチャルウォーターの量が多くなりました。さらに和食の食材は洋食に比べて、日本で生産できるものも多いため、輸入するバーチャルウォーターの量も少なくなります。
しかし、日本はカロリーベースの食料自給率が38%(*2)と低く、多くの食料を外国からの輸入に頼っています。
特に生産に多くの水を必要とする牛肉の自給率は36%(*2)で飼料自給率を考慮すると10%(*2)とさらに低くなります。それを補うために、多くの食料を外国から輸入し、その分多くのバーチャルウォーターを輸入してしまっています。
つまり、食料自給率が低いということは、世界中の水資源をバーチャルウォーターとして 摂取してしまっていることを意味するのです。
食事のほかにも、私たちはトイレやお風呂、洗濯など生活するうえで多くの水を使っています。
右の図からもわかるように先進国では平均150~250L/日・人もの水を使っています。しかし、『水危機 ほんとう話』の中で、著者である沖大幹先生は
「ヒトとして生命の維持に最低限必要な飲み水は1日2~3ℓあれば十分です。」と述べています。
このことは、水の問題は、単に生きるか死ぬかだけではなく、ヒトが快適に人間らしい生活を送れるかどうかという問題につながるということを表しています。
*1:環境省「仮想水計算機」
*2:農林水産省 2018年のデータ
*3:水道技術研究センター 2017年のデータ
参考文献
・沖大幹(2012)『水危機 ほんとうの話』新潮選書
水道技術研究センターが公表したデータ(*3)より作成