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解決に向けた調査

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    まずは、世界について見る前に、日本の水をめぐる現状について見てみましょう。

    日本の気候

    日本はモンスーンアジアに位置しており、世界の中でも多雨地帯に属しています。日本の年平均降水量は1,668mm(*1)であり、東京の年間降水量は1,529mmです。
    この値は世界の年間平均降水量、814mm(*2)の約2倍に当たります。
    しかし、1人当たりの再生可能な水資源量は3,397㎥/人・年であり、世界平均の約1/3となっています。

    日本とニュージーランドの年降水量を比べると、どちらも同じくらいです。
    一方、1人当たりの再生可能な水資源量を比べると日本は約3,000㎥/人・年であるのに対して、ニュージーランドは約70,000㎥/人・年もあるのです。

    国土交通省水管理・国土保全局水資源部 平成28年度版 日本の水資源の現状 より引用 2018年11月9日閲覧

    気象庁HP(*1)より作成

    日本は、降水量が多いにもかかわらず、なぜ1人当たりの利用できる水資源量が少ないのでしょうか?

    日本の1人当たりの再生可能な水資源量が少ない理由

    日本では多くの雨が降り、降水量に恵まれているにも関わらず、1人当たりの水資源量はとても少なくなっています。
    その理由として
    1.人口密度が高いから
    2.こうばいが急な地形だから
    3.森林の水保存力が低下しているから
    という3点が挙げられます。

    1.高い人口密度

    日本の人口密度は335人/㎢(*3)であり、水の需要が多い国です。また、日本国内でも地域によって1人当たりの再生可能な水資源量には大きな差があります。
    下のグラフを見ると、各地の年平均降水量には大きな差がないにも関わらず、1人当たりの再生可能な水資源量は地域によって大きな差があることがわかります。

    人口密度の高い関東と人口密度の低い北海道を比べると、1人当たりの再生可能な水資源量量は約10倍近くの差があります。
    1人当たりが使える水資源量は、雨によってもたらされる水資源量だけでなく、その水資源を利用する人口と国土の面積も関係しているのです。

    国土交通省 平成27年度版 日本の水資源の現状 より引用 2018年11月9日閲覧

    2.急こうばいな土地

    日本の河川は急勾配で短いため、降水量の3分の1がそのまま海に流れ込んでしまっています。
    さらに、雨は梅雨の時期や台風の季節に集中し、降水量は多いものの
    それらの水が利用されないまま海に流れ出てしまっているのです。

    3.森林の水保存力の低下

    第二次世界大戦後、深刻な住宅不足にあった日本は材木を確保するために、それまで広葉樹林や雑木林だったところを、材木に適しているスギやヒノキなどの針葉樹林に植え替えました。

    これらの針葉樹林は成長が早いというメリットがあるものの、適切に間伐が行われなければ陽がささなくなり、木は育たなくなっていしまします。

    さらに、現在は外国産の安い木材が多く輸入されているため日本の木材は売れなくなり、森林は放置される状態になりました。
    その結果、森は土中に雨水を蓄える力が弱くなってしまったのです。

    1人当たりの水資源量が世界平均の1/3程度にも関わらず、日本で水不足であることを実感しないのはなぜでしょうか? それには食料の輸入が大きく関係しており、ここでバーチャルウォーターというキーワードが出てきます。
    バーチャルウォーターがわからない方はこちらへバーチャルウォーターとは?

    なぜ日本のバーチャルウォーター量は多いのか?

    日本のバーチャルウォーター輸入量は640億㎥/年であり、これは日本国内のかんがい用水使用量(農業生産効率化のために、農地に人工的に給排水する水)590億㎥/年を上回る値です。
    日本はなぜこんなにも多くのバーチャルウォーターを輸入しているのでしょうか?

    低い食料自給率

    日本が輸入しているバーチャルウォーターを品目別に見ると、90%以上を農畜産物が占めています。日本の食料自給率は38%(*5)であり、特に大豆や小麦、家畜の飼料となるトウモロコシの自給率がとても低く、輸入に頼っています。

    また、食肉の自給率は52%(*5)、輸入額は961万ドル(*6)で世界1位であり、日本は生産に多くの水を必要とする肉類を多く輸入しているのです。

    『水危機 ほんとうの話』(*7)より作成

    なぜ日本は食糧を多く輸入するようになったのか?

    日本が多くの食料を輸入するようになった理由として、
    “食生活の多様化”が挙げられます。以前は米を主食とした野菜中心の食事だったため、日本国内で需要をまかなうだけの食料を生産ことができました。

    しかし、食生活が多様化して肉類や油脂を食べるようになったとともに、人口も増加したため、国内だけでの生産では需要に応えることが出来なくなりました。

    『水危機 ほんとうの話』の中で、著者である東京大学の沖大幹先生は
    「日本の場合には水が不足しているからそれを補うべくバーチャルウォーターを輸入しているというよりは、平地が不足しており、飼料用穀物や牧草を生育する農地牧草地が十分確保できていないのでいわばバーチャル農地としての飼料用穀物や肉類を輸入していて、そのついでに仮想水(=バーチャルウォーター)が輸入されている」
    と述べています。

    日本の食料輸入にともなう環境への影響

    右の図は日本の主な農畜産物の輸入品と相手国を表したものです。これらの図を見ると日本は小麦やトウモロコシ、大豆などの農作物や肉類などの畜産物の多くをアメリカから輸入していることがわかります。

    現在、アメリカではかんがい農業による地下水の過剰なくみ上げが行われ、地下水の枯渇が問題になっていますが、アメリカから多くの食料を輸入している日本は、これらの問題と無関係ではないと言えます。

    *1:気象庁HP 世界の天候2018年11月12日閲覧
    *2:国土交通省 日本の水資源の現状FAO(国連食糧農業機関)「AQUASTAT」を基に国土交通省水資源部が算出 2018年11月9日閲覧
    *3:UN(国際連合)「Demographic Yearbook 2017」2017年のデータ 2019年1月8日閲覧
    *4:環境省HP_virtual water2000年のデータ 2018年11月9日閲覧
    *5:農林水産省 日本の食料自給率2018年11月9日閲覧
    *6:ITC(International Trade Centre)2017年のデータ 2018年11月9日閲覧
    *7:『水危機 ほんとうの話』 著/沖大幹 新潮選書 2012年
    *8:『日本国勢図会 2018/19 第76版』公益財団法人 矢野恒太記念会

  • 『日本国勢図会 2018/19 第76版』(*8)より作成