世界の豪雨対策

日本の豪雨対策については、ニュースでよく見聞きし、自分で対策を行なっている方もいらっしゃると思います。ですが、世界の豪雨対策についてはあまり知られていません。ここでは、マレーシアとブラジルを例にとって紹介していきます。

0.どこで雨が多いの?

平常降雨量の分布図

この分布図を見てみると、図の中央にある東南アジアや日本の九州地方で降水量が多いということがわかりますね! 他にも、図の右側にある南アメリカ大陸の上部や、ブラジルのリオデジャネイロ付近も降水量が多いということがわかります。 では、これらの雨が多い地域ではどのような対策をしているのでしょうか?

左の画像は気象庁「世界の天候データツール(ClimatView 月統計値)」です。気になった方はこちらから(外部サイトへ)

1.マレーシアの対策は?

マレーシア地図

まず、降水量が多いイメージがある東南アジアに注目しました。 そのなかでも特に降水量が多かったマレーシアに焦点を当てていきたいと思います。

マレーシアは気象庁の過去30年(1991年から2020年)のデータから、年間約2800mmもの雨が降ることがわかりました。 これは東京の年間降水量1600mmの1.75倍あたります。マレーシアに住んでいる人は雨とうまく付き合いながら生活していく必要がありそうですね。

では、マレーシアに住んでいる人は具体的にどのような対策をしているのでしょうか。

BBC NEWSによれば去年12月17日ごろからマレーシアの多くの地域で過去数十年で最悪規模の豪雨が発生し、12月20日の時点で5万人以上が避難し、 14人が死亡するなどの多くの被害がありました。 この時にインタビューに応じた女性は「洋服と、子どもの出生証明書などの重要書類しか持ち出さなかった」と語っています。

この女性の話から、災害が起きた際には、必要最低限のものを持っていち早く避難するという意識が伝わりますね。 また、被害が大きい地域では、住民が避難を余儀なくされた人のために自宅を避難場所として提供したり、救助活動を支援する様子を発信したり、助け合う様子を見ることができたそうです。

国民が助け合って災害を乗り越えていこうとしている中、マレーシア政府の対応はどうだったのでしょうか? 警告はほとんど出されず、市民防衛隊が災害発生から3日後に助けに来るということまであったので、国民からの怒りも生じてしまったそうです。

これらのことから、マレーシアに住んでいる方の多くは避難時の意識も高く、国民同士の助け合いが多いことがわかりました。 それに対して、政府の対応はまだ不十分であるという現状もわかりました。

日 本ではJアラートや自衛隊の派遣などの対策をしっかりしているので、さらに住民同士の助け合いを増やすことが重要だと感じました。

2.ブラジルの対策は?

ブラジル地図

次に焦点を当てたのはブラジルです。 CNNによると2月15日ごろからブラジル北東部サンパウロで豪雨による地滑りや洪水が発生し、91人の死亡が確認され、一部の地域では24時間で普段の1か月分の雨が降り、4000人近くが家屋を失ってしまうほどの大災害が発生しました。 この災害では、14の自治体が緊急事態宣言を発令し、学校を避難場所として開校しました。

では、ブラジルはこのような豪雨を何回も経験している中でどのような対策を行っているのでしょうか? 国際協力機構 (JICA)によれば、ブラジルのリオデジャネイロでは市独自の予算を使って市域を中心に防災対策の取組を行っているようです。 2010年頃からは米IBM社と共同で危機管理センターを創設し、災害予報システムや交通情報、電気・ガス・水道のライフラインの状況、消防や救急車などの危機対応チームなどの統一を行っているようです。 これにより、市の様々な部局から寄せられる情報を集約して、指示を行い、豪雨などにより発生する交 通渋滞などの被害を軽減しているようです。

しかし、これは首都リオデジャネイロでの話であり、先ほどの災害が起きた北東部を含む、国内の低所得地域(スラム街または貧民街)では 災害対策が不十分 であるということが現実です。 低所得地域は多くの場合、都市の外側の道が崩れやすい場所にあります。そのため、これらの地域では洪水の被害をより受けやすくなるとされています。

これらのことから、ブラジルは日本と比べて、都市部では災害情報の統一化が行われ被害をより抑えることができるのではないかと考えられますが、スラム街や貧民街はまだ十分な対策ができていないように思えました。 また、日本では2018年の西日本豪雨の際に、通行止めになる道路が増加し、渋滞が発生したことがあるので 、リオデジャネイロのようなシステムを導入したほうがいいのではないかと思いました。

3.コロンビアの対策は?

コロンビア地図

最後に焦点を当てたのはコロンビアです。CNNでは、コロンビアの複数の地域で2022年の2月と4月に地滑りで少なくとも計26人が死亡したことが報じられています。 いずれの地滑りも豪雨によるものでした。2月の地滑りが起きた原因として、午前中の大雨とその地域の不安定な地盤が地滑りを引き起こしたと述べました。

4月の地滑りの原因は政府が川のほとりに住んだり活動したりする人に対してのリスク管理ができていなかったことだとし、政府は2月の災害が起きた後、再び同様の被害が起こってしまったことから、これからはこのようなことが今後も起こり続けると意識する必要があるとしました。 また、今回の犠牲者に対して、必要な支援を提供したり、他の危険な状況を避けるために、この地域での水道とガスのサービスを停止したり、状況の恒久的な監視の維持、家を失った家族のための賃貸支援を開始すると発表しました。

これらのことから、コロンビアは防災という面では毎年の豪雨災害から学び、対策するということがわかりました。また、地滑りの被害は出ているものの、そのほかの豪雨によって引き起こされる二次被害による犠牲者は少ないことから、国民と政府は予期されているレベルまでの防災はできていると考えられます。 そして、災害が起きた時の政府の対応としてはさらなる被害に備える姿勢から最大限の対応をしているのではないかと感じました。

したがって、コロンビアは毎年の激しい豪雨から対策方法を学び取り、国民と政府が協力し合いながら防災対策をしているのだとわかりました。日本は豪雨そのものの浸水被害や河川の氾濫による犠牲者がまだまだ多いのでコロンビアのように国民自身が豪雨の恐ろしさを認識することが重要だと思います。

3つの地域を調査して、世界と比べて日本政府は災害対策を広範囲に高水準で行っているということがわかりました。 しかし、豪雨災害の被災者を減らすためには、政府の対策も重要ですが、個人の防災意識が一番大切なのではないかと感じました。 例えば、防災セットを事前に用意しておくことや、避難指示が出たらすぐに行動すること、近所の人にも呼びかけを行うなどの行動です。そのような行動で年々規模が大きくなっている豪雨災害に対処し、1人でも多くの人の命を守ることにつながるのではないでしょうか。