名古屋税関への取材
皆さんは、海外からの模倣品がどれだけ日本に入ってくるか考えたことはありますか?日本の模倣品による被害額は、特許庁の2020年調査によれば約3.2兆円に達しています。その模倣品とは、偽ブランド品つまり商標権を侵害する物品であり、企業に多大な被害をもたらしてしまいます。
そこで日本の中部地方で模倣品などを取り締まっている「名古屋税関の中部空港税関支署」様に見学をさせていただき、税関について商標権などの権利について学んできました。
皆さんは税関の仕事がどんなものか知っていますか?税関職員の仕事は、国に入ってくる荷物や人をチェックして、法律やルールを守っているかを確認することです。具体的には、違法な物や危険な物が入ってこないようにしたり、税金が正しく払われているかを見ます。また、輸入される商品が安全であるかも確認する大切な役割を果たしています。
皆さんは、模造品がどこの国から来ていると思いますか?令和5年の名古屋税関の調査では輸入差止件数が31,666件、輸入差止点数は1,056,245点で、図のように中国からの差し止め品が80%を超えており、その中でも、商標権や意匠権を侵害した物品が全体の90%を占めています。
このように中国からの物品は税関職員も特に気を付けて見ているようで、税関全体で中国からの模倣品を食い止めているのが課題です。税関ではマニュアルを作成したり、セミナーを開催して中国からの模倣品を対策しています。
今回見学していて一番驚いたのは、物品の差し止めについてです。私たちは最初、税関職員は知的財産について完璧に知っていて、違反している物品に目を光らせ随時摘発していると思っていました。ですが実際は企業おおび権利者から「この物品止めてくれ」と申請されたものしか差し止めをしていないということです。つまり、違反している物品を発見しても申請されていない物品の場合は見逃さざるをえないということです。なかには、会社の知名度を上げるためにわざと見逃しをさせている企業もあるそうです。申請をすることで被害を抑えることに繋がります。ぜひ覚えておきましょう。
申請はここから申し込めます。
https://www.customs.go.jp/mizugiwa/chiteki/
入国時などに荷物がどのように検査されるのか。また通関時に、気を付けなければならないことなども学んでいきましょう。出国時の荷物検査の流れは図のとおりです。
手荷物検査、税関検査では「荷物では持ち込んではいけないもの」が多々あり、麻薬や知的財産侵害物品などが禁止されています。また、税関検査では日本に持ち込む際に税がかかるものもあり、調べておく必要があります。これ以外にも、税関ではコンテナ船などの荷物の検査や大型X線調査など、不正に持ち込まれる物品を水際で取り締まっています。
皆さんも、ブランド物のバッグを買う際などに、ニセモノに騙されないように知識をつけておきましょう。まずはこの二枚の写真を見て、どちらが模造品か見分けることができますか。初見で見抜ける方がいたら、ぜひ税関職員を目指してみてください。
※名古屋税関にてチームメンバーが撮影
正解はBです。皆さんはAとBの違いが判りましたか?写真では難しかったと思います。実際に見た私たちでも、分かりませんでした。
主に違う点は、作りこみの凄さです。例えばBではロゴ模様が、布の継ぎ目によって途中で途切れてしまっているのがわかります。あとは、布の質感であったり、継ぎ目の綺麗さなどで違いが生まれます。正規品はちゃんと値段相応の価値があります。税関職員の方はこれを瞬時に見分けて摘発しています。違いの分かる大人になりたいですね。近年、模造品のクオリティーも上がってきていて税関職員の方でさえ見分けるのが難しい時もあるといいます。皆さんも、ブランド品を買うときは、気を付けましょう。