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「未来の科学者と世界に羽ばたく中高生」は理系と海外留学を考えている中高生を応援します。

物理研究会(自然エネルギー研究班)東京都立小石川中等教育学校

〒163-0000 東京都文京区本駒込2-29-29

世界物理オリンピック銅メダリスト

国際物理オリンピック ( 物理研究会T.Tさんにインタビュー)

代表になるまで

 日本物理オリンピックである「物理チャレンジ」(以下JPhO)に参加することが、すべての始まりです。以下の表におおまかな流れを書きましたが、詳しくは物理チャレンジのwebサイトをご覧ください。”物理チャレンジ”で検索すればヒットするはずです。なお、以下の表は「物理チャレンジ2014」のスケジュールですので、現在のものとは異なる可能性があります。






 時期  課題  備考  全体
 1月  実験課題公開  実験課題は「摩擦」でした。  JPhO予選
実験レポートと理論試験を総合して上位100名が本戦へ  
 6月  実験レポート〆  優秀なレポートには実験優秀賞を授与。
 7月  理論試験  90分マークシート方式、参考書持ち込み可。
 8月  JPhO本戦  3泊4日の合宿。5時間の実験試験と5時間の理論試験。試験も大切ですが物理仲間も!  JPhO本戦…銅賞以上 (上位30名)、かつ高校2年以下の選手が日本代表候補に
 9月  秋合宿  @軽井沢 顔合わせや今後の説明  日本代表候補研修
毎月、理論添削門祭の提出。(大変)春合宿の試験結果をもとに代表5名決定  
 12月  冬合宿  @東京工業大学 実験、理論研修(キツイ)
 3月  春合宿  @東京工業大学 実験試験、理論試験を2つ
 5月  実験研修  @大阪大学 光学実験が中心でした  日本代表研修、理論添削の継続
 7月  IPhO  @インドムンバイ 来年はスイスです。  IPhO!!

       

物理オリンピック

出発まで

7月2日 直前研修: 実験問題の過去問演習
7月3日 結団式@東京理科大学:物理オリンピック過去参加者(以後OP)の方々に、激励という名の盛大な煽りを受けました。(ある人によると、運が良ければ普通に金メダル程度は取れるそうです笑)
 インドに向かったのは右の写真のメンバーです。左から
Wさん(東大寺学園1年):JPhOの時から同じ班で、最も付き合いの長い友人です。アニメが好き。IPhO最終日には、部屋で「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている」を一緒に見ていました。意外と面白かったでです。
Yさん(大阪星光学院2年):インドのホテルで同室でした。インドの食事に臆せず果敢に何でも食べていたので、フードファイターというあだ名がつきました。ちょっと意味は違いますけど…。
T(本人):周りは、古文でいう「はづかしき」面々でした。このメンバーの中にいられたことを嬉しく思います。写真でセンターなのは、五十音順だからです。
Kさん(灘高等学校3年):今年の日本代表団キャプテン。写真を撮るとブレてる率が異様に高かったことからブレKと呼ばれる。
Uさん(灘高等学校1年):インドでT(本人)とともに体調を崩した仲間(?)です。ホラー映画好き。お化け屋敷でのテンションが異様。
 研修やIPhOを通じて、全員と想像以上に仲良くなれました

インド

7月4日 インドへ

 羽田空港から、シンガポール経由でインドに向かいました。2月に小石川中等教育学校の修学旅行でシンガポールに行っていたので、デジャブ感が。22時頃にインドに到着。空港を出た瞬間にサウナのような熱気がもわもわとしているのが感じられました。引率の先生とOPは問題翻訳を担当するため(物理オリンピックは公平に母国語で解けるように配慮がされています)、問題漏洩を防ぐ目的で別々のホテルに泊まります。空港でお別れして選手だけになり、少し緊張しました。

 ホテルで日本チームのガイドのKさんと顔合わせした後、既に12時をまわっていたのですぐに寝ました。ちなみにホテルは5つ星で、今後の人生で二度と泊まることのなさそうなレベルのところでした。インド太っ腹だなーと思っていましたが、よくよく考えると、万が一の場合に参加者の安全を確保できるように大会運営側が大事をとったのかもしれません。

7月5日 開会式

 朝食は一つ目の山場でした。インドでの初の食事、ということで全員がビビっていたのです。出発前に、水道水を飲んではいけない(歯磨きもミネラルウォ―タ―で)や、2年前の生物オリンピックで屋台のアイスを食べた子が車椅子で帰国した、などと脅迫され過ぎて、特に胃腸の弱い大人である私は緊張と相まってほとんど食べられませんでした。レトルト食品は大量に持ち込んでいましたが、それもあまり食べる気が起きず、インドにいる間は摂取カロリーが一日500KCalを切っていました。それで後に体調を崩します。

 朝食の後、選手登録を済ませて色々なグッズを貰いました。貰った折り畳み傘は凶器のようにシャキンッとしていたので一度も使いませんでしたが。その後、外部と一切の連絡を絶つため(問題漏洩への警戒)、電子機器は自己申告ではありましたが全て回収されました。Kさんは、カメラにセルフタイマー用のWifi機能が備わっていたので、(絶対にその必要はなかったのですが)大事をとって回収して貰っていました。リスクをとらないところは、さすが灘高生ですね。


 開会式ではインドの伝統的なダンスが披露されましたが、私とKさんを除いて皆さん夢の中…。長時間の移動で疲れていたので仕方ないです笑。また、私は羽田空港で買ったピカチュウのぬいぐるみを持って、可愛いキャラを演じました。 やはり、中3でオーストラリア研修旅行に2週間(大失敗)、中4でアメリカ留学(成功)、を経ていると、海外の人との交流は上手くなりますね。自慢です。このピカチュウのおかげで、他国の選手と話す機会が増え、私は内心ニヤニヤしていました。マカオの女の子が大きいリラックマを持っていたのには負けましたけど。

インド

7月6日エクスカーション
(プラネタリウム、博物館)

 インドには大変申し訳ないのですが、あまり面白くなかったです。プラネタリウムも日本の方が綺麗だったので、日本代表は全員就寝してしまい、後ろのオランダ代表に起こされてしまいました。日本の恥をさらししてしまい申し訳ありません。また、何の意図もなく、本当に偶然、最初に仲良くなったのはイタリアとドイツ代表でした。たまたまとはいえ、何か複雑な気持ちになりました。

7月7日 実験試験

 今年の実験は光の回析と干渉が主でした。詳しくは割愛しますが、色々あって私は壊滅し、試験後には顔面蒼白になりました。20.0満点(実質200点)なのですが、5点ぐらいしか取れていないと思い、本当に死にたくなりました。実際には9点くらいあったので安心しましたけれど(これでも相当低いですが)。テスト中、もの凄いスコールで外がうるさかったり、試験会場にハエがけっこう飛んでいたりなど、インドならではの妨害に合いましたね。

インド

7月8日エクスカーション
(研修施設、ムンバイ街歩き)

 再び申し訳ないのですが、研修施設は面白くなかったです。簡単な実験しか見せてもらえず、暑さで辛かったのもあってあまり楽しめませんでした。一方、街歩きの方は、これまたしんどかったですがとても良い経験になりました。スラムは治安が悪すぎて行けないので、一応普通の街なのですが、バスを降りるなり商人が太鼓(小鼓)を買うように迫ってきました。
 
 太鼓ということで、インド人のオリンピックスタッフが音の実験でもやるのか、と勘違いしてうっかり一緒に叩いてしまったのが失敗でしたね。Kさんが間に入ってくれて助かりましたが、カモだと思われたようで大変でした。観光気分で歩くのは現地の人の目が辛かったですし、屋台でハエが群がっている食べ物(線香を焚いて匂いはごまかしていました)を売っていることには驚きました。理論試験の前日だったのはマイナス点でしたが、いわゆるインドを体験できたのは全体を通してこの時だけです。

インド

7月9日 理論試験

 前述のように、ほぼ絶食状態だったので、ここでついに胃腸がおかしくなって、睡眠不足+腹痛+実験壊滅による緊張、という地獄の試験でした。それでも実験試験よりはできたので、とりあえず安心しました。内容は、太陽からの熱放射や、原子力発電の中身、などについてでした。


7月10日 エクスカーション
(Imagica! 遊園地)

 IPhO全体を通しても楽しかったです。ヨーロッパや中国の支援のもと、インドで本格的に建設されたテーマパークということで、普通に高クオリティーでした。代表メンバーで勉強したりトランプしたりはありましたが、一緒に遊びに行くことは無かったので、とても良い思い出になりました。
 
 また、インドならではの点として、アトラクションの揺れが、日本では苦情が来そうなほど激しかったことや、`Wrath of Gods"というアトラクションで、無予告に、鞄所持状態でありえないレベルで濡らされたことが挙げられます。まさに滝のような水がリュックに…。また、コーヒーカップで調子に乗ってグルグル回し過ぎたら、みんな体調が悪かったので死にそうになりました。そんな懐かしい思い出です。

インド

        

7月11日エクスカーション
(Mahindra車工場)

 ホテルから工場まで5時間かかる、ということで朝5時起き。前日に、そもそも行くか行かないか選択を迫られるという謎のエクスカーションでしたが、Kさんの英断(?)のもと参加しました。行きのバスで酔ってしまい、例によって胃腸の調子も悪かったのでしんどかったです。

 見学内容も、企業の宣伝といった感じでそんなに…。Mahindraという名前を覚えてしまったので、向こうの目論見はまんまと成功したのでしょうが。悔しいです。ただ、帰りのバスでKさんとインドの文化についていろいろな話ができたので、必ずしも悪いことばかりではなかったですね。

7月12日閉会式

 私は実験試験が前述のとおり5点くらいだと思っていたので、本当にメダルが取れるかわからず恐ろしいほど緊張していました。会場に着いたら、アイスランドの代表が結果の紙をどういうわけか入手していたので、こっそり見せてもらったところ、銅メダルのところに自分の名前があって本当に安心しました。色々と失敗してしまったので、最良の結果という訳では無かったのですが、メダル獲得は最低限のラインだと思っていたので(メダルを取れないと某インターネット掲示板で叩かれるという噂が笑)、崩れ落ちるほど安心しました。

 参加者の上位8%に金、次位16%に銀、次々位16%に銅、が与えられるのですが、Wさんが金、KさんとYさんが銀、Uさんと私が銅、でした。中国、韓国、アメリカ、ロシアなどなど、5人ほとんどが金メダルをとっている国もかなりあって、悔しかったです。

帰国

7月13日

 チェックアウト時に使っていないWifi代を請求されるという危ないトラブルはありましたが、無事に切り抜け帰路につきました。Kさんとのお別れは残念でしたが、食事が辛かったので、それほど未練もなく(笑)インドを発ちました。機内食はとてもおいしかったです。

7月14日

 帰国後、文部科学省を表敬訪問しました。下村博文文部科学大臣は安保法案でお忙しいとのことで、藤井基之副大臣にお迎えいただきました。その後、テレビ取材(グッディ)が入って、解散しました。グッディでは、私だけ関東圏、ということで銅メダルにもかかわらず変にフューチャーされてしまいました。初のテレビ取材経験でしたので緊張しましたが、放送されたものを見ると、それ程悪くは映っていなかったので安心しました。



上記の記事は2015年11月にTT様(取材時高校2年生)より取材しました。


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