Yさんは2015年の7月から8月にかけて、ガーナで2週間、ケア&コミュニティの活動に参加しました。主に行ったのは、デイケアでの子ども達のお世話と、小学校の修繕作業。今は活動中に残した約1万字のメモを見ながら、体験談を書いたそうです。
Yさんが今回のプログラムに申し込んだ経緯を説明すると、「トビタテ!留学JAPAN」という国の奨学金制度がきっかけでした。学生の自由な留学を支援するというこの制度には、国際ボランティアをする高校生を支援するコースがあったため、それに合うボランティア会社を探したそうです。以下Yさんのお話です。
募集が昨年度の2月と早い時期だったのですが、その時期から詳しい情報が用意され、なおかつ、高校生向けのプログラムがあり、安心して参加できそうなProjects
Abroadを見つけ、「ここを利用しよう」と即決しました。
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スタッフの方達の丁寧なサポートを受けながら準備を進め、迎えた出発日は、とにかくワクワクしながら一人飛行機に乗り込みました。しかし、正直なことを話すと、それからの2週間は「完全な理想通り」とはいかず、大変な思いも多くしました。
特に大変だったのは、現地でのコミュニケーションでした。私が活動したのは、総勢6人という少人数の女の子のグループ、それも私以外の皆は英国やアイルランドといった近い地域から来ていて、元からの友達同士3人で参加だったり、メールで約束して同じ飛行機で渡航してきた2人組だったりと、1人で来たのは私だけ。それも唯一のアジアから来たノンネイティブ。正直浮きまくっていました。
頼りにしたい現地のガーナ人スタッフはとても優しかったのですが、英語の訛りが強く、意思疎通に疲れて嫌になることもしばしばありました。ただでさえ途上国での生活、慣れないバケツのシャワーや炭水化物ばかりの食事、加えてハードな仕事。孤独を感じながらそれらをこなすのは辛く、何度も一人涙しました。
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さて、Y(私)はこれから参加する方が同じような環境での活動になる場合を考えて、ここまで大変だったことを書いてきましたが、もし「このプログラムを誰かに勧めたいか」「もう一度このプログラムに参加したいか」と聞かれたら、間違いなく「はい」と答えます。ここまで挙げてきたことに代えられないほど、現地で得たものは大きすぎるからです。
未知の環境に飛び込んでいく度胸や、現地でしか得られない知 識、何より日本では絶対に出会えない経験、景色、思い出。また、矛盾するようですが、かけがえのない仲間。あれほど、自分だけ蚊帳の外だと思っていたグループの仲間たちですが、多くの活動を常に共にすることで、二週間目には溶け込めるようになっていました。そして、最終日には涙ながらに別れるほどの仲になりました。最後まで彼女たちの速い会話のスピードについていくことはできず、相変わらず黙って輪の中で笑っているばかりでしたが、誰かと言葉なしで心を通わせられた人生初の経験だったと思います。
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彼女たちとは、帰国後も連絡を取っていて、今は、別れ際にグループのメンバーに言われた、「Y(私)がいつかロンドンに来てそれでまたみんなで集まるんだよ」という
約束の実現を夢見ています。
もちろん、現地の人々との触れ合いは忘れられない経験になりました。特に、子供たちと過ごした時間は、
かけがえのない思い出です。英語がまだほとんど話せない彼らとの交流は、言葉が通じないせいで、もどかしい思いもしましたが、それでも無邪気に
「アンティ!(年上の女の人を呼ぶ言葉)」と駆け寄ってきて、無条件で笑顔を振りまいてくれた子供たち。 彼らとその笑顔が、今はとても恋しいです。
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また、Y(私)は、以前から国際協力に興味があったのですが、そういった面でもすごく有意義な日々を送れました。現地に行かなければわからない実情や、実際に聞くことでわかる人々の生の声が必ずあります。例えば実際に不自由な電気や水事情の下で暮らしたことで、途上国開発にさらなる興味を抱きました。
加えて、Y(私)は、帰国後にガーナについての講演を聞いたり、途上国に関する展示を見る機会があったのですが、実際に行ったことがある分、高い共感度をもって吸収することが出来ました。自分なりの意見や解釈も、本やネットの知識しかなかった時よりも持てているなと思います。そういった財産を、大学進学を控えた高校生のうちに得られたのは、本当に貴重なことだと思います。
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この夏は、今まで生きてきた16年と少しの中で、間違いなく一番濃い夏でした。今、写真や記録を振り返ると、夢だったのではないかと思うほど刺激的な日々でした。ここに書き切るにはとても足りません。
これから参加する方にアドバイスするとすれば、グループの仲間と早いうちから積極的にコミュニケーションをとること。結局言葉よりも、仲良くなりたいという気持ちを伝える姿勢が大事で、活動は仲間との絆が深まるほど楽しいものになります。これからもより多くの高校生が素晴らしい経験が出来ることを願っています!!
文化祭での講演より (Yさんインタビュー)
高校生が見たガーナ
今年の夏、トビタテ!留学JAPANという国の奨学金制度を通じて、ガーナで2週間ホームステイをしながらボランティア活動を行いました。今回は、私がガーナに行くことになる経緯から、向こうでの活動まで、いろいろと紹介させていただきたいと思います。
トビタテ!留学JAPAN(以下トビタテ)とは、文部科学省による留学促進キャンペーンです。グローバル人財育成を目的とした官民共同の奨学金制度で、高校生コースと大学生コースがあります。ユニークなところは、トビタテに用意された留学プランに参加するのではなく、個人が自ら計画を立てるところ。選考に通過すれば資金援助が受けられます。
私は自分でボランティアプログラムを探し、Projects abroad という会社を見つけ、そこのプログラムに参加することにしました。また、事前研修や事後研修も充実しており、トビタテを通じて多くの仲間ができます。
文化祭での講演より
高校生が見たガーナ
私は、 もともと国際関係や海外ボランティアに興味がありました。中4の時、学校でトビタテ高校1期生(高校生コースは大学生コースより遅れて始まった)の募集のプリントが配られ、その中に「国際ボランティア部門」という文字を見つけて反応しちゃいました。ガーナを選んだ理由なのですが、これまた中4の秋に、南アフリカ大使館およびハイチ共和国大使館主催のプログラムで、在日ブルキナファソ大使館を訪問したことがきっかけです。その時から西アフリカに興味があったので、ボランティア先は西アフリカから選ぼうと決めました。
Projects abroadは様々なボランティア先を用意しているのですが、そこから西アフリカのガーナに決めました。目的は大きく三つありました。
1、途上国を自分の目で見ること。これが一番大きな目的。ブルキナファソ大使館にお邪魔した際のことなのですが、職員の方の話す現状と、自分が知っている途上国にはギャップがありました。それ以来、自分の目で現地を見ることが目標でした。
2、英語力アップ。オーストラリアでは、YESとOKくらいで二週間乗り切ってしまったので・・・今の自分の力を試す意味でも、ガーナで英語を鍛えたかったんです(ガーナの公用語は英語)。
3、切磋琢磨できる仲間を作ること。トビタテには、世界で活躍することを夢見る多くの高校生が応募してきます。その人たちとつながりを作りたかった。また、参加したボランティアプログラムは高校生スペシャルといい、世界から高校生が集まってきます。その人たちといろんな話がしたかった。
文化祭での講演より
高校生が見たガーナ
プログラム概要 PROJECTS ABROADという、イギリスに本社を置く会社のプログラムを利用しました。 多くのボランティアプログラムを用意しており、日本でのサポート、現地でのサポートともにとてもよかったです。気になった方は調べてみてください。
ガーナ ケア&コミュニティ 日程:2015年7月26日~8月8日(ちなみにバスケ部の合宿が終わってその日の夜に羽田に向かうという強行スケジュールでした・・・)
滞在先、活動先:アクアペムヒルズ 前のスライドを見た方は、 「アクアペムヒルズってどこ!?」と思ったでしょう… ガーナについて軽く紹介します。
人口:約2300万人 首都:アクラ 宗教:国民の約半数がキリスト教徒 通貨:セディ(だいたい3.5セディが1ドルくらい)
公用語:英語(しかし現地人同士は基本的に現地の言葉で話していた。 ガーナには250以上の言語があるそうで…)
気候:熱帯の国…と聞いていたんですが日本の猛暑の何倍も快適でした。乾燥していたし、地域的に涼しい場所だったようです。 私が活動したアクアペムヒルズは、イースタンリジョンの南のほうにある、首都アクラから車で40分ほどの場所です。
文化祭での講演より
高校生が見たガーナ
渡航までの準備
1月:トビタテへの応募を決める。
2月:projects abroadに連絡を取りながら応募書類を完成させる。(選考を通ったらプログラムに申し込む旨を伝えた)担任の畑先生の紹介で、ベネッセの留学部門の個別相談にも参加した。
5月下旬:選考を通過したという連絡!
6月上旬:プログラムに申し込み。文科省でのトビタテ生壮行会&事前研修
6月下旬:トビタテ登録書類作成、黄熱病予防接種(ガーナへの渡航に必須)、PROJECTS ABROAD横浜オフィスで個別相談
7月上旬:ビザ取得、航空券取得、買い物など
こんな流れで進めていきました。必須予防接種は黄熱病だけでしたが、もっと長期に滞在する方などは、狂犬病などの予防接種をしたり、マラリアの内服薬を使ったりしていました。
特殊な買い物については、マラリア予防の蚊帳と寝袋を買いました。(実際行ってみると寝袋はなくて平気だったし蚊帳はサイズが合わなくて向こうで借りた・・・現地調達も可能だった)あと7月は、ガーナの準備と合宿の準備と委員会の仕事と部活の仕事が重なり本当に忙しかったです・・・
文化祭での講演より
高校生が見たガーナ
現地で行ったこと
行ったボランティアは、デイケアでの活動と、学校の修繕のためのペインティング。一週目は、午前にデイケア午後にペインティング。二週目はそれを逆にして行いました。また、夕方にはガーナの料理を見せてもらったり、ダンスやドラムを習ったり、クイズをする日があったり、日によってお楽しみが用意されていました。
また、一週間目の木曜は植物園、二週間目の木曜はビーズマーケットを訪れました。週末は、ケープコーストという地域に一泊旅行をし、奴隷貿易に使われたお城や、ナショナルパーク、ビーチなどを訪れました。
ボランティア活動① デイケアセンター
デイケアセンターは、日本の幼稚園のような場所でした。
やったことは、朝子供たちを着替えさせたり、円になって一緒に遊んだり、色や数字を教えたり、洗い物をしたり、様々。子供たちはとても人懐っこく、「アンティ!(お姉さんとかそういう意味)」と叫びながら周りに集まってきて、抱っこをせがんできます。
大変だったのは、子供たちはまだ英語をうまく話せないので、コミュニケーションをうまく取れなかったこと。あとは、ものが足りていないこともあり、いつも子供が何かを取り合っていること。狭い教室のあちこちで子供が色鉛筆を取り合い、順番を無視して私に絵を描くようせがんできて、なんというか動物園状態。子供はかわいかったのですが、かなり疲れました。大嫌いだった洗い物。一つのバケツで洗い、一つのバケツですすぎ続けるから、どんどん水が濁って行って、手もかゆくなってくる…全然きれいにならないよ!と思っていた。
デイケアで書道に挑戦
トビタテ生として何か日本の文化を伝えたかった私は、定番ではありますが折り紙と書道を披露することにしました。書道では、名前を聞いて、その場で漢字を考えて書きました! アドムデイケアセンターだったのでプレゼント。
文化祭での講演より
高校生が見たガーナ
ボランティア活動② ペインティング
ペインティングは、ある小学校をひたすらペイントして修繕するというもの。小学校といっても、その一部だそうで、教室の集まりという感じでした。私が行ったのは夏休み期間だったのですが、きれいに塗りなおしてあげることで休み明けの子供たちが喜ぶし勉強も頑張れるのだそう。最初は楽しいんですが、やっぱり肉体労働だから疲れるし、細かいところを塗るときはみんなイライラしてました(笑)2週間やると飽きるし・・・
でも終わった時の達成感はすごく大きかったです!
苦労した点/日本との違い
ここまで色々と、楽しかったことや活動の成果をお話してきましたが、ここからはガーナのどんなところが日本と違って大変か、また、活動の中で何に苦労したかを話したいと思います。
あげるとしたら三つ。
①水問題
②電気問題
③言語&孤独問題
①水問題 ガーナでは、水道やシャワーの出る家は珍しく、出たとしても飲むことはできません。
ペインティングで手が汚れたときは、学校なのに水道がないため、ひたすらウエットティッシュでふきました。
飲み水は、パック詰めされたものや、ペットボトルの水を飲みます。歯磨きにもこの水を使いました。シャワーや手洗い、トイレに使うのは、外部で買ってきた水。庭の大きなタンクにためておいて、そこから大きなバケツに移し、各部屋に置いて使います。
まずは
動画を見てください。
私が2週間過ごした部屋です。部屋の隅に大きなバケツがあることがわかりますね。
この中にはたくさん水が入っていて、これをトイレのタンクに入れて流したり、小さなバケツに移し替えてシャワーに使います。水関係で一番苦労したのはシャワーです。小さなバケツに入れてシャワースペースに持ち込むので、その量で全身洗い切らなくてはいけないのです。そして私の家はラッキーなことに、シャワー用に熱湯をもらえたので、水と混ぜてお湯を手に入れられたのですが、ガーナではふつう水で全身洗うそうです。初日だけ水のシャワーを体験したのですが、寒くて死ぬかと思いました。
水道やトイレやシャワーなどについて、ガーナは全体的に水事情が悪いのですが、それはなんとホテルでもいえることなのです・・・ケープコーストに一泊した際、シャワーが浴びられることを期待してホテルに向かったのですが、案内された部屋はシャワーが壊れていて水が出ませんでした。代わりに案内された部屋では、水は出たのですが、なぜかシャワーヘッドが取れていてちょろちょろ水が出るだけ・・・ホースを持ち上げると水が出なくなるので、何となく汚いバスタブの中でしゃがみ、日本のお風呂を思い出しながらちぢこまってシャワーをしました。温かく量が多い分バケツシャワーのほうがましだと思ったのでした。
あとはトイレについても。家ではタンクに水をためるのが面倒なので、トイレはなるべく他の建物で行くようにしていたのですが、そのホテルは流す部分が壊れていました・・・日本じゃありえませんね。
文化祭での講演より
高校生が見たガーナ
②電気問題 私がホームステイ先について最初に思ったこと。
「家暗っ!!」
自分の部屋には壁の上部に小さなライトがついているだけで、昼はまだいいものの、夜は電気をつけてもこの暗さでした。
他の部屋もやっぱり暗い。そういうわけで、夜蚊に刺されてマラリアになるのも怖いし、必然的に早寝になるのでした。
また、ガーナは昨年頃から電力危機だそうで、停電もしばしばありました。部屋が暗くなるだけではなくて、充電などもできなくなるので、できるときにしとかなきゃ…となかなか不便でした。電気について気になった私は、現地の人に話を聞いてみました。すると
わかったのが「ガーナの発電はほぼ水力に頼っている」ということ。
そこで私は驚きました。豊富な石油は7割輸出、太陽エネルギーは使わない。そして水道も整ってないのに、水力発電…他の発電方法活用したほうがいいのではないか……と。
雨水は農業とかに使ったほうがいいんじゃないのかな…向こうの食事は野菜がほとんど出ずに、三食炭水化物ばかり食べた。野菜が高いそうで、もっと深刻な農村部では栄養失調につながるそう。色々と疑問でした。
③言語&孤独問題 情けないことに、向こうで本当につらかったのは言葉が通じないことでした。
まず、私のグループ(同じ家で暮らす)の人数は、たったの6人で、それもみんなイギリスやアイルランドから来た子たちでした。(アイルランド3人はクラスメイト)
私がサイトで見ていた「いろんな国から男女さまざま10人以上集まって、ノンネイティブも数人はいて、わいわい楽しくやる」という感じとはかけ離れていたのです・・・
周りでティーンエイジャー5人がブリティッシュイングリッシュでものすごいスピードで会話を交わし、頼りのスタッフは現地語でお互い話してる。誰が言っていることも理解できずに、ずっと孤独を感じて、1週間目はずっと泣いていました。辛かった・・・!
得られたもの 辛いこともいろいろあったけど、最終的にはみんなと仲良くなれて、泣きながらお別れするくらいになりました。味方のいない状況から、辛抱強くやり抜く強さは得られた気がします。やはり何より、高校生のうちに途上国を見てくるなんて、すごく貴重な体験だったと思います。今この経験をしたから、進路選択にも役立つし、将来やりたいことにも影響してくるでしょう!
考えたこと とにかく、行って自分の目で見てみないと分からないんですね。
行く前に、ガーナは成長が目覚ましいと聞いていたけど、やはりまだまだいろいろなことを改善していく必要のある国でした。逆に、力を入れるべきだと思っていた教育については、もうほとんどの子供が学校に行けているという状況でした。ネットや本の情報だけじゃだめですね。この二週間で、日本の車を見かけたり、ネットカフェでマリオをする子供がいたり、ガーナにいて日本の影響をしばしば感じました。日本からやってきたものとして、それらに恥じないように、またそれを説明できるように、もっと日本のことを知りたいと思いました。
最後に この2週間は、多くの方の協力のお蔭で実現することができました。
トビタテに携わっている皆様、申請に際して協力してくださった先生方、応援してくれた友達、そしてずっと支えてくれた家族に、心から感謝いたします。ありがとうございました。
加えて、今回トビタテ生としてガーナに行くことができたことを誇りに思い、これから還元する活動もしっかり努めていきたいと思います。
上記の記事は2015年11月にMY様(取材当時高校2年生)に取材しました。