第5部

6.宇宙ひもD

ゴット1947年- アメリカ合衆国の理論宇宙物理学者。プリンストン大学教授。ケンタッキー州出身。 の提案は、「2本の宇宙ひもが反対方向に運動しながら接近する場合があれば、その周囲をロケットで回ることで、ひもとともに動かされる星のもとへ同時刻に戻ってこられる」ということです。
宇宙ひもの周りの角度欠損を利用することで、ロケットがひもの運動の影響を100%受けることから逃れています。

この提案の優れている点は、ロケットは光速以下のスピードでよいし、正のエネルギーの物質だけを仮定しているので、通常の物理法則の範囲内の話になっていることです。
同時刻に戻ってこられる旅ではあるが、立派に「過去に戻る旅」といえます。
閉じた時間世界線(CTC)が存在するのです。

ゴッドがこのアイデアを出した後、カトラーは、2つの宇宙ひもの近くのどこまでがCTCを許すのかという領域も明らかにしています。
それによると、あまり宇宙ひもに近づきすぎるとタイムトラベルは不可能だが、ある程度の限られた時間ならば十分に可能だ、ということです。

しかし、ゴットのアイデアは、まだ発見されていない宇宙ひもを利用しているところが苦しいところです。
しかも「2本の無限に長い平行な宇宙ひもが光速で運動している」状況が必要でもあるます。
宇宙ひもを人工的に作ったり、制御したりすることは、現在の人類では不可能です。
無限に長い宇宙ひもが交差するような瞬間があるかどうかは、宇宙初期の偶然性に頼る他にないし、どうやって見つけるのか、どうやってその近くを飛行すればよいのか、現実性を考えると、難題は多いものです。



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