実験で楽しくなる力学教室
Chapter 1
力学を学ぶ前に
「力」って何?
力の表し方
力の合成・分解
力の成分
アイザック・ニュートン
重さと質量(1)
重さと質量(2)
重さと質量(3)
単位系の話
慣性の法則
作用反作用の法則
Chapter 2
Chapter 3
1-7. 重さと質量(1)
おっと、運動の3法則を学ぶ前に、ひとつ大事な説明が必要だった。
これから『
質量
』という言葉がよく出てくるんだ。これはちゃんと知っておかなくてはならないよ。
質量?
物体には「長さ」や「表面積」、他には「体積」なんていうそれ自身がはじめから持っている『量』があるね。
見たり触れたりしただけではわからないけれど、質量と言うのはその一つなんだ。
具体的にはどういう意味です?
これはまったく別の、2つの意味を持っている言葉なんだ。
?
まず一つに『
重さの元
』。
質量という言葉を聞いたことがある人の中には、『元? 質量って重さのことじゃないの?』と言う人もいるかもしれないね。
そういうわたしもそうです……。でも先生、普通そう考えると思います。
普段よく"重さ○○kg"という言い方をするよね。または"総重量○○kg"とか……。
けれど、物理の世界では決してこういった言い方はしないので、注意が必要なんだ。
でも先生、質量と重さって何が違うんですか?
重さ
という言葉は正確に言うと、
"物体が受ける重力の大きさ"
のこと。これはいいかい?
地上の物体は地球に引っ張られているよね。
はい。
その"引っ張られる力"を「重力」と言うけれど、その大きさを重さというんだ。
つまり"重さ=重力"ということだ。
ええと、
重さというのは"力"の種類の一つ
……そう解釈すればいいんですね?
そっかぁ。でもそれって、力学の決まりなんですか?
そうだね。力学で"重さ"という言葉が出てきたらこういう意味だと思ってね。
さて、ということは重さは"引っ張られる力"なんだ。力の単位はニュートン[N]だったよね。
ええ。
聞きなれないかもしれないけれど
"重さ○○N"
というのが正しい言い方なんだ。
重さは力だけど、他の力と区別して量記号を使って表す時はW[N]とおかれることが多いかな。
じゃあ、体重とかを量るときも、kgじゃなくて、本当はNって言わなきゃならないんだ……。
そこでだ。ここが大切なんだけれど、"重さ○○kg"と言われるときの"重さ"の意味は、"物体が受ける重力の大きさ"のことではないんだ。
なぜなら
[kg]は力の大きさを表す単位じゃない
からね。
違うんですか?
力学を学ぶ中では"重さ○○kg"というような表現は間違いということになる。
ではそうすると、"重さ○○kg"と言われるときの"重さ"の意味は何だろう?[kg]って、何の単位なんだろう……?
えーと……。
……わかんないです。
実はこれが『
質量
』なんだ。量記号を使って表す時は、M[kg]かm[kg]というように使われる。
だから、『質量M[kg]の物体があります』なんていうのが、物理での正しい言い方なんだよ。
質量
重さ
じゃあ、"質量"と"重さ"って、一般的に使うときと、力学で使うときで、意味を分けなきゃいけないんですね。
そうだね、気をつけよう。それでは、その質量がなぜ"重さのもと"なのか説明しよう。