1-7. 重さと質量(1)
先生 おっと、運動の3法則を学ぶ前に、ひとつ大事な説明が必要だった。
先生 これから『質量』という言葉がよく出てくるんだ。これはちゃんと知っておかなくてはならないよ。
柚莉亜 質量?
先生 物体には「長さ」や「表面積」、他には「体積」なんていうそれ自身がはじめから持っている『量』があるね。
見たり触れたりしただけではわからないけれど、質量と言うのはその一つなんだ。
一弥 具体的にはどういう意味です?
先生 これはまったく別の、2つの意味を持っている言葉なんだ。
柚莉亜
先生 まず一つに『重さの元』。
先生 質量という言葉を聞いたことがある人の中には、『元? 質量って重さのことじゃないの?』と言う人もいるかもしれないね。
柚莉亜 そういうわたしもそうです……。でも先生、普通そう考えると思います。
先生 普段よく"重さ○○kg"という言い方をするよね。または"総重量○○kg"とか……。
けれど、物理の世界では決してこういった言い方はしないので、注意が必要なんだ。
柚莉亜 でも先生、質量と重さって何が違うんですか?
先生 重さという言葉は正確に言うと、"物体が受ける重力の大きさ"のこと。これはいいかい?
先生 地上の物体は地球に引っ張られているよね。
柚莉亜 はい。
先生 その"引っ張られる力"を「重力」と言うけれど、その大きさを重さというんだ。
先生 つまり"重さ=重力"ということだ。
一弥 ええと、重さというのは"力"の種類の一つ……そう解釈すればいいんですね?
柚莉亜 そっかぁ。でもそれって、力学の決まりなんですか?
先生 そうだね。力学で"重さ"という言葉が出てきたらこういう意味だと思ってね。
先生 さて、ということは重さは"引っ張られる力"なんだ。力の単位はニュートン[N]だったよね。
一弥 ええ。
先生 聞きなれないかもしれないけれど"重さ○○N"というのが正しい言い方なんだ。
重さは力だけど、他の力と区別して量記号を使って表す時はW[N]とおかれることが多いかな。
柚莉亜 じゃあ、体重とかを量るときも、kgじゃなくて、本当はNって言わなきゃならないんだ……。
先生 そこでだ。ここが大切なんだけれど、"重さ○○kg"と言われるときの"重さ"の意味は、"物体が受ける重力の大きさ"のことではないんだ。
なぜなら[kg]は力の大きさを表す単位じゃないからね。
柚莉亜 違うんですか?
先生 力学を学ぶ中では"重さ○○kg"というような表現は間違いということになる。
ではそうすると、"重さ○○kg"と言われるときの"重さ"の意味は何だろう?[kg]って、何の単位なんだろう……?
一弥 えーと……。
柚莉亜 ……わかんないです。
先生 実はこれが『質量』なんだ。量記号を使って表す時は、M[kg]かm[kg]というように使われる。
だから、『質量M[kg]の物体があります』なんていうのが、物理での正しい言い方なんだよ。
柚莉亜 じゃあ、"質量"と"重さ"って、一般的に使うときと、力学で使うときで、意味を分けなきゃいけないんですね。
先生 そうだね、気をつけよう。それでは、その質量がなぜ"重さのもと"なのか説明しよう。

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