1-9. 重さと質量(3)
先生 もう一つの質量のもつ意味は"動き出しにくさのもと"
柚莉亜 動き出しにくさ?
先生 うん。家具でも何でも、重たいものは動かしにくい。
でも、これの大きな原因は床との摩擦力の違いだ。
では、摩擦が無い時はどうだろう?
吊るしたおもりが3つある。それぞれ砂を入れてあるんだけれど、これを力学台車を使って同じ力で押してみよう!
先生 同じ大きさの力を受けているはずなのに、手前のほうから順にあまり振れなかった。
摩擦がないということは、かかっている重力の大きさ、つまり重さの違いが原因ではないようだね。
柚莉亜 でも何で?
先生 重力が大きくなると、落ちないように、その分上にもたくさん引っ張っていることになるけれども、
この時、重力や、ひもで上に引っ張る力は横に動くのを邪魔しているのかな?
柚莉亜 あ、そっか。このときは横は関係ないんだ……。
先生 実はスペースシャトルの中の無重力状態、つまり重さがすべてゼロでも、これらのものには動き出し方に違いが出てくる。
先生 この"動き出しにくい"という性質慣性というんだ。上の写真で言うと、緑が一番慣性が大きくて、黄色が小さい、ということになるよ。
一弥 それでは、その動き出しにくさの原因はペットボトルの中のもの、ですか?
先生 周りは関係なさそうだから、そうなるよね。
先生 そこで、少し考えた。
慣性という性質の大きさは、重力の差が原因ではない。体積によるわけでもない。
とすると、それらとはまた別の、物体がはじめから持っている"何か"という量によって決まるのではないか』
というようにね。
柚莉亜 その"何か"が質量なの?
先生 さて、本当かな?
柚莉亜 違うんですか?
先生 さっき決めた、"重さや引力のもと"である質量と、同じだと言っていいのかな?
柚莉亜 ダメなんですか?
先生 そこで、実際に比べてみたんだ。
先生 さっきやった"質量"と、今の"何か"
『どっちかの性質だけ偏って大きい物質ってあるんだろうかな?』とね。
つまり、物体AとBを比べて、
『AはBより重い。つまり、受けている重力が大きいが、同じ力を与えてみたらBがAより動き出しにくい』
ということはありえないのだろうか?

さて、君たちはどう思う?
一弥 普通に考えたら、そんなことはありえません……よ?
柚莉亜 おかしいよね?
先生 うん。でも科学者達はいろいろと疑ってみたんだ。
なんとなく同じのような気がしても、確かめないでいて、もし違っていたら大変だしね。
柚莉亜 でも、普通は疑ったりはしないと思うけどな……。
先生 そうかもしれない。でも、ちょっとしたことに"疑問を持つ"というのが科学のはじまりなんだよ。
柚莉亜 はぁい。
先生 ともかく、細かい実験をして確かめてみたところ、結局どうもそういった物体はないらしい、ということがわかったんだ。
そこで結果として、この慣性を発生させる"何か"は、万有引力を発生させる"質量"と同じものだと言えることになった。
さっきの実験でつかったおもりを見てみようか。
先生 写真の通り、質量と慣性には質量が2倍、3倍になると、慣性が2倍、3倍になる、という比例の関係がある。
慣性が2倍、3倍になるということは、動き出し方が1/2、1/3になったということだよね。
つまり質量と動き出し方には反比例の関係があるんだ。
柚莉亜 動き出しにくさが増えるということは……逆に言うと動き出し方が減るってことになるね。
先生 そのとおり。
先生 さて、さっきの万有引力の話で、
『物体が地球を引っ張っているなんて信じられない、と言うかもしれないけれど、そのカラクリは次に説明する』
と言ったけれど、これで分かったね?
柚莉亜 うん。
先生 二つの物体は同じ力で引き合っているんだ。地球と地上の物体も同じ。
つまり物体の"重さ"という地球の中心向きの引力の分だけ、地球も物体側に引かれている。
でも二つの質量が比べ物にならないくらい違うから、慣性(動き出しにくさ)の小さい物体はすぐ地球方面に落ちだしても、 慣性がものすごく大きな地球は、自分に向かって全く上がってこないんだ。
柚莉亜 そっかぁ。
先生 もし月くらい質量の大きなものが落ちてきたとしたら、引力も半端じゃないから地球も月に向かって動き出すだろうね。
月が何故落ちてこないかと言うのは興味深いけどまた別の話ということで……。
柚莉亜 一弥くん。確か、月がおっこちてくるゲームがあったよね?
一弥 えーと、話には聞いたことがありますが……。
まとめ

・質量は物体がはじめから持っている動き出しにくさのもと

・動き出しにくいという性質のことを慣性という

・どんな場所でも質量と慣性は比例の関係にある
 質量と動き出し方は反比例の関係にある

次へ進む

ページの先頭へ