1-8. 重さと質量(2)
先生 重さは"重力の大きさ"のこと、と言ったね。
先生 重力とは何か、詳しくは後で説明するけど、知りたい人は用語集を見てね。
ここでは『重力=地球の引力』だと思ってくれればいいよ。
柚莉亜 はい。
先生 それでは引力って何だとおもう?
一弥 そのまま、"引っ張る力"ではないのですか?
先生 引力は『万有引力』とも言われる。さっき説明したニュートンが発見したんだったね。
一弥 ええ。
先生 つまり、"全てのものが"、"持っている"、"引っ張りあう"、"力"のこと。
柚莉亜 全てのものってことは……もちろん、わたしも引力を持ってるんだよね。
一弥 すると、僕もです。
先生 そのとおり、実はそうなんだ。下の図を見て欲しい。
例えば、これらのボールもそれぞれ引力を持ってるよ。 だから"物体が地球に"引っ張られていると言ったけれども、"引っ張り合う"というほうが正しいといえるだろうね。
柚莉亜 でも、わたしたち自身が地球を引っ張っているようには思えないよね。
先生 『人や普通の物体が地球を引っ張っているなんて信じられない!』と言う人もいるかもしれないけれど、そのカラクリは次の時間「1-9重さと質量(3)」の中で説明するとしよう。
先生 先ほどのニュートンは、
『この物体同士が引っ張りあう力の大きさは、
・二つの物体の重心の間の距離と、
・それぞれの物体がはじめから持っている"何か"の大きさ
によって決まる』ということを発見した。
たとえば、上の図のようになっていた場合、距離が離れていても紫の方が、緑よりも大きな引力が働くのは何が原因だろう?
物体は、何かこの原因を持っているのだろう、ということだね。
柚莉亜 じゃあ、その"何か"っていうのが重さなんですね?
先生 残念ながら、それはちがうね。
この前の授業で、地球と物体が"引っ張り合う力の大きさ"のほうが重さだといったよね。
すると、『引力(=重さ)は距離と"重さ"で決まる』となってしまってなんか変だ。
『おいしさは塩加減とおいしさで決まる』ではなく『おいしさは塩加減と焼き加減で決まる』というふうにしないと……。
先生 さてその発見、式にすれば難しそうだけれども…… 引力=-G*(物体Aの「?」)*(物体Bの「?」)/(A-B間の距離)^2 ってなってる。
柚莉亜 先生、Gって何?
一弥 重力の略でしょうか?
先生 いや、このGというのは、『万有引力定数』なんて呼ばれている、実験で確かめられた数のことを表している文字なんだ。
その値は、なんと"一千億分の6.67……"となっていて、とても小さい。
柚莉亜 実験で確かめられた数? どういうこと?
先生 式の左辺と右辺をつなぐための"調整役"といったところかな。
しいて例えると、1[尺]=30.3×1[cm]ってときの30.3みたいなもの。
実験は1798年にキャヴェンデッシュという人が大きな鉛の球を使って行ったんだけれどね。興味があったら調べてみてね。
先生 さて、ここで式の中を見てみよう。両方の"何か"が大きければ大きいほど、引き合う力は強くなるんだ。
先生 逆に、お互いそれが小さければ、引き合う力は無視してもいいほど小さくなってしまう。
先生 つまり、この"何か""引力のもと"というわけ。
柚莉亜 引力のもと……。
先生 そして、その"何か"『質量』と名づけたんだ。ここでの"何か"に当てはまるのが質量の一つ目の意味ということだよ。
一弥 ということは、質量があって初めて引力が生まれるというわけですか……。
先生 そういうこと。だから、さっきの式は、 引力=-G*(物体Aの質量)*(物体Bの質量)/(A-B間の距離)^2と表されるんだ。
先生 また、この関係から、『2つの物体を比べたとき、また別の物体と引き合う力が強くなる物体の方が質量が大きい』と言えるね。
先生 例えば、地球とパソコンを君に対して比べたとき、"地球と君"は体重の分だけ強く引き合っているわけだ。 けれど、"パソコンと君"はほとんど引き合っていないね。 だから地球はとても質量が大きいし、パソコンはそれにくらべてとても質量が小さいと言えるんだ。
先生 質量は"引力のもと"、そして重力、つまりは地球と物体との間の引力の大きさのことを重さと言うんだったね。
柚莉亜 はい。
先生 ということで"質量は重さのもと"ということが出来るんだよ。
先生 ちなみにさっきの式を変形してみよう!
重さ={-G*(地球の質量)/(地上の物体と地球の中心間の距離)^2}*(物体の質量)
先生 "地上の物体と地球の中心間の距離"は、自分たちが物体を投げたり落としたりしたくらいの変化のうちでは、ほとんど地球の半径と一緒とみていいだろう。だからかっこ内は一定とみて構わないんだ。
柚莉亜 地上から建物の二階の高さと、地上と地球の中心の距離だと、地上と地球の中心の距離のほうが何千倍も長いからね。
先生 二階までせいぜい3m。でも地球の中心までは6400kmもあるからねぇ……。
先生 だから、かっこ内に数を当てはめて計算すると大体9.8くらい。
重さをW[N]、と物体の質量をm[kg]と置いてあげると、2つは「W=9.8m」で表される比例の関係だと言えるね。
一弥 なるほど……
質量1kgの物体の重さは9.8N、となるわけですね。
先生 そう。比例ということは、質量が二倍になれば重さも二倍、逆に質量が半分になれば重さも半分になる。 つまり"質量が大きいほど重い"んだ。
先生 だから地球上では重さ(重力の大きさ)を量って質量を求めることが出来る。 例えば、これがそうなんだけれど……
台ばかり
先生 単位を見てみよう。
台ばかりの目盛り
柚莉亜 [kg]になってる……
先生 このはかりも実験用のバネばかりと同じ仕組みなんだけれど、この2つの目盛りの関係はさっきの式の通りになっているんだ。
一弥 そういうことですか……。
先生 これで重さと質量の関係わかってくれたかな?
重さと質量はとても密接に関わりあっているから混同されがちだけど、
重さ』は力の大きさだから、物体がはじめから持っているものではなく、地球があってはじめて発生するものだし、
質量』は物体が始めから持っている"重さのもと"のこと。
これから先は力学をやっていく中ではしっかり分けて考えよう!
一弥 はい。
先生 ちなみに、月に行くと物体の重さは地球上での1/6になってしまう。
これは物体の質量は変わらないけれど、 {-G*(月の質量)/(月面の物体と月の中心間の距離)^2}*(物体の質量) この、月での重さの式が、 {-G*(地球の質量)/(月面の物体と地球の中心間の距離)^2}*(物体の質量) この、地球での重さの式の約1/6になるからなんだ。
重さ(重力の大きさ)というのは同じ物体でも変化するんだね。
まとめ

・質量とは万有引力の法則に従って引力を発生させる引力のもとのこと

・質量は物体がはじめから持っている量でm[kg]と表す重さは、質量によって発生する地球との引力の大きさW[N]

・地球上では重さは質量に比例し、おおざっぱにW=9.8×m(質量)と置ける

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