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解決に向けて
①リサイクルを進める
・リサイクルに向けた技術開発
3つのリサイクル手法のうち、3割近くを占めるマテリアルリサイクルについて見てみます。2017年にマテリアルリサイクルされた211万tのうち、一般系廃プラスチックから再生利用されたものが67万tであったのに対し、産業系廃プラスチックから再生利用されたものは144万tでした。(プラスチック循環利用協会プラスチックリサイクルの基礎知識より)ここでの「一般系」は家庭から出る廃プラスチックを、「産業系」はプラスチックの製造や加工の過程で排出された廃プラスチックを指しています。産業系廃プラスチックが多く利用されるのは、樹脂の種類がはっきりしているうえ量も比較的安定していて、マテリアルリサイクルに適しているためです。一方、家庭から出る廃プラスチックは様々な樹脂が混ざっているため、効率良くリサイクルすることが難しくなります。そこで、プラスチックを樹脂の種類別に分類する高度な技術、リサイクルしやすいプラスチックの開発が求められてきます。また、技術開発に限らず、プラスチックの素材に合わせてリサイクル方法を考えることも大切になってきます。
・海外へのリサイクル技術の輸出
「解決への調査」の『海に流れるプロセス』で触れた通り、アジアやアフリカの発展途上国では、プラスチックの急激な普及に対し、プラスチックを処理するシステムが追いつかず、結果としてたくさんのプラスチックが海へ流出してしまうという現状があります。そこで、日本を含む先進国ができることとして、ごみの処理システムが十分に整っていない発展途上国に先進国の処理システムを輸出することが挙げられます。先進国から発展途上国に技術者を派遣したり、逆に発展途上国の行政機関関係者を先進国に招くなどして処理システムの技術輸出を進めることで、ごみ処理を経由せずに直接海へと流れ出るプラスチックの量を減らすとこができるのです。しかし、プラスチックの処理が整わない原因はリサイクルの技術不足だけではありません。ごみを決まった場所に捨てる習慣がないことなども、処理を進める妨げとなっています。そのため、環境問題についての教育や制度づくりなど、発展途上国の生活に寄り添ったかたちで改善していくことが大切です。
・環境に優しいリサイクル
リサイクルで代表的なペットボトルは、主に制服やワイシャツといった繊維製品の原料や、卵パックの材料などに再利用されています。仮に、リサイクルされなければただ焼却処理したのちに埋立処分されるとした場合、再生品にリサイクルすることによる二酸化炭素の削減効果は、ペットボトル1kgあたり2kg程度と推定されています。現在消費されている年間50万tのペットボトルを全てリサイクルした場合、二酸化炭素の削減効果は100万t程度で、これは日本の全二酸化炭素排出量の約0.1%に相当します。割合としてはわずかですが、リサイクルにより、二酸化炭素排出量を抑えることができるのです。使う量が同じであれば温暖化対策にもなるリサイクルですが、それで安心してしまい、大量に使うのでは意味がありません。リサイクルを通して、ライフスタイルを見直し、行動に移していくことこそが大切なのです。
〜サーマルリサイクルは意味のないリサイクルなのか〜
「海洋ゴミの原因・理由」の『リサイクルについて』で触れた通り、サーマルリサイクルはただ燃やしているだけでリサイクルではない、という考えもあります。ではサーマルリサイクルは本当に意味のないリサイクルなのでしょうか。
サーマルリサイクルは、リサイクルされずに埋め立てられていた廃プラスチックを、焼却した際に生じる熱エネルギーを回収して新たな燃料として活用するものです。廃プラスチックには様々な種類のプラスチックが含まれていて、中でもポリエチレンやポリプロピレン、ポリスチレンなどは高い発熱量を持っています。下の図1から、廃プラスチックには紙の約2.7倍の発熱量があり、石炭・石油などの燃料にも劣らないことがわかります。
発熱量に大きな差がないことから、発生し続ける廃プラスチックを利用したごみ焼却発電は、限りある化石燃料を使う火力発電よりも資源的にみると、地球に優しいと言えます。また、廃プラスチックと古紙を混ぜ合わせたRPFは、製紙会社等で石炭やコークスといった化石燃料の代替品として実際に需要が増加しています。これらのことから、サーマルリサイクルは廃プラスチックを新たな資源として活用する有効なリサイクル法だと考えられます。