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 保存食とは、数ヶ月から数年にわたって保存するため、腐敗しないように加工や処理がされた食品のことをいいます。そもそも保存食は、冬季や乾季に長期間食糧確保が難しい地方や、遠洋航海や戦争などの特殊事情に対応するために人々が工夫してきた生活の知恵といってもいいです。昔でも現代でも言えることは、腐敗菌をいかに繁殖させないようにするのかが、保存のポイントとなります。
 保存食は手作りで作られたのが始まりで、天然素材に自然界の様々な現象を利用して保存できるように工夫されていました。このような時代の保存食は保存方法に特化した調理法や料理があり、地域ごとに独自の食文化を築いてきました。
 その後、ビン詰めや缶詰の登場で保存食が飛躍的に進歩しました。そして、冷蔵庫が普及するようになり冷凍技術を利用した保存食が登場して、更に進歩を遂げました。その後も、レトルト食品や宇宙食まで幅広い分野で進化し続けているのが保存食ともいえます。
 食品が腐ったり痛んだりする原因は、細菌やカビ、酵母などの微生物が取り付いて増えることが要因です。しかし、全ての微生物が食品を腐敗させる原因というわけでありません。乳酸菌や酵母菌など、発酵を促進してくれるものもあります。人間に害のあるものが腐敗で有用なのが発酵と、腐敗も発酵も基本的には同じ原理なのです。
 日本では、昔から穀物や野菜、果物に魚介類が食べられてきました。ですので、これらの食材に関する保存食が生み出されてきました。
 穀物は成熟するにしたがって、水分が少なくなるので何の加工を施さなくても、常温で数年間保存することが可能です。味噌や醤油などの調味料が発達したのも、穀物と向き合ってきた民族ならではのことです。果物は収穫してそのまま食べる文化だったので、保存食として扱われていたのは干し柿くらいでした。野菜や魚介類は、各地でいろいろな保存食として残っています。日本のなかでも優れた保存方法は数多くありますが、中でも干して乾燥させ保存食にする方法は全国各地で発達しました。
 ヨーロッパなどで発達したのが、牧畜に関する保存食です。チーズなどの乳製品を保存する技術や、ベーコンや干し肉など肉類を保存する技術など、狩猟から牧畜へ変化するのに伴って、発展してきました。また、パンやビスケット、クッキーといった小麦粉を使った食品が伝統的に食べられており、パンにドライフルーツを焼きこんだり、ジャムを塗って食べるなど果物の加工技術も発達していきました。
 保存食を作るうえで必要な素材として香辛料があります。インドでは紀元前3000年頃から、黒胡椒やクローブなどインドを中心に多くの種類が使われていました。ヨーロッパの人々の多くは、古くから肉や魚を食べていましたが、内陸まで食材を運んだり、冬期に備えたりするために肉や魚を長期保存する必要性が高まってきました。そこで、昔の人は香辛料に含まれている高い殺菌力に目をつけました。香辛料には、臭みを消しておいしく感じさせたり食欲を増進させる効果があります。また、匂いの強い食品や腐敗臭を抑える効果があり、中には防腐や殺菌効果があるものもあり、食料を保存する際に使われていました。また香辛料の独特な香りにより病魔を退治すると信じられており、香として焚いている用途も多かったです。中でもコショウは金と同質量で取引されたり、一握りで奴隷10人雇えるという時代もあったほど貴重でした。
 現代の保存食は、天然素材に自然界の様々な現象を利用して保存するのではなく、技術力で保存できるようにしています。瓶詰めや缶詰、冷凍による保存方法の確立の後、保存技術は様々な進歩を遂げています。瞬間冷凍することで食品の旨みを逃すことなく長期間保存できるようになったり、あらかじめ作った料理を真空凍結処理を行ってフリーズドライ食品にして加工するなど、いろいろな食材をおいしく簡単に食べられるように、工夫がされています。