2-3. 磁力
先生 『離れていてもはたらく力』には他に磁力がある。
先生 同じ極同士なら反発しあうし、違う極同士なら引き合うよね。
一弥 S極とN極ですね。
先生 その性質を詳しく調べるのは、物理学の中の『電磁気学』という別の分野なんだけれど、 ここでは磁石を使った力学の実験を見てみよう。
QUESTION

次の装置は、糸の先に鉄片がついていて、その上に磁石が設置されているものだ。
この鉄片を持ち上げて、磁石に引っ張らせた状態で宙に浮かせたら、その装置全体の重さはどう変化するかな?

(1)持ち上げたときに減って、手を離して浮かせても減った状態のまま……

(2)持ち上げたときに減って、手を離して浮かせたらはじめより増える……

(3)持ち上げたときに減って、手を離して浮かせたらはじめと同じ……

(4)持ち上げても浮かせても一定のまま……

柚莉亜 (1)かなぁ?
磁石を浮かせるんだから、その分の重さはかからないよね?
一弥 僕は(4)だと思います。
装置全体の重さは変わらないのではないでしょうか・・・?
先生 では実験してみよう!
柚莉亜 あれれ、(3)だ……。
先生 では、なぜこういった結果になるかわかるかな?
(4)でない理由は、鉄片を持ち上げたときには鉄片の重さを手で支えているからだ。
(1)のようにならない理由はわかるかな? ポイントになるのは『作用と反作用』なんだ。
柚莉亜 磁力にも作用・反作用って働くの?
先生 磁石に鉄の棒を近づけていったらどうなるかな?
一弥 ……磁石に吸い寄せられて、鉄は磁石にくっつきます。
先生 このとき、鉄は磁石を引っ張っていないかな?
一弥 いえ、磁石が鉄を引っ張っているだけなのでは無いでしょうか?
先生 さて、ここで作用・反作用の法則を思い出してみよう。腕で荷物を持ち上げるとき、腕は荷物を引っ張っているよね。
一弥 ええ。
先生 では、荷物は腕を下向きに引っ張っていないかな?
柚莉亜 ……確かにそう感じるよね。
先生 実は、磁石にとっても同じこと。鉄が寄ってくると、磁石自身も引き寄せられていくんだよ。
作用と反作用は同じ大きさで逆の向き、だったね。
先生 ではそれらを図に書き込んでみよう。
このとき、青い色が直接装置にかかっている力、つまり、この合計がはかりに表示されるよ。
オレンジは、鉄片が受けている力を表している。
装置の重さは「W」、鉄片の重さは「w」
磁石が鉄を引く力「F」と、鉄が磁石を引く力「F」作用反作用の関係
糸で上に引っ張っている力「T」を張力と呼ぶんだ。後で詳しく登場するけれど……。
このとき糸は静止しているので、糸が受けている力は両端とも等しいはず。
その等しい両端の2力の反作用が、それぞれ図に描かれている張力「T」「T」、の2つだ。
ここで、鉄片は静止している。
したがって、「F」+「T」+「w」=0という式が成り立つね。式変形して、
-「F」-「T」=「w」だ。
また、作用・反作用の関係にある2力は、向きが逆で大きさが等しい。つまり、
「F」-「F」「T」-「T」
と表せる。
また、はかりに表示されるはずの合計の力はというと、「W」+「F」+「T」となるね。
「W」+「F」+「T」「W」-「F」-「T」「W」+「w」
と、こういった計算で、始めの「W」+「w」が求められるんだよ。
柚莉亜 うん、これなら解りやすい。

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