2-4. 垂直抗力
先生 接触していてはたらく力の代表として、垂直抗力があるんだ。
一弥 垂直抗力……ですか?
先生 例えばまず、トランポリンの上に人が立っている様子を考えてみよう。
トランポリン
先生 トランポリンは凹むと、元の平らな状態に戻ろうとする力が起こるよね。
柚莉亜 はい。
先生 人がトランポリンを押す力と、トランポリンが人を押す力作用反作用の関係にあるね。
そして人が止まっているということは、トランポリンが人を押す力は、人にかかる重力とつりあっている
柚莉亜 でも、トランポリンは凹んだ状態になってつりあってるよね。
人が乗っても、トランポリンが平らなままではつりあわないのは何でですか?
先生 トランポリンには力、つまりは人の体重がかかっているんだけれど、
はじめのほう(1-2. 「力」って何?)でやった『物体は力を受けると変形する』という性質がある、というの覚えているかな?
柚莉亜 えーと……。
先生 消しゴムを押してみるのを例に挙げたように、物体は力を受けると変形する。
粘土のように変形したままの形になってしまうこともあるけれど、元に戻ろうともする物体も多いよね。
一弥 その一つがトランポリンという訳ですね……。
先生 『変形したらもとに戻ろうとする』という性質を『弾性』というんだ。
トランポリンや消しゴム、ゴムボールなんかが分かりやすいね。
そして元に戻ろうとして引っ張ったり押したりする力のことを『弾性力』というんだ。
先生 つまりは、『粘土は弾性が小さい』ということだね。
逆に、『トランポリンは弾性が大きい』。だから、へこませた分だけ押し返してくるんだ。
先生 それでは、机に物体を置いた時はどうだろう?
物体には重力が働いているのに、物体は落ちていかない。重力とつりあっている力があるからだよね?
柚莉亜 机が物体を支えているんですね。
紐と本の力のつりあい/机と本の力のつりあい
先生 そのとおりなんだ。その机から物体に働く、机の面に垂直な力を垂直抗力と呼んでいる。
先生 机が物体を押すなんて信じられない、という人はさっきのトランポリンを思い出してほしい。
実は机も、他の物体も、小さな小さな粒子が引っ張り合って、一緒になることで形作られている。
物体の硬さはその粒子の結びつきの強さによるものなんだ。
外から力が加わると、その小さな粒子が引き合ってできている面は、ほんとに少しだけたわむはずだよね。
柚莉亜 粒子があまりにも小さすぎるから肉眼では見えない。だから凹んでいるように見えないんですね。
先生 そういうこと。イメージを図にするとこんな感じかな。
トランポリンの表面のイメージ
どんなに硬い、つまり粒子の結びつきの強い物体でも、表面をものすごく拡大してみると、
まるでトランポリンと同じかのように、押した部分はわずかに凹んでいて、その分、元の平らに戻ろうと逆に押し返しているんだよ。
先生 他にも……例えば、壁を手で押してみよう。この時、手が壁を押す反作用で、壁も手を垂直に押しているね。
だから手は止まったまま。このときも手が壁から受ける力を垂直抗力と呼ぶんだ。
一弥 壁を殴ったら痛いのはこのせいなのでしょうか?
先生 そうだね。
先生 垂直抗力の量記号はNを使うことが多いかな。N[N](エヌ[ニュートン])となるけど、怒らないでね。
そして物体が面に及ぼす力をFとすると、N=-Fが成り立つね。
先生 ということは、壁を殴ったときも、手は壁から殴った力の分だけ、反作用として力を受けるということだね。
柚莉亜 じゃあ、殴っただけ自分が痛むだけなんだぁ……。
先生 ……骨折した人、数名知ってるから気をつけてね。

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