実験で楽しくなる力学教室
Chapter 1
Chapter 2
さまざまな力
重力
磁力
垂直抗力
摩擦力(1)
摩擦力(2)
摩擦力(3)
空気や水の抵抗力
糸の張力
フックの法則
圧力と気圧(1)
圧力と気圧(2)
水圧と浮力(1)
水圧と浮力(2)
Chapter 3
2-4. 垂直抗力
垂直抗力
接触していてはたらく力の代表として、
垂直抗力
があるんだ。
垂直抗力……ですか?
例えばまず、トランポリンの上に人が立っている様子を考えてみよう。
トランポリンは
凹むと、元の平らな状態に戻ろうとする力が起こる
よね。
はい。
人がトランポリンを押す力
と、
トランポリンが人を押す力
は
作用反作用
の関係にあるね。
そして人が止まっているということは、
トランポリンが人を押す力は、人にかかる重力とつりあっている
。
でも、トランポリンは凹んだ状態になってつりあってるよね。
人が乗っても、トランポリンが平らなままではつりあわないのは何でですか?
トランポリンには力、つまりは人の体重がかかっているんだけれど、
はじめのほう(1-2. 「力」って何?)でやった『
物体は力を受けると変形する
』という性質がある、というの覚えているかな?
えーと……。
消しゴムを押してみるのを例に挙げたように、物体は力を受けると変形する。
粘土のように変形したままの形になってしまうこともあるけれど、元に戻ろうともする物体も多いよね。
その一つがトランポリンという訳ですね……。
『変形したらもとに戻ろうとする』という性質を『
弾性
』というんだ。
トランポリンや消しゴム、ゴムボールなんかが分かりやすいね。
そして元に戻ろうとして引っ張ったり押したりする力のことを『
弾性力
』というんだ。
つまりは、『
粘土は弾性が小さい
』ということだね。
逆に、『
トランポリンは弾性が大きい
』。だから、へこませた分だけ押し返してくるんだ。
それでは、机に物体を置いた時はどうだろう?
物体には重力が働いているのに、物体は落ちていかない。
重力とつりあっている力がある
からだよね?
机が物体を支えているんですね。
そのとおりなんだ。その
机から物体に働く
、机の面に垂直な力を
垂直抗力
と呼んでいる。
机が物体を押すなんて信じられない、という人はさっきのトランポリンを思い出してほしい。
実は机も、他の物体も、小さな小さな粒子が引っ張り合って、一緒になることで形作られている。
物体の硬さはその粒子の結びつきの強さによるものなんだ。
外から力が加わると、その小さな粒子が引き合ってできている面は、ほんとに少しだけたわむはずだよね。
粒子があまりにも小さすぎるから肉眼では見えない。だから凹んでいるように見えないんですね。
そういうこと。イメージを図にするとこんな感じかな。
どんなに硬い、つまり粒子の結びつきの強い物体でも、表面をものすごく拡大してみると、
まるでトランポリンと同じかのように、押した部分はわずかに凹んでいて、その分、元の平らに戻ろうと逆に押し返しているんだよ。
他にも……例えば、壁を手で押してみよう。この時、手が壁を押す反作用で、壁も手を垂直に押しているね。
だから手は止まったまま。このときも手が壁から受ける力を垂直抗力と呼ぶんだ。
壁を殴ったら痛いのはこのせいなのでしょうか?
そうだね。
垂直抗力の量記号はN
を使うことが多いかな。N[N](エヌ[ニュートン])となるけど、怒らないでね。
そして物体が面に及ぼす力をFとすると、
N=-F
が成り立つね。
ということは、壁を殴ったときも、手は壁から殴った力の分だけ、反作用として力を受けるということだね。
じゃあ、殴っただけ自分が痛むだけなんだぁ……。
……骨折した人、数名知ってるから気をつけてね。