操作的

 正しい情報や画像をだます目的で操作するもの。画像や数値などの情報自体は正しくとも情報の見せ方に悪質な工夫を加え、本来の情報から得られるものとは違う印象を閲覧側に持たせる為の操作をしている項目です。
 情報自体は正しいため完全なフェイクではないものの、閲覧者の印象を操作するという点で他の項目と共通しており、さらに、情報を提示する側の意見に沿った印象を抱かせるような操作をされる場合が大半なため、注意が必要です。

日本における事例

 情報を伝える場合における、「グラフ」の存在は非常に大きく重要です。数値が表に敷き詰められていてもその情報の概要を掴むことは難しいですが、情報をグラフに映し出し画像化するとそのグラフの伝えたい印象を閲覧者に簡単に伝えられる事は周知の事実です。 
しかし、グラフにより簡単に情報の概要を印象付ける事が可能ということは、誤ったグラフや印象を操作する為のグラフを使ってしまえば誤りであったり操作された印象を閲覧者に抱かせることさえ出来てしまいます。

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グラフ / "PIXADAY"から引用

< 一部を強調させるグラフを使うことで、見た人の印象を操作した事例 >

 2021年、新型コロナウイルス感染症が世界中で感染の手を広めている現状、様々な情報、そしてフェイクニュースが飛び交っています。多くの人が見る情報媒体であるテレビでは、多くの新型コロナウイルス感染症の関連ニュースの一つとして街頭アンケートなどを行っており、国民の意見として日々公開しています。それ自体は当然悪いことではなく、寧ろ一般の人々の生の意見を纏められている分有難いと思えることです。ところがその中に、このページで取り扱われてしまうような問題点を持つニュースが存在しました。
 冒頭で触れたように、グラフとは印象を伝えるための大事な手段です。テレビもその例にもれず、日々多くの番組で視聴者へ分かり易く情報を届けるためのグラフが活用されています。上に挙げた街頭アンケートのニュースでもグラフで結果をまとめていましたが、問題点はそのグラフにありました。それは「新型コロナに感染した人がいたら、本人のせいだと思う」というグラフでした。グラフを一目見た時の感想は、このグラフの作成者がこのグラフで伝えたかったことである、日本の「そう思う」の人数が他 国よりずっと多いこと。さらに極端なことを言えば、日本の「そう思う」の人数が「そう思わない」の数倍いるという様にも見えてしまうかもしれません。
< 実際の画像 >
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 当然、この意見は主観かつ人によって異なるものであるため一概にこのグラフが大きく印象を操作するとは言えません。また、0%ではなく80%から始めてしまっている事以外は数値や下の目盛り事態は何も間違っていないため、じっくり見れば「そう思わない」の人数が「そう思う」よりもずっと多いことが分かります。しかし、日本の「そう思う」の人数がとても多いという印象を見た人に抱かせるには十分でしょう。例えば、同じ数値でも80%から始まる今回のグラフではなく0%から始まるグラフでこの結果を表現したならばきっと見た人に与える印象は違うと思います。
 このグラフを制作し公開したテレビ局は現在このグラフの画像と0%から始め表現しなおしたグラフの画像、さらに謝罪文やこのグラフを起用した理由などをインターネット上などで公開しています。この2つのグラフからわかるように、同じ数値で同じ情報でも見せ方が違うだけでここまで印象が変わってしまいます。グラフから印象や情報を読み取る際にはしっかりと数値などを確認し、グラフの正確な全体像を想像することが大切です。

海外における事例

 たとえ写真が掲載されているからと言って、それはその場の情景を閲覧者が全て理解できることを意味しません。確かに写真がある事により、その現場の情景を読み取りやすくなるでしょう。離れた場所の情景が分かるという点だけでも、写真があるといことはとても重要です。しかし、あくまで写真というものは、その場の情景のたった一部分、一方向からの視点を切り取り保存することができるだけであるため、断片的な情報だけを知れるのものであるのです。

 

< 同じ写真でも視点などの状況が異なることにより違った見え方をする例 >

新型コロナウイルス関連の用語の一つとして、このウイルスに感染しやすくなる状態である「密閉」、「密接」、「密集」の3つの条件をまとめた「三密」という用語が存在します。現在の東京都知事である小池百合子氏がこの言葉を報道機関を通じて沢山訴えた様に、新型コロナウイルスへの対策として密閉や密接、そして密集を避ける事が有効だとされています。新型コロナウイルスの感染は接触感染と飛沫感染、つまり三密な状況に置かれることで起こるため、それを避ける感染対策には大きな効果があります。それ故、三密を避けることに人々は敏感になり、三密な状態になっている人物を見ると注意する人も多い状態にあります。当然その行為は感染拡大を抑制する意味で良い行いです。しかし、このような写真も今の世の中には存在します。
< 実際の画像 >
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この写真が撮影された当時は新型コロナウイルス感染症が世の中で猛威を振るっている状況であるため、「三密」と呼ばれる中の一つである「密集」は避けて然るべき状況です。しかしこの写真を見る限り、人々は感染症が流行する以前のように間隔を詰めて列に並び、密集しているように見受けられます。この時期に感染が拡大するような行為をしている写真の人々は責められるべきなのでしょうか。この写真をご覧ください。
< 実際の画像 >
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この写真は、上に載せた写真と同じ時間、同じ場所を撮影したもので、違うのはカメラのアングルのみです。しかし、写真から受け取れる印象は上の写真とこの写真で雲泥の差でしょう。この写真を見る限り、人々は「三密」な状況を避けるように間隔をあけて列に並び、密集などしていないことが分かります。人々はまるで責められるような行為をしていません。同じ写真でも、撮影する向きと場所によって閲覧者の印象は変わってしまいます。
 次に、この写真をご覧ください。
< 実際の画像 >
」※外部に飛びます
この写真も上の写真と同じく新型コロナウイルス感染症が流行している時期に撮影されたものですが、この写真でも人々は「密集」とまではいかずとも、世間で言われている確保するべき他人との社会的距離、2mは確保されていません。まるで感染症などなかったかのように寛ぎ、談笑しています。上の写真と違い一直線に並んでいるわけではいないため他アングルから撮影したとしても密集状態は変わらず、本当に人々が感染症対策を怠っている様に見えます。今度こそ人々は指を刺されても仕方 のないのでしょうか。
最後に、この写真をご覧ください。
< 実際の画像 >
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この写真は、再び上の写真と同じ時刻、同じ場所で撮影されたものです。それと異なる点は、撮影されたレンズが広角であるか否か。密集に見える写真は望遠レンズ(遠くを撮るレンズ)を使用し、この写真では広角レンズ(広く撮れるレンズ)を使用して撮影しています。それだけの違いでも、見た際の印象は大きく異なったことでしょう。少なくとも人々が距離を置かずに談笑している、感染症対策を怠っているという印象は誤りでした。同じ写真でも、レンズなどの撮影の工夫によって撮影者が抱かせたい印象を抱かせることが可能になってしまうことが分かります。写真があるからと言ってそれは事実ではなく、自分で正しさを判断することが重要です。

まとめ

 このページで紹介したニュースで伝えられているものは全て本当の情報を元としており、フェイクニュースと言うには少し違うかもしれません。グラフの数値も正しいものですし、当然写真も現実の様子を撮影したものです。しかし、事実なはずのそのグラフや画像も情報を伝える側の工夫によって、伝える側の伝えたい印象を閲覧者に抱かせることが可能になってしまうことが分かります。グラフや画像とは便利なもので、伝えたい情報を閲覧者に強く印象付けることが可能です。それ故、情報を伝える側の抱かせたい印象、操作された印象を閲覧者に強く抱かせることも出来てしまいます。それこそ「日本に置ける事例」のグラフを一瞥した際には日本人の排他的な姿勢が強いように感じられるかもしれませんし、「海外における事例」の画像を見た時、人々の新型コロナウイルス感染症への危機感が低いように感じてしまうでしょう。明らかに正しい情報と分かっているものでも、それが確かな根拠として用いられるようなものであっても、その情報を常に疑い物事を多面的に見ることを意識していなければいけないでしょう。

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