間違った関連付け

間違った関連付けとは、内容との関係性が薄いタイトル、画像、見出しがついているもののことを指します。タイトルや見出しの誇張が行き過ぎているものや、内容と合致しない画像を用いているものなどが分類される項目です。
相手を害する目的のものは少なく、私たちが定めた8つの手口の中では悪意なく作られることが多い部類です。しかし、完全な誤りと違い作成者が意図的に行ったものであるため、注意が必要です。

日本における事例

「間違った関連付け」と言っても、内容とまるで関連のないタイトルのニュースなど、殆ど存在しません。しかし、タイトルをより目立たせるための「誇張」や、短いタイトルで内容を表すための「省略」という手段は多くのニュースで用いられています。もちろん読者が内容を誤解しない程度の誇張や省略ならば何も問題はありませんが、行き過ぎたこれらは時にフェイクニュースと呼ばれるまでに至ります。

< 記事見出しの省略により誤解を招くタイトルとなってしまった記事が広く拡散した事例 >


 2020年、新型コロナウイルスによる混乱が世界中で起こる中、人々は自分の身と生活を守るため普段以上に情報を求めて暮らしています。しかし、需要に応じて、また次々に事態が動く状況もあり増え続けるニュースに紛れて、数々のフェイクニュースも世界を飛び交っています。そして、移り変わる事態と日々起こる議論の内容をいち早くニュースにしなければいけない現状は、大手のメディアでさえ誤解を招くニュースを作成してしまう可能性を高めています。
 新型コロナウイルスの危険性を加味して全国の学校の臨時休校が要請される中、それに関する対応により発生する費用の問題について麻生財務相が見解を問われ、その内容を大手新聞各社がインターネット上などに記事を掲載しました。そのタイトルは、”麻生財務相、休校費用の質問に「つまんないこと聞くね」”。これだけ見ると、多くの人々の生活に関わる質問を麻生財務相が「つまらない」と答えた、つまり同氏が国民のことを考えていない、と読者は受け取れます。
ニュース
ニュースイメージ /“PIXADAY”より引用
しかし、この記事の内容では詳しい質問や返答の内容があり、そこには質問者の記者が一つ前の麻生氏の解答を繰り返させるような質問をしたことに対して、「つまらない質問」と述べたことが書かれています。確かに「つまらない」というのは少々過激な表現ととらえられるかもしれませんが、決して麻生氏が休校費用に関する問題自体を「つまらない」と言葉にしたわけではありません。つまり、この記事は、読者に誤解される可能性が高いタイトルが付けられている「間違った関連付け」、軽度のフェイクニュースともとれてしまうような記事でした。
また、この記事に対してTwitterで立憲民主党のアカウントが”はい...?”というツイートを残すとともに、この記事を拡散する動きを見せ、他の議員なども同様の行為を行いました。このツイートに対する返信には「党は内容を理解せずタイトルだけを確認しフェイクニュースを拡散しているのではないか」というような声が多く集まり、記事を書いた新聞社とそれを拡散した立憲民主党らに批判が集まっています。特に情報を拡散する際などは、タイトルだけを読みそれを拡散するなど以ての外。1つの情報だけを理解するだけではなく、複数の情報を元に正しい情報を自分で考えだすことが大切です。

海外における事例

画像」というものは、そのニュースに大きな信用をもたらします。とある記事があったとして、その記事に画像が載せられているだけでその記事に根拠が生まれ、閲覧者は容易にその状況を想像することができます。しかし、その画像が本当に記事通りの状況で撮影されたか、その画像の背景を判別する方法は閲覧者にはありません。

< 2016年アメリカ大統領選挙においてクリントン氏に関する真実の画像を悪用された事例 >


   2016年、アメリカで行われた大統領選挙では、共和党のドナルド・トランプ氏と民主党のヒラリー・クリントン氏の2名が立候補し、選挙戦を繰り広げました。当然両氏の活動は表に立っての活動が主でしたが、TwitterなどのSNSが選挙の話題で大きな盛り上がりを見せたこと、そして両氏もSNSを多く利用していたことも相まってか、フェイクニュースを含む多くの情報がインターネットやマスメディア上で飛び交っていました。
選挙
2016年アメリカ大統領選 /“PIXADAY”より引用
 そんな中、下記する1つの小さなフェイクニュースが作成されました。事の発端は2015年の冬、クリントン氏がある人物の邸宅を訪問した際のことです。その時、同氏が階段で転倒してしまいそうになったため側近らが支えたところ、その様子が1人のフォトグラファーによって撮影されました。そのこと自体は些細な日常を切り取っただけの出来事でありましたし、撮影者もクリントン氏を貶める悪気をもって撮影したわけでもないため、数ヶ月は特に何の問題も発生しませんでした。
ところが2016年になって、トランプ氏を支持するとあるニュースサイトがとあるニュースを掲載しました。その内容は、クリントン氏の健康が悪化しているというもの。そしてその根拠とされていたのはその画像でした。その記事はもちろんフェイクニュースであり、少なくとも大統領選に影響が出るような病などは患っていませんでした。しかし、それが真実でなくとも、「画像」が附属するだけでその情報は多くの人々に信頼されます。それが加工や捏造されたものではなく、実際に撮影されたものならなおさら。世の中に拡散された画像の中には被写体の考えに反して捉えられたものが沢山ある事を意識しなければなりません。

ヒラリークリントン
ヒラリークリントン /“PIXADAY”より引用

まとめ

 実際に撮影された画像や実際の会話の引用がニュースの中に、特に信用性の薄いインターネット上のニュースの中に入っていた場合、そのニュースは多くの読者や視聴者に信用されます。画像が入っているだけで情報を受け取る側は情景を用意に想像することができ、会話が引用されていたならば受け取る側は実際にあった出来事だと錯覚してしまうことが多々あります。しかし、たとえ画像や会話の一部が載せられていたとしても、情報を受け取る側にとってその背景を完全に理解することは出来ません。そのタイトルは実際の会話のほんの一部分、それも前後の言葉の有無によって意味が変わる一部分からしか引用されてないかもしれませんし、その写真は只の日常の一部分を切り取っただけに過ぎないのかもしれないのです。そのような「根拠のある」偽情報が飛び交う中、私達に出来ることは複数の情報を比較し見極めることだと考えます。フェイクニュース全般に関して、情報の真偽を確かめる技術は非常に重要となっています。そのためにも、目の前にある情報を疑い確かめることを常に頭に置いておかなければいけません。

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