生まれた時から泥棒!?異母兄弟との一悶着
ある日、アポロンは地上で飼っていた牛50頭が丸々盗まれているのに気がつきました アポロンは激怒し、すぐに盗人を追跡すべく足跡を辿ろうとしましたが、不思議なことに地面に牛が歩いた足跡はありませんでした。 この犯人こそがその日生まれたばかりの詐欺や窃盗、商売その他を司るアポロンの異母兄弟の伝令神ヘルメスその人でした。 ヘルメスは即興で編んだ大きな草履を牛に履かせて地面に牛と判断ができる足跡が残らないように細工を施していました。 ヘルメスは発明の神でもあります。 生まれたばかりの乳幼児にも関わらずその才能を発揮しました。 アポロンはこの偽装に見事に引っかかってしまい300キロを当てもなく探し歩くハメになりました。 アポロンがギリシャ中を探し回っているうちにヘルメスは50頭の牛を全部解体して証拠隠滅まで行ってしまいました。 そうしてヘルメスは世が明ける前に母の館に戻り、自分の部屋の外鍵を開けることなくまるでさも一晩中そこで寝ていたかのようにゆりかごの中に滑り込みました。こうして密室とアリバイを見事作り上げました。 その後息子が隠れて悪いことをしていることを察知した母マイアに心配され、声をかけられると心配いらないと言った上に「アポロンと同じ程度の崇拝を受ける神になってみせる」言うのでは飽き足らず、「もしアポロンが追ってきたらもっと大きな窃盗をして、アポロンの神殿の金銀財宝・武器・衣装も全部盗む」とまで言って見せました。 ですが、アポロンは見事鳥占い(鳥の飛び方を見て吉兆を占う方法)で犯人がヘルメスであることを的中させます(アポロンは予言、占術も司っている)。 そうしてヘルメスの住む館まで駆けつけ、ヘルメスを問い詰めますが、「私はご覧の通りさっき生まれたばかりの乳幼児です。この僕が盗めるわけがないです。」というふうにのらりくらりとかわしていきます。 やがて、アポロンがヘルメスを捕まえてオリンポスのゼウスの館に出向くと、全く別の証言をします。 この二人の喧嘩にゼウスは大爆笑して泣き笑いしながら二人を仲裁しました。 アポロンは不満そうでしたが、ヘルメスが自分の牛を屠ったと知ると再び大激怒しました。 しかしその時、牛の腸と亀の甲羅でできた楽器がアポロンの目に入りました。それはヘルメスが発明したばかりの『竪琴』でした。 アポロンに何か問われると、何か答え、竪琴を弾き歌い始めました。 その甘美な響きにアポロンは感動し、牛のことなんて放り出してその竪琴を受け取りました。 あれほどまでに喧嘩をしていたはずの二人が仲良く竪琴を抱えてオリンポスに帰ってきた姿を見て、ゼウスはまたもや大爆笑。 二人に親友の契りを交わさせました。