セクション2

睡眠と学習の関係性

睡眠と記憶の定着

人間の記憶は、 短期記憶長期記憶に分けられます。短期記憶は一時的に脳の中の海馬という部分に保存され、1週間から2週間ほどで消去されます。

海馬に記憶された中で、重要だと判断された情報だけが長期記憶として大脳新皮質の側頭葉という部分に保存されるのですが、その移動が行われるのが 睡眠中なのです。そのため睡眠不足や睡眠の質の低下は、健康のみならず学習にも悪影響を与えます。

具体的には、睡眠の質が悪化すると覚えたいことが覚えられなかったり、日中の学習に集中できなくなったりするのです。

また、長期記憶に移動する情報は直前に記憶したものから優先されるため、睡眠直前の勉強や昼寝前の学習内容は記憶が定着しやすくなります。

引用元: unDraw
短期記憶 長期記憶
1~2週間ほどで忘却される 一生思い出すことができる
海馬に保存される 大脳新皮質の側頭葉に保存される
直近に起こったすべての記憶が一時的に保存される 短期記憶の中で重要だと判断された記憶が保存される

勉強する時間帯と科目

人は睡眠中に記憶が整理されて長期記憶に保存されるため、地理や歴史、化学、英単語などの暗記科目は 夜の寝る前に行うと効果的です。

一方で、数学や英作文の読解問題などの理解科目の学習は寝る前ではなく 朝起きた直後に行うのが正解です。人間の脳は、使えば使うほど疲労がたまっていき、脳疲労が蓄積しすぎると思考力や判断力が低下してしまいます。脳の疲労は睡眠をとることで回復しますが、一日の疲れが一番たまっている睡眠前というタイミングでは思考力を必要とする学習は効率が悪いのです。

引用元: unDraw

睡眠学習

睡眠学習とは、寝ている間に音声を流すことで学習をしようとする行為を指します。基本的に睡眠学習は新しい知識を身につけるのは難しいですが、復習の目的、特に丸暗記になら効果があるといわれています。

睡眠学習は枕にテープレコーダーを組み込んだ睡眠学習機が発売されたことがきっかけで広まりました。その後、睡眠学習によって外国語の習得に効果があるということが実験によって証明されています。現在においても研究途上の分野ですが、これからさらに効果的な睡眠学習の方法などが解明されるかもしれません。

睡眠学習の歴史
1924年 JenkinsとDallenbachにより、記憶は覚醒中よりも睡眠中のほうが保持率が高いという実験結果が発表される
1960年代 睡眠学習機器が発売される
1970年代 睡眠学習機器が大ブームになり累計約50万台を売り上げるが、 「テープに覚えたいことを吹き込む過程で記憶しているのではないか」という見解が広がり、市場から姿を消す
2009年 アメリカ合衆国イリノイ州のノースウェスタン大学にて、夜に聞いた音が記憶の固定化につながることが研究により判明
2012年 匂いと音を条件付けた記憶の実証に成功する
2014年 スイス国立科学財団にて、睡眠学習による外国語の勉強の効果が実証される

まとめ

  • 短期記憶には直近の記憶が、長期記憶には半永久的な記憶が保存されていて、 睡眠中に短期記憶から長期記憶に情報が移動する。
  • できるだけ寝る直前に暗記科目の学習をすることで、長期記憶に保存されやすくなる。
  • 数学などの論理的な思考が必要な科目は起床直後に取り組みことが望ましい。
  • 睡眠学習のブームが去ったが、科学的に全く効果が証明されていないわけではない。