セクション4

寝具の選び方

寝具の役割

寝具について、Wikipediaでは次のように説明されています。

ヒトという動物は元々、熱帯〜亜熱帯にかけての気温に即した身体構造をしており、目が覚めている時間では、身体の恒常性維持を行う自律神経の働きで、ある程度の体温調節が効き、また衣類を着用することで体温調節を行っている。しかし就寝時には自律神経の働きは鈍り、また活動時には動き易く暖かい着衣も、寝ているときには些か窮屈である。このため寝具が必要となると考えられる。

引用元: 寝具 - Wikipedia

このように寝具は、寝ている間に体を快適な状態に保つためになくてはならない存在です。そんな寝具には、睡眠中に汗をかく、体温が下がるなどの生理的な変化に適切に対応し、心地よい睡眠を作り出すという大切な役割があります。中でも重要なのは、温度を保つ 「保温性」、適切な湿度を保つ 「吸透湿性」、吸った湿気を空気中に逃がす 「放湿性」の3つです。

役割 概要
保温性 温度を保つ
吸透湿性 適切な湿度を保つ
放湿性 吸った湿気を空気中に逃がす

一概に寝具と言っても、掛け布団、マットレス、枕をはじめとして多くの種類がありますが、寝具の役割はこれらの3つを基本として各寝具ごとにそれぞれの役割があるのです。ここからは、各寝具ごとに要求される役割を見ていきましょう。

掛け布団

掛け布団に求められる役割は、体を圧迫せずに軽さを生む 「かさ高性」、体になじんで包み込む 「フィット性」です。

役割 概要
かさ高性 体を圧迫せずに軽さを生む
フィット性 体になじんで包み込む

昔は、分厚く重い布団こそが暖かいというのが定説でした。しかし、重い布団は体を圧迫し、寝返りをすることを阻害するなどの弊害が生じる可能性があります。そのため現在では、掛け布団は軽いものが適しているといわれています。好みにもよりますが、やはり 軽くて暖かい布団が理想的です。

また、詰め物にもさまざまな種類があります。例えば、高品質な順に以下のようなものです。

  • 羽毛(ダウン)
  • 真綿
  • 合成繊維
  • 綿

当然ながら、高品質な掛け布団は値段も高くなる傾向にあります。しかし、それだけ性能が良いのです。特に羽毛と真綿は、空気をたくさん含むので保温性に優れています。さらに、フィット性が良いので空気の対流が起きにくく、動物繊維なので放湿性にも優れています。これらは、まさに理想的な詰め物といえるでしょう。

マットレス

マットレスには、体を自然な状態で休ませるための 「正しい寝姿勢の保持」という機能が求められます。正しい寝姿勢とは、まっすぐに立ったときの背骨のS字カーブが保たれているような姿勢のことです。

正しい寝姿勢の保持の観点から重要になるのが、 マットレスの硬さです。しかし、硬さには理想的と呼べる絶対的な基準がありません。というのも、身長、体重、重心のバランスには個人差があるからです。そのため、実際に試してみて自分に一番合ったマットレスを選ぶことが大切です。

自分に合うマットレスを選ぶときは次の項目を参考にしましょう。

  • マットレスと背中の間に隙間ができないこと(硬すぎず、体圧分散性がある)
  • マットレスに腰が沈み込みすぎないこと(柔らかすぎない)
  • 寝返りがしやすいこと(弾力性がある)

睡眠時、腰の部分にはかなり体重がかかっています。マットレスが硬すぎたり柔らかすぎたりすると、腰を痛める原因となるので、注意しましょう。

枕には、 頭の位置を調節し、背筋を正しい形に保持するという役割があります。マットレスと同様、寝姿勢を正しく保つために大切なものです。枕がない状態で寝た場合、頚椎が背中側に曲がり、姿勢は反り気味、あごも上がり気味になってしまいます。この状態では、首、肩、背中などに負担をかけてしまい、肩こりや首の痛みなどの原因となります。

自分に合った枕を選ぶためには、まず高さを考慮する必要があります。高すぎる枕は肩こりを引き起こし、低すぎる枕はいびきの原因となります。

高さのほかにも、良い枕を選ぶためには様々なことを考えなければいけません。次の項目を参考にしましょう。

  • 自分に合った高さであること
  • 密着しすぎず、中が蒸れないこと
  • 硬さと感触が好みであること
  • 気になる音や香りがしないこと
  • 形や大きさが体に合っていること
分析のイメージ画像
引用元: undraw

リラックスグッズ

質の良い睡眠をとるには、スムーズに交感神経から副交感神経に移行させることが重要なため、就寝前はリラックスしているのが理想的です。効果的にリラックスするためには アロマキャンドルハーブティーなどがおすすめです。

ここからは、これらのアイテムについて見ていきましょう。

アロマキャンドル

「アロマテラピー」という言葉がありますが、日本アロマ環境協会(AEAJ)では、これを以下のように定義しています。

アロマテラピーは、植物から抽出した香り成分である「精油(エッセンシャルオイル)」を使って、美と健康に役立てていく自然療法です。

アロマテラピーの目的

  • ●心と身体のリラックスやリフレッシュを促す
  • ●心と身体の健康を保ち、豊かな毎日を過ごす
  • ●心と身体のバランスを整え、本来の美しさを引き出す

引用元: (公社) 日本アロマ環境協会 | アロマを楽しむ | アロマテラピーとは

直訳すると「芳香療法」となりますが、名前の通り、香りには身体や心に対して癒しをもたらす効果があります。鼻から体内に入った香りの情報は脳に運ばれます。また、香りに含まれる有効成分は肺に届き、毛細血管をめぐって全身に行き渡ります。取り込んだ有効成分は免疫系やホルモンの分泌、精神などに良い影響を与えます。

さらに、炎の揺らぎを見ることで気分を落ち着かせることができます。

このように、アロマキャンドルはアロマの香り、キャンドルの炎の揺れという 二つの作用を同時に受けることで身体・精神ともにリラックスさせることができるのです。

ハーブティー

ハーブは、何千年もの歴史を持つ医療品で、ヨーロッパでは現在でも風邪薬、うがい薬、抗うつ剤として利用されています。そもそも薬とは、効果が薄い、副作用が強いなどの理由があると使われなくなるものです。その点、長い歴史を持つハーブは優れていると言えるでしょう。

ハーブの中で、特に睡眠に対して効果があるのが カモミールです。カモミールは、鎮痛効果を持つ物質が豊富に含まれているため、心を落ち着かせて安眠へと導いてくれます。

まとめ

  • 寝具の基本的な機能は保温性、吸透湿性、放湿性の3つ。
  • 掛け布団に求められるのはかさ高性とフィット性。
  • マットレスの役割は正しい寝姿勢の保持であり、自分に合った硬さのものを選ぶ。
  • 枕は頭の位置の調整、背筋の形の保持を行う。
  • アロマテラピーでは有効成分、炎の揺れという2つの作用でリラックスできる。
  • ハーブティーは優れた医療品で、特にカモミールが睡眠に対して優位な効果を持つ。