セクション8

就寝前の行動と睡眠の質の関係性の実験

実験概要

実験概要
目的

就寝前の行動が睡眠に与える影響を調べる。

内容
  • カフェインが睡眠に与える影響を調べる
  • 就寝前におけるスマホの使用が睡眠に与える影響を調べる
  • 睡眠開始時刻の変化が睡眠に与える影響を調べる
  • 入浴のタイミングが睡眠に与える影響を調べる
方法
基本の睡眠条件
  • 睡眠時間:22時から6時
  • スマホ:ベッドの中でを触らない
  • カフェイン:16時以降は摂取しない
  • 入浴:就寝90分前
  • 室温:27℃
この条件で寝ると理想的な睡眠ができると思われるため、上記の条件での睡眠ログをとる。その後、これらの条件を1つずつ変えて以下のような対照実験を行う。
①カフェインを摂ったときの睡眠の質の変化の実験
ベッドに入る直前にコーヒーを飲んで睡眠のログを取り、基本の睡眠条件の睡眠ログと比較する。
②スマホを見ることによる睡眠の変化の実験
ベッドの中で1時間スマホを操作して睡眠のログを取り、基本の睡眠条件の睡眠ログと比較する。
③睡眠開始時刻の変化による睡眠の質の変化の実験
22時から6時ではなく、24時から6時までの睡眠のログを取り、基本の睡眠条件の睡眠ログと比較する。
④入浴のタイミングによる睡眠の質の変化の実験
就寝90分前ではなく、就寝3時間前に入浴して睡眠のログを取り、基本の睡眠条件の睡眠ログと比較する。
睡眠の計測方法
iPhone及びandroidアプリ、 「Sleep Cycle」を使用して計測する。
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理想的な睡眠の実験データ(比較対象)

理想的な睡眠
項目 A B C 平均
睡眠の質(%) 83 77 88 82.67
寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合 0.88 0.87 0.86 0.87
入眠までの時間(分) 28 20 32 26.67

①カフェインを摂ったときの睡眠の質の変化の実験

ベッドに入る直前にコーヒーを飲んで実験した。

仮説

  • 基本の条件の睡眠と比べ、睡眠の質は大幅に低下する
  • 寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合は、小さくなる
  • 入眠までの時間は、非常に長くなる
  • 途中覚醒が増える
  • 浅い睡眠が増える

結果

カフェインと睡眠
項目 A B C D E 平均 理想値との差
睡眠の質(%) 77 88 62 99 81 81.5 -1.17
寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合 0.74 0.9 0.78 0.79 0.8 0.8 -0.07
入眠までの時間(分) 38 24 57 57 39 41 +14.33

※理想値との差の欄の文字の色は 「悪化している場合」は赤「好転している場合」には青で表示しています。

考察

  • 睡眠の質、寝ていた時間の割合、入眠までの時間、すべての項目において数値の低下が見られた。特に入眠までの時間が15分ほど長くなっている。このことから、カフェインを摂取すると脳の覚醒レベルが上昇し、スムーズに副交感神経優位の状態に移行できなくなることで、寝付きが悪くなっていると推測できる。

結論

  • 就寝前にカフェインを摂取すると、寝付きが非常に悪くなり、睡眠全体の質が低下する。

②スマホを見ることによる睡眠の変化の実験

ベッドの中で1時間スマホを操作して実験した。

仮説

  • カフェイン摂取時ほどではないが、睡眠の質は低下する
  • 寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合は、小さくなる
  • 入眠までの時間は、長くなる

結果

スマホと睡眠
項目 A B C 平均 理想値との差
睡眠の質(%) 91 86 91 89.33 +6.66
寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合 0.82 0.94 0.81 0.86 -0.10
入眠までの時間(分) 35 32 29 32 +5.33

考察

  • スマホを操作してから就寝した場合、睡眠の質は向上した。おそらくこれは、日常的にベッドの中でスマホを触ってから寝るという生活をしているため、普段どおりの状態で睡眠がとれたためだろう。もし、いつもベッドの中でスマホを触っていない人がこの実験を行った場合、睡眠の質は大きく低下するのではないだろうか。
  • 入眠までの時間が長くなっていることから、ブルーライトにより脳の覚醒レベルが上がり、寝付きが悪くなったのだろうと考察できる。

結論

  • 就寝直前にスマートフォンを操作した場合、寝付きが悪くなる。
  • いつも通りの状態で睡眠をとった場合、睡眠の質は向上する。

③睡眠開始時刻の変化による睡眠の質の変化の実験

基本の睡眠条件から睡眠開始時刻だけを2時間遅らせ(総睡眠時間は2時間減少)、24時から6時まで寝て実験した。

仮説

  • 睡眠の質は低下する
  • 寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合は、小さくなる
  • 入眠までの時間は、短くなる

結果

睡眠開始時刻と睡眠
項目 A B C 平均 理想値との差
睡眠の質(%) 70 52 68 63.33 -19.34
寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合 0.89 0.98 0.81 0.86 -0.01
入眠までの時間(分) 31 7 51 29.67 +3.00

考察

  • 全体的に睡眠の質の低下がみられた。この実験における基本の睡眠条件(22時から6時)やいつもの生活とは睡眠開始時刻が異なるため、睡眠に関わる脳が睡眠の質をコントロールできなかったものと考えられる。
  • 寝ていた時間の割合や入眠までの時間はあまり変わらなかった。この実験では、睡眠前の脳が覚醒している訳ではないので、このような結果になったと推察できる。

結論

  • 普段の生活のルーティンを崩し、総睡眠時間が減少すると、睡眠の質が低下する。
  • 寝ていた時間の割合や入眠までの時間は睡眠開始時刻・終了時刻にはあまり影響されず、睡眠前の脳の状態に影響される。

④入浴のタイミングによる睡眠の質の変化の実験

基本の睡眠条件の就寝90分前の入浴ではなく、就寝3時間前に入浴して実験した。

仮説

  • 睡眠の質は、ほかの項目と比べあまり低下しない
  • 寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合は、あまり変化しない
  • 入眠までの時間は、少しだけ短くなる

結果

入浴と睡眠
項目 A B C 平均 理想値との差
睡眠の質(%) 94 83 67 81.33 -1.34
寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合 0.74 0.87 0.75 0.79 +0.08
入眠までの時間(分) 63 9 67 46.33 +19.66

考察

  • 睡眠の質は、理想的な睡眠とあまり変化が見られなかった。入浴時間が睡眠の質に与える影響は少ないと考えられる。
  • 入眠までの時間は、理想的な睡眠の記録よりも20分ほども長くなっていた。そして寝床にいた時間に対する睡眠時間の割合は8%ほど小さくなっていた。そのため、適切な時間に入浴をしない場合、寝付きが非常に悪くなっていることが読み取れる。

結論

  • 入浴する時間が早すぎると入眠までの時間が伸び、睡眠の質を多少低下させる。
  • 入浴時間が早まりすぎると、寝付きが非常に悪くなる。結果的に睡眠を摂ることができる時間も短くなり、睡眠不足につながる。

まとめ

  • 睡眠の質は、脳の状態によって大きく影響される。
  • 就寝前のスマートフォンの利用は寝付きを悪くするが、普段からの習慣の場合は使用しないと睡眠の質は下がってしまう。
  • 普段通りの状態の睡眠ではない場合、たとえ睡眠に良い影響を与える行動をとったとしても質は低下する。
  • 睡眠時間が大幅に短くなると、睡眠の質は一気に下がる。
  • 入浴のタイミングは睡眠に大きな影響を与えるため、就寝する90分ほど前に風呂に入るとよい。