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鰹節(かつおぶし)

鰹節って何?

 皆さんは堅い食べ物と言ったら何を思い浮かべますか? おせんべい、堅パン。しかし、世界で一番堅い食べ物は意外と身近に潜んでいます。それは鰹節。
鰹節は世界で最も固い食品とされ、ギネスブックに登録されています。堅い=水分をほとんど含まないので保存性に優れた食品でもあるのです。
鰹節は名前の通り鰹を原料とした日本特有の魚の乾物ですが、熟成させる工程の途中でカビを利用して発酵させます。カビを使っているなんて意外ですよね。

世界一の硬さを誇る理由

 世界で一番硬い食品としてギネスブックに認定されている鰹節ですが、鰹節の次に硬い食べ物は中国で作られている乾鮑(カンパオ)とよばれる鮑を干した食べ物ですが、硬さを測定する最新の測定機を使って調べた結果、鰹節の完全勝利でした。
 しかし、鰹節は昔から硬かったわけではなく、鰹節の原型となる煮堅魚(にかたうお)はただ太陽によって乾燥させるだけのものでした。しかし江戸時代の初期、鰹節の長期保存をするために今の鰹節が初めてつくられました。長期保存をする、つまりはできるだけ水分を抜くよう工夫をした結果がこの鰹節で、これはその後約90年の時間をかけて土佐の漁師たちによって今の製法に落ち着いたと言われています。
 ではなぜ鰹節は鉋(かんな)で削らなくてはいけないほどの硬さにできるのでしょうか。それは製造方法と菌が関係しています。

鰹節の製法

 鰹節は脂のあまりのっていない鰹の身を三枚におろし、97〜98℃のお湯で15〜40分ほど煮て骨抜きをして冷やし水抜きをします。これでできたものまでがなまり節です。そして木の箱に4、5枚を重ねて入れ、煤乾室と呼ばれる部屋でいぶした後数日間かけて乾燥させるのを何度か繰り返します。
ここまでの工程でできたものが荒節と呼ばれるものでこれを船の形に成型したものの事を裸節と呼びます。そしてこれを4、5日日光で乾燥させてここでいよいよ大事なカビ付けをします。裸節を二週間ほどカビ付け用の樽にいれておくとカビ付け樽に住んでいた鰹節菌とよばれる麹カビの一種が裸節の表面に発生します。
これを取り出してカビの胞子を刷毛で払い落として日干しするという過程を4回ほど繰り返すし最後にしっかりと乾燥させるとやっと私達のよく知っている鰹節の完成です。

このように手をかけることによって堅い鰹節は完成します。

しかしなぜこんな頻繁にカビを付けるのでしょうか?


鰹節


麹カビと鰹節

 お風呂場、台所、梅雨。私達がカビに悩ませられるのは、じめじめした湿度の高い所です。だからカビが湿度の高い場所を好むのは、カビは他の微生物たちに比べて育つのに沢山の水分を必要としているからで、それは鰹節を作る時も同じです。
カビ付け用の樽には多くの鰹節菌という麹カビが住んでいます。
この鰹節菌が沢山住んでいる樽の中に裸節を入れると、菌達は生きるために裸節の表面から水分を吸い取ってしまいます。
すると表面が乾燥し、今度はさらに多くの水分を吸いとろうとするので奥の水分が乾燥した表面に移ってその水分をまたカビが吸いとろうとします
こうしてカビに水をとことん吸い出されて節内の水はほとんどなくなり、こんなに乾燥した状態になるのです。
 また、水分がない状態では私達と同様、微生物たちも生きることができません。すなわち、微生物がすむことのできない食べ物は腐敗をしないので保存がきくのです。
これも電化製品がない時代に食べ物を保存するための大きな知恵から生まれたものだったのですね。

ダシ汁をとるときは鰹節を使うのはなんで?

 鰹節のうま味の成分はイノシン酸と呼ばれる成分です。さらに鰹節菌が繁殖する時にだす様々な酵素のうち、鰹のタンパク質を分解してできるアミノ酸があります。この2つが相乗することによってうま味成分が最大限まで引き出されるのです。