バイオ医療の未来>再生医療の未来 Muse細胞 各細胞の比較

第三の多能性幹細胞「Muse細胞」

みなさんは「Muse細胞」というものを知っていますか?Muse細胞はES細胞とは違い、体内にある骨髄由来の間葉系幹細胞からできた細胞です。 この細胞は出澤真理教授によって発見されました。実はMuse細胞は失敗から偶然発見されたもので、出澤教授が間葉系細胞から分化させた骨格筋細胞を、 培養液と誤って消化酵素に入れてしまったまま放置していたのに関わらず、その中で生き残っていた幹細胞を濃縮してつくられたものなのです。

Muse細胞の特徴は、体内由来なのでがん化する可能性が極めて低くストレスにも強い細胞だということです。 このMuse細胞はES細胞と比べて倫理的に問題がないのも利点の一つです。

ES細胞、iPS細胞、Muse細胞を比較

前ページではES細胞、iPS細胞、Muse細胞を紹介しましたが、それぞれどのような利点、問題点があるのでしょうか?

上の表を見ての通り、ES細胞は倫理的な問題が最大の課題となっています。そのES細胞の問題点を解決したiPS細胞にも、導入する遺伝子に がんのもととなる遺伝子があるためにがん化しやすいという欠点があります。そしてMuse細胞はがん化しにくく、倫理的問題がほぼない のですが、ほかの多能性幹細胞とくらべて増殖能力では劣るという面もあります。それぞれの細胞の問題点を解決しつつ、使い分けていくことが大切です。

多能性幹細胞長所短所
ES細胞 ・ほぼ無限に増殖する ・倫理的な問題
iPS細胞 ・ES細胞と同等の増殖能力をもつ
・倫理的問題がほぼない
・安定的な供給が可能
・拒絶反応はほぼない
・がん化するリスクがある
Muse細胞 ・倫理的問題がほぼない
・ストレスに強い
・がん化するリスクがない
・増殖する数に限界がある

ES細胞、iPS細胞、Muse細胞は組織を復活させるようなすごい細胞!現在は実用化に向けてまだ課題が多いですが、将来的には バイオ医療で重要な役割を果たしてくれるに違いありません。

ちなみにiPS細胞は当時世界的に流行したiPodになぞらえて、「iPodのように普及してほしい」という意味が込められて名づけられました。

参考文献 書籍

  • 岩波科学ライブラリー iPS細胞はいつ患者に届くのか
    (塚﨑朝子、岩波書店・2013年 11月26日)
  • ブルーバックス カラー図解 EURO版 バイオテクノロジーの教科書(下)
    (ラインハート・レンネバーグ、講談社・2014年 5月21日)
  • Newton 別冊 山中伸弥教授がかたる最新iPS細胞
    (Newton・2018年 3月5日)
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