バイオ医療の未来>再生医療の未来 ES細胞・iPS細胞

再生医療の未来

みなさんは「再生医療」というものを知っていますか?再生医療とは、何かしらの理由で使えなくなってしまった体の組織を 復活させる、または機能改善を実現する医療技術のことを言います。未来では、自分の臓器を失っても再びつくることができるように なるかもしれません。

幹細胞とは?

「幹細胞」は細胞の中でも、様々な細胞に変化する(分化する)能力、「多分化能」と分裂して自分と同じ細胞を作ることができる能力、 「自己複製能」をもっている特別な細胞です。この幹細胞こそが再生医療のカギを握っています。

ただ、普通の幹細胞の多分化能には限界もありすべての種類の細胞になるわけではありません。これをまず解決したのがこれから説明する、 受精卵からできた「ES細胞」です。

ES細胞とは?

「ES細胞」は簡単に言えばありとあらゆる細胞に変化することができて、ほぼ無限に増えることができる特別な幹細胞です。 ES細胞は受精卵からつくらているためにこのような性質を持っています。

しかしヒトES細胞となると、ES細胞は受精卵からつくられたために「一人の人間を殺した」という捉え方もあります。 このような理由からES細胞は倫理的な問題を抱えており、特に宗教的な理由からES細胞を使うことがあまりできていないということもあります。

人工多能性幹細胞「iPS細胞」の誕生

倫理的問題の壁に阻まれたES細胞ですが、これを打破する新たな細胞、「iPS細胞」が開発されました。iPS細胞は2006年、山中伸弥教授によって 開発され、山中教授は2012年にはノーベル医学生理学賞を受賞しました。iPS細胞の特徴は、ES細胞のような「様々な細胞に分化する能力や増殖する能力」を普通の体細胞に 「人工的に導入した」という点です。

iPS細胞は体細胞に山中ファクター(山中因子)とよばれる4つの遺伝子を導入することで作ることができます。山中ファクターとはOct3/4、Sox2、Klf4、c-Mycのことで、 これらの遺伝子は山中教授がマウスiPS細胞を作成したときに導入されました。また、今日では別の遺伝子の組み合わせも見つかっています。 iPS細胞はES細胞と違い体細胞から作成した細胞なので倫理的に問題はほとんどなく、未来の再生医療を牽引するであろう細胞となっています。

  • 幹細胞には多分化能と自己複製能がある。
  • ES細胞ははじめての多能性幹細胞。
  • iPS細胞はES細胞の欠点を補った画期的な細胞。

参考文献 書籍

  • 岩波科学ライブラリー iPS細胞はいつ患者に届くのか
    (塚﨑朝子、岩波書店・2013年 11月26日)
  • ブルーバックス カラー図解 EURO版 バイオテクノロジーの教科書(下)
    (ラインハート・レンネバーグ、講談社・2014年 5月21日)
  • Newton 別冊 山中伸弥教授がかたる最新iPS細胞
    (Newton・2018年 3月5日)
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