バイオ医療の未来>iPS細胞の使い道

iPS細胞はどのようなところで使われるのか?

これまではES細胞やiPS細胞、Muse細胞と、再生医療ではどのようなものが使われているのか見てきましたが、実際はどのようなところで使われ、 将来的にはどのように使われるのでしょうか?

心機能を復活させる心筋シート

心筋シートというものを知っていますか?心筋シートは虚血性心疾患や心不全の根本治療が期待されているもので、最近では2020年1月にはiPS細胞 からつくられた心筋シートが初めて患者に移植されました。心筋シートを開発した澤芳樹教授は近年中の実用化を目指しています。
今一般的に用いられている「筋芽細胞」からつくられた心筋シートは次のような工程でつくられ、患者の心臓に移植します。

まずは、患者の足の筋肉を採取し、筋芽細胞を培養します。筋芽細胞は心筋細胞と同じ構造をしていて、増殖能力も高いので心筋細胞の代用として用いられます。 その後、シート状に成形し筋芽細胞でできた細胞シート、心筋シートをつくります。そして、この心筋シートを患者の心臓に何枚か貼り付けます。 この筋芽細胞でつくられた心筋シートの移植は数十人の患者に行われて、いずれの場合にも心機能の向上が認められました。

iPS細胞をつかった心筋シート

これまでは筋芽細胞をつかった心筋シートを紹介しましたが、あくまでも筋芽細胞は心筋細胞ではないので重度の心不全だと、筋芽細胞からつくられた心筋シート での治療は不十分になってしまいます。そこで、様々な細胞になることができるiPS細胞が注目されました。iPS細胞から心筋シートを作製すれば、患者の筋肉から 筋芽細胞を採取する必要もありませんし、重度の心不全にも対応できることが期待されています。

ここで紹介したiPS細胞の用途はほんの一例です。ほかにもさまざま用途がありますし、これからiPS細胞の使い道がどんどん増えていくでしょう。

参考文献 書籍

  • 岩波科学ライブラリー iPS細胞はいつ患者に届くのか
    (塚﨑朝子、岩波書店・2013年 11月26日)
  • ブルーバックス カラー図解 EURO版 バイオテクノロジーの教科書(下)
    (ラインハート・レンネバーグ、講談社・2014年 5月21日)
  • Newton 別冊 山中伸弥教授がかたる最新iPS細胞
    (Newton・2018年 3月5日)
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