海水淡水化のメリット・デメリット
海水淡水化のメリット
- 水資源に恵まれない場所にも水を供給できる
- 飲料水に適した水質の水が得られる
世界の水の現状のページでも述べた通り、世界では現在、気候変動(地球温暖化)や人口増加によって深刻な水不足問題に直面しています。
特に、乾燥帯に属する地域や、地層的に雨が降ってもすぐ地下に抜けてしまって水が貯まらない島々などを中心に、海水淡水化はそこに住む人々の生活になくてはならない技術になっています。
大規模なものだと、砂漠気候にあるサウジアラビアの首都リヤドでは、なんと400㎞も離れた海沿いの海水淡水化プラントから水道管を敷いて水を供給しています。変わったところでは、長い距離を航海する貨船も飲料水が不足するので、小型の海水淡水化装置が搭載されています。
世界には、井戸水を汲むことができても、その中に有毒な物質が含まれていることがあります。たとえば、自然にある鉱物由来のヒ素、工場などの排水中に含まれる揮発性有機化合物や重金属、農業用肥料による硝酸・亜硝酸性窒素などです。感染症のもととなる細菌やウィルスが存在する場合もあります。
これに対して、海水淡水化で得られる淡水は、そのようなリスクがほとんどありません。蒸発法による場合は海水を蒸発させて水蒸気を得る過程で、浸透圧法による場合は浸透膜を通過する過程で、そういった有害な物質が取り除かれるからです。
海水淡水化のデメリット
- 大量のエネルギーの投入が必要となる
- 縮水排出問題
海水淡水化には大量のエネルギーが必要になります。蒸発法では海水を加熱したり、大量の海水を取水・循環させるために、また、浸透圧法では、海水を高圧力をかけにするために、の電力等のエネルギーを消費するのです。
こういった電力等を作り出すためには、現状では化石燃料の燃焼が必須であり、その際に温室効果ガスである二酸化炭素が発生します。
気候変動による水不足の解消のために海水淡水化プラントの導入が進む中、それにより温室効果ガスが排出され、地球温暖化が進むという悪循環が発生してしまう恐れがあるのです。
「濃縮水」とは海水淡水化の際に残っている、塩分等の成分が濃くなった海水のことです。蒸発法や浸透圧法では、原料となる水のおよそ半分が淡水化されて真水となり、半分は濃縮水として残ります。
塩分濃度の高い濃縮水をそのまま排出してしまうと、周辺の生態系に影響を与えてしまう恐れがあります。このため、取材をした福岡地区水道企業団海水淡水化センター(まみずピア)や沖縄県海水淡水化センターでは、周辺環境になるべく影響を与えないように工夫を凝らしていました(内容については、それぞれの取材ページをご覧ください)。
参考文献
浸透膜とは?福岡のお水工房RO純水工房
参照:2023.10.15
WaterWorld.com
“Water transmission project to provide reliable water supply for residents of Riyadh”
参照:2024.1.6
出光タンカー株式会社「飲料水を船内で造る!「造水器」
参照:2024.1.6
沖縄県衛生環境研究所「地下水で検出されるヒ素はどこから?」
参照:2024.1.6
環境省「地下水汚染の仕組み」
参照:2024.1.6
一般社団法人環境金融研究機構「海水淡水化で環境汚染? 世界に1万6000件のプラントが稼動。淡水だけでなく、濃縮塩水や化学物質も大量排出(National
Geographic)」
参照:2024.1.6