世界の水の現状
進む水不足
今、世界では深刻な水不足問題が進んでいます。
ここで、皆さんは、私たちが1日にどれくらいの量の水を使用しているのか、考えたことはありますか?
国土交通省の統計によると1日1人あたり、およそ300Lもの水を使用しています。このように、水の環境に恵まれた日本では、水が足りないなどという不便な状況はあまりないでしょう。
しかし、世界に視点を置いてみると当たり前に清潔な水を確保できない地域は少なくありません。現在では世界人口の約40%の人々が水不足に悩まされており、今後も上昇していくと考えられています。この状況が進めば2050年には約97億人になると言われている中、そのうちの約半数が水不足に悩まされることとなり、4人に1人は慢性的な水不足の影響(水不足によって病気になったり)などを受けると推測されています。
現在、海水の約97%が塩辛い海水で、約3%が凍っている海水な為、飲み水として利用できる水は0.01%しかないと言われています。またユニセフによると、世界中の人の内、20億人が安全に管理された飲み水の供給を受けられていないと言います。菌に汚染された水を飲んで感染する病気で命の危険に直面している人はたくさんいます。2016年に中央アフリカでコレラ菌によって多くの人々が命を落とすコレラが流行しました。世界では現在も、そのようなリスクのある水は危険だとわかっていても飲まざるを得ない人々が多くいるのです。
さらに、水を巡って組織が争い合う「水紛争」が起こっている地域もあります。今でも慢性的な水不足に陥っている発展途上国の一部の国は、戦争には発展しなかったものの、対立は過去に何度も起こっています。
- 2021年、11カ国を流れる国際河川のナイル川の上流にダムを作ると言い始めたエチオピアに対して下流側の国であるエジプトとスーダンが反対し、 国連での討議を経ても対立が解消されていないことが報じられました。
- ドナウ川において、ハンガリーとスロバキアが運河のための水利用で対立し、インダス川ではインドとパキスタンによる水の所有権で対立しました。
また、現在世界では地球温暖化により水不足が深刻化しています。 元々水不足の地域は元々の状態より更に乾燥してしまいます。 ここで、水が蒸発したら雨として降るから飲み水が増えて良いことではないのかとも思われます。 しかし、この気候変動によって、降水量だけでなく、雨の強さや頻度も変化してしまいます。 このように降水パターンが激しく変化することで季節や月ごとで見ると、水不足に悩む地域が出てきやすいのです。 雨だけでなく、気温上昇による積水の減少や雪溶けの早まりは春夏の水源量に大きく関わってきます。 また、気候変動が引き起こす大雨や干ばつで水が必要な時に必要な場所で人間に限らず、全ての生き物に必要な水を、海水淡水化という技術によって補うことができます。 先ほど述べた97%の塩辛い海水が飲み水になれば、水不足の解消に向かうことができるため、海水淡水化技術は今この世界の現状にはなくてはならない技術となっています。
20世紀は石油の世紀と呼ばれていたのに対し、21世紀は水の世紀と呼ばれています。
これは21世紀が水不足で世界が水との付き合い方を考えなければならない100年という意味です。
「20世紀は石油を巡って争う世紀だったが、21世紀は水で争うことになる」(世界銀行環境担当副総裁イスマイル・セラゲルディン氏の発言 1995年)から世の中に浸透していくようになりました。
今世界では12億人が安全な水を飲めません。WMO(世界気象機関)はThe State of Climate
Services 2021で「2050年までに、世界の2人に1人が水不足の状態に陥る」と公表しました。
近年、世界各地で河川の水位が低くなる事態が発生しています。
水は生活用水、農業用水、工業用水に使われていて、それぞれ1割、2割、7割の割合になっています。
日本と水不足の関係
以上の話は水不足が深刻な外国の問題で、日本は水の豊かな国だから関係のない話だと思っている方がいるかも知れません。
しかし、それは大きな間違いです。
それはなぜなのか、これから説明していきます。
- バーチャルウォーター
- ウォーターフットプリント
バーチャルウォーターとは、生産物食料を輸入している国で輸入した分の食料を生産しようと仮定したときに必要な水のことです。
例を挙げると、1kg のトウモロコシを生産するには、1,800リットルの水が必要です。
そして牛は飲む水以外にこうした穀物を大量に消費しながら育つため、牛肉1kgを生産するには、その約2万倍もの水が必要です。
日本が輸入するバーチャルウォーターは日本の年間水使用量80%と同程度とされています。
また、日本の食料自給率は2021年度で38%です。横ばいになっているものの、少しずつ減ってきています。
このようにバーチャルウォーターという概念がある以上、水不足は日本でも切っても切れない問題です。
また日本は水が豊かな国と言われていますが、
一人あたりの水資源量は日本で約3,300立方メートルで、世界平均で、約8,600立方メートルなので、日本の一人あたりの水資源料は世界平均の約3分の1程度しかありません。
日本は世界の水資源を利用しているので日本は海水淡水化の技術などで海外の水不足を解決していくことが重要だと思います。
先ほど説明した、バーチャルウォーターと似た概念のもので、ウォーターフットプリントというものがあります。
バーチャルウォーターが「生産される際に使用された水の量」を表しているのに対し、ウォーターフットプリントとは、「生産から輸送、消費、消費後のリサイクルなど、すべてのプロセスで使用された水」のことです。
例えば、小麦を1kg生産してから消費するまでに使われるウォーターフットプリントの量は約1800Lが必要であり、また、オレンジジュースが1L生産されてから消費されるまでには1018Lの水が必要になります。
下の図は、日本を含めたG7諸国における、1人当たりのウォーターフットプリントと、国内産の水と輸入している水の割合を%で表したものです。
ここからもわかるように、G7のような先進国でも、水を他国に依存していることがわかります。
バーチャルウォーターのページでも述べましたが、このような国々は作物や畜産物を他国から輸入しています。
表面的には水不足と無関係に思われますが、他国との貿易に依存している私たちにとっては図不足という問題はとても深く関わっており、解決しなくてはなりません。
子供の死亡率は栄養不足、感染症、医療の不備など、さまざまな要素が絡み合っていますが、飲み水との関係が非常に深いことがわかります。
水問題は、食糧生産に支障をきたし、また汚水による病気で労働力の低下を招くなど、開発の大きな障害となっています。
参考文献
造水促進センター 事業のご案内 海水淡水化
参照:2023.10.15
世界の水不足問題とは? | business leaders
square wisdom
参照:2023.10.15
環境省 図で見る環境白書 第4章
水の星地球-美しい水を将来へ-
参照:2023.10.15
環境省_virtual water
参照:2023.10.15