まみずピア
まみずピア
目次
- 福岡地区水道企業団海水淡水化センター(まみずピア)について
- まみずピアの海水淡水化の仕組み
- 濃縮水の処理問題
- 最後に
- 参考文献
福岡地区水道企業団海水淡水化センター(まみずピア)について
ここでは今回取材を行ったまみずピアについて説明します!
- 建設の背景
- 海水淡水化センターの概要
福岡都市圏では、筑後川しか水資源を得られる河川がないため、筑後川から安定給水の確保に頼ってきましたが、年々の人口増加と少雨傾向によってたびたび渇水が発生していました。
水需要が急速に増す一方で水供給の基本であるダムは,建設適地の減少や水源地対策の諸問題等により建設がますます長期化する傾向にあり、この需要に十分に対応することが困難です。
そこで、筑後川水系に多くの水を依存する福岡都市圏の自助努力の一環として「まみずピア」の建設事業が開始されました。
福岡地区水道企業団は主に牛頸浄水場、水質センター、海水淡水化センター(まみずピア)の4つで構成されていおり、福岡都市圏の約4割の水を供給しています。
漏水率はたった2.0%と世界トップレベルにあります。
まみずピアは日本で最大のプラントです。生産水量は最大50,000 m3/日 にも及びます。エネルギー効率の向上、濃縮水の処理など、大規模な海水淡水化プラントを運用し ていくノウハウを持っているだけでなく、地域に貢献する活動も行っています。
まみずピアの海水淡水化の仕組み
まみずピアでは、このホームページの「海水淡水化技術とは」で紹介した4つの方法の内、「逆浸透法」を採用しています。
- 浸透取水
- 浸透取水方式のメリット
- 逆浸透による脱塩
- 水質調整
- 浄水場の浄水と混合
- 浸透取水
- 浸透取水方式のメリット
- 安全性 海底の下に構造物があるので漁業や船の航行の妨げにならず、強い波による構造物への被害も避けられるなど、安全性が高められます。
- 水質の安定 海底の砂の層がフィルターの役割を果たすので、ゴミや不純物が少なく水質が安定します。
- 海洋生物の影響 魚の卵や海藻などを取水管に吸い込むこともないので、海洋生物の生態系など環境への影響も抑えることができます。
- 維持管理 取水管の中に付着するフジツボやイガイの卵なども砂の層でろ過されるので、管内の清掃作業が軽減でき、維持管理においてもコストダウンができます。
- 詰まり改善 波が寄せたり引いたりする力によっても海底の砂が動き、取水管の目詰りの原因となるゴミを取り除いてくれます。
- 逆浸透による脱塩
- 水質調整(海水淡水化のテーマから外れるので簡単に述べます。)
- 顕微鏡
- 細菌検査
- 官能試験
- pH測定
- ガスクロマトグラフ質量分析計
- 誘導結合プラズマ質量分析計
- 液体クロマトグラフ質量分析計
- 自動固相抽出装置
- 浄水場の浄水と混合
海水を取水するための取水施設には、新技術の「浸透取水方式」を導入しています。
詳しくはこちらから確認ができます。
まみずピアの浸透取水方式は砂ろ過の効果を十分にするために砂ろ過を通過する海水の速さを1日6メートル程度(時速25cm)に設計しています。
5万立方メートルの淡水化のためには約10万立方メートルの海水を取水する必要があるため、上記の砂ろ過層の設計速度を満足させようとした結果、砂ろ過層は海底に2万
平方メートルも広がっています。
浸透取水方式によって取水された海水は、「逆浸透法」を使って脱塩され、淡水になります。
逆浸透法の仕組みについてはこちらのページをご覧ください。
まみずピアの逆浸透システムでは、従来は約40%だった淡水化率を約60%程度まで向上することができる高圧浸透膜を使用しています。さらに、生産された淡水から、残った微小な塩分を取り除くために低圧浸透膜も併用することで、より高い水質の水を供給しています。
食品の衛生管理の方法として確立・運用されているHACCP(ハサップ)をもとにした水安全計画を運用しています。
これらで検査を行い、安全で安心な水質かどうかを判断しています。
海水淡水化をすると塩分といっしょにミネラル分も除去されてしまいます。
このため、混合施設では浄水場できれいになった河川水(通常の水道水)とほぼ同量で混合することで、通常の水道水に近いミネラル濃度となるようにしています。
濃縮水の処理問題
まみずピアでは、濃縮水に下水処理水を混ぜ合わせるというやり方で濃縮水の処理問題を解決していました!
ここでは、まみずピアが行っている濃縮水の処理方法を、取材で教えていただいたことも交えて説明していきます!
まみずピアでは、濃縮水に下水処理水を混ぜ合わせ、塩分濃度を落とし、放流することで環境や生物への影響に配慮しています。
また、まみずピアでは玄界灘
のきれいな海水を淡水化する過程で生じた濃縮水なので、濃縮水も比較的きれいな状態になっています。
これを博多湾に放流しているので博多湾の浄化に繋がっていて、実際に博多湾の漁業関係者の方が水質が良くなったと語っているそうです。
また、まみずピアではこの濃縮水を利用して以下のような発電方式の実用化を発表しています。
- 浸透圧発電
- 発電システムの概略
- 濃縮海水と下水処理水を「浸透膜」で隔てると「浸透圧」が発生
- 塩分濃度の薄い「下水処理水」から濃い「濃縮海水側」へ「水が移動」
- 水が移動した先の「濃縮海水側では高圧力」がかかっていることで、移動した水の「運動エネルギーが一気に上昇」する。
- 元々の濃縮海水に「移動してエネルギーを獲得した水」が加わり、勢いよく水車を回して発電する。
- 自然の力を用いているのでCO2が全く発生しない
- 排水×排水の未利用資源から生まれるエネルギー資源
- 天候などに左右されず実稼働率90%(太陽光発電の実稼働率は10〜30%)
- 地球上の水の 約97.5%である海水を使うことができる
浸透圧発電とは、海水と淡水間との浸透圧差を電力に変換する発電方式です。
例 | 浸透膜 | 薄い | 濃い |
---|---|---|---|
ナメクジに塩をかけると縮む | ナメクジの表面 | 体内 | 塩 |
植物が土から水を吸収する | 植物の根の表皮 | 土中 | 植物の中 |
赤丸:海水淡水化センター 「まみずピア」 から排出される濃縮水
青丸:「和白水処理センター」 から排出される下水処理水
前準備:移動する水により高いエネルギーを与えて発電効率を高めるために
「濃縮海水は高圧力」「下水処理水は低圧力」にする。
浸透圧発電のすごいところ
まみずピアのさらなるチャレンジ
浸透圧発電では薄い溶液と濃い溶液の濃度差が大きい方が浸透圧が強くかかり、効率が上がります。
まみずピアでは将来的に濃縮水より濃度の薄い普通の海水を用いた浸透圧発電を行おうとしているそうです。
発電施設の概要
プラント施設の詳細
発電電力:110kW
年間発電量:88万kWh (見込み)
110kW * 24時間 * 365日 * 91%(稼働率)
濃縮海水使用量:10,000m3/日
下水処理水使用量:9,200m3/日
R5~6プラント建設 ⇒ R7稼働予定
総建設費用:約7億円
検証内容
まみずピアで実稼働しつつ
次のことを検証して、システムを最適化
・ 実際の発電量、発電効率の検証
・ 水質変動(温度等)を加味した性能確認
など
最後に
最後まで読んでくださりありがとうございます。
この度はメールにてまみずピアに取材をさせていただきました。
福岡県外からの学校の質問にも関わらず、丁寧かつ的確に答えていただきました。
まみずピアは日本最大の海水淡水化施設であり、濃縮水と下水処理水を混ぜ合わせて排出する日本初の排水システムを保有するだけでなく、これまた日本初である浸透圧発電の大規
模実施も今後予定されています。また、海底浸透取水方式を用いた取水による設備コストの削減と環境への配慮、高圧低圧RO膜を用いた水質管理、などと世界トップレベルの技術と ノウハウを持っています。
他にも地域への活動や濃縮水、使用済みRO膜の有償譲渡なども行っています。省エネルギー対策のために、海水淡水化プラントだけでなく、建物の断熱や照明、空調にも様々な省エ
ネルギー技術が導入されている等、地域社会や地球環境に配慮した、こだわりのある施設でした!
参考文献
福岡地区水道企業団
※リンクのない画像は福岡地区水道企業団のものです。