世界の海水淡水化技術
はじめに
ここでは世界の海水淡水化について説明します!
日本の海水淡水化技術は世界単位で見てもかなり進んでいるものとなっています。
そして、特に中東地域では海水淡水化プラント建設が多く行われており、世界的にRO膜市場を広げています。
また、取材のページでは世界的にシェア率が高いRO膜を作成している会社、東レ株式会社に取材させていただいた内容をまとめています!ぜひご覧ください!
目次
- 世界の海水淡水化事業の現状
- 世界から見た日本の海水淡水化技術
- 世界の海水淡水化技術
- サウジアラビア
- カタール
- 参考文献
世界の海水淡水化事業の現状
- 市場規模
見てわかる通り市場規模はどんどん増加しています。
市場の概要海水淡水化装置の世界市場は、2020年に69億米ドル規模に達しました。
2021年から2030年にかけて市場は9.2%のCAGRで成長し、2030年には166億米ドル規模に達すると予測されています。
また、資料の通り、海水淡水化施設は中東に多いことが分かります。
水不足の地域があるアフリカは海水淡水化施設の建設がなかなか進んでいないことも分かります。
またこの表を見ると中東では海水淡水化施設が多い分環境への悪影響が多いことが分かります。
ただ、中東の海水淡水化施設数の割合より中東の濃縮水の排出量割合が大きいことから中東では濃縮水の処理が適切に行われていません。
また現在世界で稼働している1万6000ヶ所以上の淡水化プラントからは、当初の見積もりよりも50%以上多い1億4200万m3の濃縮水が発生しており、環境への影響が懸念されています。
アフリカなどの水が足りない地域にコストなどの理由からこの海水淡水化技術がまだ浸透しておらず、本当に水が必要な地域に淡水が届いていません。
世界から見た日本の海水淡水化技術
海水淡水化向けのRO膜市場は、日本メーカーが世界市場の60%以上を占めています。
また、前処理で使われる精密除濁膜(MF、UF膜)市場も日本メーカーが40%以上を占めています。
世界の水ビジネスの市場規模は2030年には100兆円規模に達すると予測されています。
しかし、海水淡水化技術の市場規模は8,800億円(2019年)で、その中で日本企業の売り上げは220億円(占有率2.49%)にとどまっています。
世界の海水淡水化技術
- サウジアラビア
- カタール
サウジアラビアにおける海水淡水化の歴史は1900年代初頭にまでさかのぼります。
現在のサウジアラビアであるジェッダの水需要の増大に対応するために民間企業が蒸留装置を設置したところから始まりました。
サウジアラビアは、世界トップクラスの原油生産国である一方で、下の図のように降水量が少なく、国土に川が無いため、淡水資源が乏しいです。
そのため、国土の慢性的な水不足が問題になっています。下の図は、サウジアラビアの首都、リヤドの降水量や最高気温、最低気温、またそれらを東京のデータと比べたものです。
そのためサウジアラビアは、都市部に供給する水の大部分を海水淡水化に依存しています。現在、サウジアラビアは世界のプラントで作られた淡水、1000億Lの5分の1を輸入して利用しています。
サウジアラビアも、この水不足に対し海水淡水化を行っているところもありますが、現状サウジアラビアで主流に利用されている蒸発法では、莫大な海水を熱するために莫大な量の化石燃料を燃やす必要があり、特に地球温暖化の観点にて問題視されています。
サウジアラビアでは世界的に進む海水淡水化による地球温暖化の促進を和らげるため、"ソーラードームプロジェクト“というものが進んでいます。
イギリスの“ソーラーウォーター“という会社と契約し、現在、太陽光エネルギーを利用した海水淡水化プラントとして世界最大のものがあります。
”ソーラーウォーター”のCEOはCNNのインタビューの際、プラントの形を「ドームに覆われ、地中に埋められた鉄製のボール」と表言しており、下の図のようなものだと言っていました。
これは海水淡水化プラントの上にソーラーパネルを設置し太陽エネルギーを使うというものです。
再生可能エネルギーを使うことで、力を生むために化石燃料を燃やす、という地球温暖化の元となる行為をせずに済みます。
地球に優しい海水淡水化をこれからどんどん広げていかなければなりません。
次にカタールの海水淡水化について紹介します。
カタールと聞くと2022年サッカーワールドカップの印象が強い国かと思います。
カタールは年間を通して降水量の少ない乾燥地域です。秋田県ほどの大きさのカタールには首都ドーハを中心に約280万人もの人々が住んでおり、またワールドカップの際には海外から沢山のサポーターや観光客が訪れました。
この裏では、日本の企業達の努力が深く関わっていました。ここからは、乾燥地域、カタールの、日本と密接した海水淡水化について紹介していきます。
水の調達源は海なので、カタールの沿岸部にはたくさんの海水淡水化プラントが存在しています。
そのうち、ドーハ近郊にある国内最大級のプラントは、日本の「日立造船」により、2015年と2017〜にわけて2つのプラントが作られました。
2つのプラントは、カタール国内で1日に利用されている水の量の半分以上を補っているといいます。
また、そこで作った海水を運ぶ役割としても日本の企業「クボタ」が活躍していました。
プラントで作られた水を運ぶ、配送管とポンプの約3分の2を「クボタ」が設置しました。
このプロジェクトで、ドーハでの貯水量が、3倍以上にもなり、2022年のワールドカップも大成功に終わりました。
このように、日本の海水淡水化技術は世界的に評価されており、高いシェア率を誇っているのです。
参考文献
新電力ネット 水不足のサウジアラビアでの海水淡水化
参照日:2023.10.18
躍進するサウジアラビアの海水淡水化事業とその歴史
参照日:2023.10.19
fab cross for エンジニア | サウジの未来都市建設プロジェクト
参照日:2023.10.23
海水を淡水化するカタール サッカーの祭典を縁の下で支えた日本企業
参照日:2023.11.19