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自動採血ロボット




医療従事者の人手不足

医療従事者の人手不足は現在の日本では深刻な問題であり、その中でも特に看護師の不足が顕著です。下記グラフを見てわかるように看護師の就業者数は緩やかに増加していますが、就業者数が増えても人手不足が解消されていません。理由としてはまず、看護師の需要の増加です。高齢化や医療の高度化により、医療サービスの需要が増しており、看護師の数が追いついていません。さらに、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響で、医療現場の負担が一時的に増大し、感染予防や対応に追われることがありました。加えて、夜勤などの不規則な勤務体制や過酷な労働環境が影響し、看護師の離職率は高まっています。




(政府統計の総合窓口「衛生行政報告例 / 令和4年度衛生行政報告例 統計表 隔年報」をもとに作成)




人口が多い都市部に看護師が集中し、人口の少ない地方では人手不足が深刻化しています。



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(政府統計の総合窓口「衛生行政報告例 / 令和4年度衛生行政報告例 統計表 隔年報」をもとに作成)

病院での患者様の待ち時間

2020年に新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミック 感染症や伝染病が広範囲で流行し、
たくさんの感染者や患者が出ること
のため、多くの方が外出自粛や病院やクリニックに行くことを避ける人が増え、外来患者数は減少しました。しかし、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響は大きく、集中治療室(ICU)の病床が急激に不足し、人工呼吸器や酸素の供給が十分に行き届かない状況が続きました。その結果、病院は新型コロナウイルス(COVID-19)の対応に追われ、通常の診療が制限されるなど、患者の受け入れに影響が出ました。このような状況では、患者の待ち時間が長くなるだけでなく、十分な医療を受けることができない場合もあるため、さらに医療機関の運営を効率化し、スマート化を進めることが必要になります。



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(政府統計の総合窓口「1日平均外来患者数,年次別」をもとに作成)



病院でのスマート化を図るひとつの要因として、外来の待ち時間が挙げられます。 待ち時間については、15分以上1時間未満の方が多いですが、病院によっては予約しても1時間以上待つこともあるようです。具合が悪くて病院へ受診しているため、体の負担がかからないように配慮していく必要性があります。病院では、引き続き感染対策を維持しながら、効率的な診療体制を整えるためにスマート化が求められています。



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(政府統計の総合窓口「受療行動調査」をもとに作成)

医療行為のひとつとして、採血が抱える課題と解決

採血は看護師、医師、臨床検査技師などの医療従事者が行っています。 採血には医療技術の手順を学び、実際に実践するために積み重ねの経験が必要なため、何度も繰り返しの練習が必要になります。患者様を間違えて採血してしてしまうリスクや、採血後に医療従事者が誤って自分の手に針を刺してしまう針刺し事故などの課題もあり、患者様にとっても医療従事者にとっても安全面に不安が残ります。この課題を解決する一つのツールとして、患者様にとっても医療従事者にとってもより安全で安心な医療技術、待ち時間短縮にも繋がる自動採血ロボットの開発が進められています。

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弘前大学理工学部 機械科学科 佐川先生に
『自動採血ロボット』について取材させていただきました

自動採血ロボット、救急車のアクティブ制御ベッド、農業用アシストスーツなど、モーションキャプチャーによる動作解析を活用して、多くの分野でさまざまな装置が開発されています。



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(引用元:国立大学法人弘前大学東京事務所「自動採血ロボットのプロトタイプ開発」弘前大学大学院理工学研究科)





動作解析5.0チーム

先生が開発されている、モーションキャプチャーを活用した「自動採血ロボット」に興味を持ちました

動作解析5.0チーム

モーションキャプチャーはどのように医療面で利用されているのですか?

佐川先生

いろいろあります。 よくあるのは、体の関節の角度を調べるのに利用される例です。 例えば、リハビリの施術前と後の足、膝、腕などの角度をモーションキャプチャーで調べることで、リハビリによって怪我などがどれくらい改善されたかを調べることができます。 他には、モーションキャプチャーシステムと体重計のような重さを測る機械を併用した例です。 これらを併用することで、歩いたときなどに腰や脚にどれくらいの力が加わったかがわかるので、そこから筋力や運動能力を計測できます。

動作解析5.0チーム

先生が研究されている自動採血ロボットのメリットは、どのような点が挙げられますか?

佐川先生

患者様にとってのメリットとしては、ロボットは基本的にミスをしないため、採血に失敗して患者様が何度も痛い思いをするということがなくなるというのが挙げられます。 そして採血の効率がよくなるので、患者様の待ち時間が減るというのも挙げられます。 医療従事者にとってのメリットは、採血を医療従事者に担わせる必要がなくなるので、現在問題になってる医療分野の人手不足の解消につながります。そして人手不足が引き起こす原因のひとつとして、針刺し事故という、医療従事者が誤って患者様に利用した針を自分に刺してしまい、病気に感染してしまうといった事故を防ぐことができます。

動作解析5.0チーム

先生が研究されている自動採血ロボットは、子供の細い血管や、高齢者で採血する場合に逃げやすい血管を持つ方、また透析患者様のような太い血管を持つ方にも利用可能なのでしょうか?

佐川先生

今の時点では、子供が持つ細い血管や高齢者で採血する際に逃げやすい血管は自動採血ロボットの対象外にしようと考えています。 逆に、太くしっかりとしか血管を持つ患者様は自動採血ロボットに任せようと考えているため、透析患者様のような動脈と静脈をつないでいる太い血管も自動採血ロボットに任せられると考えています。

動作解析5.0チーム

もし高齢者などが持つ細い血管も自動採血ロボットに採血させるとなると、一般的な血管への自動採血ロボットとは別のロボットとして開発したほうが良いでしょうか?

佐川先生

対象によってロボットをわざわざ分けるのは、あまりメリットがないのかなと考えています。最終的には一つのロボットで、すべての人を対象に採血できればいいなと思ってますが、そのためには今研究してる自動採血ロボットに、高齢者などの細い血管を採血するための機能を付け加えることが必要になってくると思います。その機能は、熟練の看護師のように、採血するときに腕の皮膚を手首の方に引っ張る機能など、やり方はわかっているんですけど、まずは一般的な血管の採血の自動化を進めたいので、その機能の研究は先になってくると思います。

動作解析5.0チーム

現状、自動採血ロボットが抱える問題などはありますか?

佐川先生

実際に採血担当をしている看護師に「どのような機能があれば自動採血ロボットを利用しますか」と聞き取り調査をした結果、安全に針を刺すといった条件はもちろん、それ以外に刺した後の針を自動で廃棄してくれる機能、また針をロボットに自動で付け外しする機能が備わっていないと、人間がやるのと効率があまり変わらなくなってしまうため、利用することはないと言われました。そのため現在は、針の自動交換機能をどのように実現するかの開発に取り組んでいます。他の問題点としては、費用が高いという点や、自動採血ロボットに対する患者様の恐怖心も挙げられます。

動作解析5.0チーム

この自動採血ロボットを制作するのにどれくらいの費用がかかりますか?

佐川先生

どれくらいの機能を持たせるかにもよりますが、500〜600万円くらいの費用がかかるとしています。これはパートで働く看護師さんの2〜3年分の給料で元が取れる金額なので、ロボットの活躍を考えると妥当な金額かなと我々は考えています。 しかし、ヨーロッパなどでは実用化の手前までいっているものもあって、そこまでの機能を持つとなると0がもう一つつくくらいの金額にはなってしまっていて、やはり費用が高くなってしまい、費用は問題点になってくるなと考えています。

動作解析5.0チーム

どのようにしたら自動採血ロボットへの患者の恐怖心がなくなると考えていますか?

佐川先生

ロボット自体が怖いのであれば、ロボットが針を刺すの瞬間を見えないようにする工夫や、装置自体を患者様の視界に入らないように何かで覆うなどの配慮が必要です。それでもロボットへの不信感から怖いのであれば、やはり信頼を得ないといけないので、様々なケースで何度も実験を繰り返して、失敗を潰していき、120%大丈夫だという確信を示してあげれば、恐怖心はなくなるのかなと考えています。

動作解析5.0チーム

最後に私達や当サイトを見てくれた方々にメッセージをくださると嬉しいです!

佐川先生

日本の医療技術はなかなか実用化されにくいと言われています。それは認可という作業が遅いのが原因です。それは優秀な技術者があまり医療分野に入ってきてくれないのが理由かなと考えています。優秀な人は大半医学部に入ってしまって、あまり工学系には入らないのが現状です。なので、このような人が工学系に行って、ものづくりに携わってくれると、良い装置の開発が進み、実用化も進んでいくのかなと思います。実際にアメリカでは優秀な人がどんどんものづくりに携わり、会社を立ち上げたり、薬を作ったりして、そこでできたものが認可されて実用化されるというのが進んでいます。なので、ぜひ物理数学に興味がある人は、どんどんものづくりの分野にも進んでいただいて、こういった医療分野に貢献してくださるととても嬉しいです。



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(チームメンバーが撮影)

まとめ

今回のオンライン取材を通じて、医療機器の開発は深刻化している医療現場の人手不足の解決に大きく貢献できるのではないかと思いました。医療装置の導入が病院のスマート化に繋がり、医療従事者は業務を効率よくこなすことができ、その結果、患者様と向き合う時間が増えるといいなと思います。 また、ロボットが自分を採血することを想像すると、頭の中で描いている未来の医療シーンが現実になる様子が目に浮かんできました。チームメンバーみんなで佐川先生が開発された自動採血ロボットの動画を見ながらロボットに採血してもらうことにワクワクしました。実用化されるためにはどうしたらいいかと話し合いもしました。これからも医療の技術の時代と共に変化していくと思いますが、正確で安全な医療装置が提供され実用化されてほしいと思います。患者様や医療従事者にとって快適な環境が実用化するには多くの課題があるかと思いますが、自動採血ロボットに限らず、モーションキャプチャーを活用した動作解析技術が医療分野でのさらなる発展に貢献する可能性があると感じ、自分たちも医療装置の研究に対する興味が高まり、もっと学んでいきたいと思いました。



参考文献

参照日:2024.8.22

国立大学法人弘前大学東京事務所 弘前大学大学院理工学研究科
自動採血ロボットのプロトタイプ開発


参照日:2024.8.25

厚生労働省「担い手不足の克服に向けて


参照日:2024.8.25

コロナ禍での職場のメンタルヘルス


参照日:2024.8.27

看護師の人数 都道府県ランキング


参照日:2024.8.27

外来採血は一人一人に真剣勝負~中央処置室ナースのプロフェッショナリズム〜


参照日:2024.8.28

厚生労働省「診察までの待ち時間・診察時間(外来患者のみ)


参照日:2024.8.28

「病院の待ち時間はどうしてこんなに長いの?」病院の待ち時間が長い理由と時間を節約する方法


参照日:2024.8.28

医療業界の人手不足の原因は? データで見る現状と対策










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