ホーム  >  最新の研究・活用 >  スキルトランスファー(技術伝承)



スキルトランスファー(技術伝承)




スキルトランスファーとは

スキルトランスファーとは、 今まで培ってきたスキルや知識を人から人へと引き継ぐ際に重要な方法、いわゆる技術伝承です。新しいアイディアが生まれるきっかけや、残していきたい技術の保存や分析、学習トレーニングまで多岐にわたり期待されています。 しかし、スキルトランスファーにはいくつかの課題もあり、特定の環境に限定されてしまったり、スキルが完全には適応できない場合もあるので、たくさんのデータを分析して、保存を続けていくことが必要です。



画像をクリックすると拡大します

日本のスキルトランスファーの重要性

人口減少
日本では、人口が毎年減少しています。下記グラフを見てわかるように少子高齢化が進んでいます。そのため伝統工芸士や技術者の高齢化も進んでいて、長年培った技術や知識は少子化もあり、技術を後世に伝えることが難しくなってきています。実際に職人さんの手技を実際に見て学び何度も練習していくことは悪いことでありませんが、覚えて実際に使えるようになる期間を少しでも短くすることで、新しいものを生まれる可能性もでてきます。


画像をクリックすると拡大します



(引用元:厚生労働省)




伝統技術や熟練した技術継承の必要性
日本には伝統工芸や熟練した技術がたくさんあります。この技術を引き継ぐことができれば後世に技術の保存と伝承に繋がります。一つの例として、大工の仕事を想像してみてください。大工の技術には木材の選定から始まって鉋を使って加工、伝統的な手法など、どの作業においても長い年月をかけて実際に見て学び、それから何度も練習し、独り立ちしていきます。しかし、下記グラフを見てわかるように、年々大工の就業者数は減少傾向にあり熟練者の高齢化も進んでいます。せっかくの技術を残していきたいと思っても後世に伝承されない可能性がでてきてしまうため、現在スキルトランスファーの技術や触った感覚を保存する装置の開発が進められています。この現象は大工に限らず、他の多くの技術者や日本古来の伝統工芸の分野でも同じことが言えます。


画像をクリックすると拡大します

(国土交通省「大工就業者の推移」をもとに作成)

(政府統計の総合窓口「国勢調査」をもとに作成)





芝浦工業大学システム理工学部 桑原先生に
スキルトランスファー(技術伝承)について、取材させていただきました

画像をクリックすると拡大します


(チームメンバーが撮影)

芝浦工業大学システム理工学部実世界情報メカトロニクス研究室では、人間の動作や感覚を機械に学習させ、そのデータを様々な用途に使用していくハプティクス ハプティクスとは、力や振動、動き、
ユーザーに「実際に物に触れている感覚」を提供する、触覚フィードバック技術のこと
を応用したスキルトランスファや、人の感覚を遠隔で通信する遠隔操作などを研究されています。
「人間の動作解析、ロボットを使って動きを記録、活用」するのがメインです。



遠隔操作において感覚を伝える機械の開発をされています。
こちらの機械では、左のフォロワがボールで押された時の感覚を、真ん中にある機械を通じてデータとして感覚を送り、右のリーダに伝えています。
この研究では、遠隔手術においてカメラでは捉えきれない微細な触覚を伝える技術と、複数の感覚を統合して一つのプロセスにまとめる技術の組み合わせが、非常に興味深い発展領域となっています。



画像をクリックすると拡大します



(チームメンバーが撮影)



体験しました

実際に体験させていただきました
体験ページはこちらから



右話
動作解析5.0チーム

今後、動作解析ツールを活用することで、どのような場面で新たな可能性が広がると考えていますか?特に、感覚統合とスキルトランスファーの概念を組み合わせた場合に、どのような具体的な応用例が想定されるかについて教えてください。

桑原先生

一概に言えないですが、本当に様々な場所に活用できると思います。
たとえば、寿司職人が板前になるためには、大将の技を見て学ぶのが一般的ですけど、これって結構時間がかかって非効率ですよね。何年もかけて技術を習得する間に、新しいネタを考えたり、他のスキルを身につける時間がどうしても限られてしまいます。 それに、人間っていろいろな制約があるんですよね。狭い空間や災害地みたいな特定の場所には行きづらいし、物理的な制約もあって。特に作業の現場では、職人の微妙な感覚を他の人に伝えるのが非常に難しいです。 このような技術を活用することで、多くの身体的制約を克服し、より多くの人が高度な技術を効率的に習得できるようになると考えられます。

動作解析5.0チーム

今後どのような形でこの技術を進歩させていきたいですか?

桑原先生

そうですね。作業の高速化が実現できればいいと思っています。現在の技術が1の速度で進行しているのを、2や3に引き上げることを目指しています。そのためには、感覚を伝えるロボットやシステムが必要です。たとえば、仮想空間でリアルな触感を再現するシステムや、ロボットによる訓練支援も視野に入れています。 将来的には、感覚データと画像データを統合することも必要だと思います。

動作解析5.0チーム

教育現場ではどのように活かせますか?

桑原先生

たとえば、医学部生に手術の縫合などスキルや感覚を効率的に伝えられる方法を開発したいと考えています。また、この技術はスポーツにも応用可能です。最終的には、テーラーメイドで個別対応するサポートを提供し、個々に最適な方法を伝えられるようにしたいと思っています。

動作解析5.0チーム

個人的な質問となってしまうのですが、なぜこの動作解析という技術に興味を持ったのですか?

桑原先生

高校時代には、自分が何を研究したいのかがはっきりしていなかったんです。大学に入った後に自分の指導教員となる教授から遠隔操作技術の話を聞き、とても感銘を受けました。それから、この技術をどう活かせるか考えたときに、「スキルハプティクス」が浮かんできて、人間の行動や感覚の情報を取得する方法があるんじゃないかと思いました。 そこで、「ものづくり」の分野で働くのが一番だと考えて、その企業に入社しました。実際に働いてみると、今の職人たちがいなくなると、その貴重な技術が消えてしまうという危機感を強く感じました。少子高齢化が進んでいる今、この技術をどうやって保存し、受け継いでいくかが重要だと感じました。 そのためにスキルトランスファー技術の研究を始めて、今は芝浦工業大学で教授としてこの技術を専門的に研究しています。

画像をクリックすると拡大します


(チームメンバーが撮影)

まとめ

対面にて直接取材させていただきました。実際に開発されている装置を体験させていただいたり、大学の学生の方の研究も聞くお時間をいただけました。直接お話を伺えるのは私たちにとってとても貴重な時間になりました。人間はそれぞれの独自の感覚を持ち、スキルの上達には時間がかかるものですが、動作解析や感覚統合の技術を駆使することで、技術の習得時間を大幅に短縮し、応用範囲を広げられるのは本当に素晴らしいと思いました。
また、日本の伝統技術が衰退している現状に対しても、この技術が大いに貢献できると感じました。
Society5.0の未来社会を考えると、動作解析をデータ化し、さまざまな分野や場所で応用することで、多くの人が効率的にスキルを習得できる未来が見えてきます。
私たち学生も、この技術の進展に興味を持ち、自分たちが創り出す未来社会の一翼を担うために、積極的に学び続けることが大切だと感じました。






PAGE TOP