画像をクリックすると拡大します
モーションキャプチャーの歴史は、実際には古代ギリシャの哲学者アリストテレスの時代にまで遡ることができます。
アリストテレスから始まるモーションキャプチャーの歴史を、主要な発展を交えて説明します。
画像をクリックすると拡大します
アリストテレスの先駆的な考察(紀元前4世紀)
〇アリストテレスの実験的考案〇
古代ギリシャの哲学者アリストテレスアリストテレスは、哲学を中心に
政治学、倫理学、心理学などの
文科系学問や、動物学、植物学、
生物学、気象学、天文学、自然学などの
自然科学を統合し、論理学を
方法論として確立しました。
「万学の祖」として今も高く
評価されています。は、動物の解剖や運動について多くの著作を残しました。その中で、彼は『動物部分論』動物の体の構造や各部位の機能を詳細に研究する領域
『動物運動論』動物がどのように動くか、
その運動のメカニズムを探る分野『動物進行論』動物の進化や発展の過程を研究し、どのように生物が変化してきたかを考察といった著作を通じて、人間の動きに関する考察を行いました。彼は、インクを浸した植物の葦を頭につけた人間が壁の横を歩くと、頭の動きがジグザグに描かれることを示唆しました。
画像をクリックすると拡大します
これは、身体の上下運動が頭に影響を与えることを示す非常に基本的な方法であり、ある意味でモーションキャプチャーの原型とも言えます。しかし、アリストテレスが生きていた時代には、実際の実験よりも理論的な探求が重視されていたため、この実験は実際には行われませんでした。
ボレッリの歩行解析(17世紀)
〇ジョヴァンニ・アルフォンソ・ボレッリの実験〇
アリストテレスの約2千年後、イタリアの科学者ジョヴァンニ・アルフォンソ・ボレッリイタリアの物理学者・生物学者で、
動物の運動を力学的に分析し、
骨と筋肉の相互作用を明らかに
しました。彼は運動のメカニズムを物理法則に基づいて考察し、運動学と
生物力学の基礎を築きました。が、歩行解析における最初の実験を行ったとされています。ボレッリは、天文学の父と呼ばれるガリレオ・ガリレイガリレオ・ガリレイは、イタリアの
自然哲学者、天文学者、数学者で、
近代科学の手法を確立し、「近代科学の父」と呼ばれています。
また、天文学における業績から「天文学の父」とも名付けられています。の生徒の一人であり、人間の歩行を分析し、その運動を科学的に捉えようとしました。彼は力学の視点から、筋肉の力と骨格の運動の関係を探求し、動作の原理を解明することを目指しました。このような歩行解析は、後のモーションキャプチャー技術の基盤となりました。
初期のアニメーションと動作分析(19世紀)
〇エドワード・マイブリッジとエティエンヌ=ジュール・マレー〇
19世紀に入ると、イギリスの写真家エドワード・マイブリッジとフランスの生理学者エティエンヌ=ジュール・マレーエティエンヌ=ジュール・マレーは、
19世紀のフランスの物理学者で、
特に熱力学の分野で
重要な貢献をしました。熱の伝導や
気体の性質に関する研究を行い、
マレーの法則を提唱しました。が動作分析の分野で重要な貢献をしました。エドワード・マイブリッジは、高速度カメラを使用して動物や人間の動きを連続的に撮影し、動作の各瞬間を詳細に記録しました。1878年には12台のカメラを並べ、疾走する馬の動きを連続撮影することで、「前足と後ろ足がそれぞれ前後に伸びる」とされていた従来の理解を覆す結果を示し、大きな反響を呼びました。
画像をクリックすると拡大します
さらに、マイブリッジはズープラキシスコープ連続的な画像を回転させることで動きを感じさせる道具という最初の映画プロジェクターを発明し、一連の画像を連続して表示する技術を確立しました。この技術は後の映画やアニメーション技術の基礎となり、動きの視覚的理解を深める重要なステップとなりました。数年後、エティエンヌ=ジュール・マレーエティエンヌ=ジュール・マレーは、
19世紀のフランスの物理学者で、
特に熱力学の分野で
重要な貢献をしました。熱の伝導や
気体の性質に関する研究を行い、
マレーの法則を提唱しました。は、1秒間に12枚の連続撮影が可能なクロノグラフ銃という単一のカメラを開発し、マイブリッジのマルチカメラシステムを進化させました。マレーはこのカメラを用いて、人間の歩行や動物の運動、鳥や昆虫の飛行などを詳細に追跡しました。
機械式モーションキャプチャーの発展(20世紀)
〇初期の技術的な進展〇
20世紀に入ると、モーションキャプチャー技術は主に機械式の手法で進化を遂げました。この時期の技術では、被写体
写真に写される物体のこと
にセンサーやマーカーを取り付け、それらの動きを精密に記録する方法が開発されました。センサーやマーカーは、被写体
写真に写される物体のこと
の動きを三次元的に追跡するための重要な要素であり、これによって複雑な動作を高精度でデジタルデータとしてキャプチャすることが可能となりました。
画像をクリックすると拡大します
映画やアニメーションの制作においても、この技術が徐々に取り入れられるようになり、キャラクターやオブジェクトの動きに対するリアリティが向上しました。特に、アクションシーンや動きの激しいシーンでのリアルな表現が求められるようになり、モーションキャプチャーはその要求に応えるための重要なツールとなりました。技術の進歩により、モーションキャプチャーは単なる実験的な手法から、映画やアニメーション制作の不可欠な要素へと成長していきました。
光学式モーションキャプチャーの導入(1980年代)
〇カメラを使用したトラッキング技術の進化〇
1980年代には、光学式モーションキャプチャー技術が急速に発展しました。この技術では、被写体
写真に写される物体のこと
に反射素材で作られたマーカーを装着し、複数のカメラを使用してその動きを正確に捉える手法が採用されました。
マーカーは、光を反射してカメラに明確に映るため、動きの追跡が非常に精密になります。複数のカメラが異なる角度から撮影することで、三次元空間での動きを高い精度で再現することが可能となり、デジタルデータとして動きが記録されます。この技術は、映画やゲームの制作において、キャラクターやオブジェクトのリアルな動きを再現するために不可欠なツールとなり、特にアクションシーンや複雑な動作が求められる場面でその威力を発揮しました。光学式モーションキャプチャーは、視覚的なリアリティを追求する制作現場で広く使用され、現在もデジタルエンターテインメントの品質向上に大きく貢献しています。
現代のモーションキャプチャー
〇AIやVRとの融合〇
21世紀に入ると、モーションキャプチャー技術はさらに高度化し、AIや機械学習を取り入れた解析技術が登場しました。これにより、動作データの取得と解析がより正確で自然になり、従来の技術では難しかった細かな動きや微妙なニュアンス
微妙な意味合いや差異のこと
を捉えることが可能となりました。AIアルゴリズム
問題を解決したり目標を達成するための手順や計算方法のこと
や機械学習モデルが、動作データのパターンを学習し、リアルタイムでの修正や最適化を行うことで、動きの精度と自然さが大幅に向上しました。
この進化により、モーションキャプチャーはエンターテインメント業界において、映画やゲームのキャラクターの動きをさらにリアルにするだけでなく、医療分野ではリハビリテーションの効果を分析するツールとしても利用されるようになりました。また、スポーツではアスリートの動作解析やパフォーマンス向上に役立ち、VR/ARではより没入感のある体験を提供するために活用されています。こうした技術の進歩により、モーションキャプチャーは多様な分野での応用が進み、私たちの生活やビジネスにおける新たな可能性を切り拓いています。
モーションキャプチャー技術は、古代ギリシャのアリストテレスによる運動の基本的な考察から始まり、17世紀のジョヴァンニ・アルフォンソ・ボレッリの歩行解析、19世紀のエドワード・マイブリッジとエティエンヌ=ジュール・マレーによる写真技術の革新を経て、21世紀にはAIと機械学習を取り入れた高度な技術へと進化してきました。この技術は、Society5.0の未来社会において、医療分野での精密なリハビリテーションや手術支援、スポーツ分野でのパフォーマンス向上、エンターテインメントでのリアルなキャラクター動作の再現、VR/ARでの没入感のある体験提供、ロボティクスでの自然な動作制御など、多岐にわたる応用が期待されています。モーションキャプチャー技術の進展は、私たちの生活やビジネスに新たな可能性をもたらし、Society5.0の発展を支える重要な役割となる可能性を秘めています。
参照日:2024.8.3
「モーションキャプチャーとは?基本の仕組みと個人でも使えるアプリを徹底解説!」
参照日:2024.8.3
「モーションキャプチャーとは?Qualisysモーションキャプチャーシステムの原理」
参照日:2024.8.3
「運動物体の衝撃力をめぐってーガリレオ・ トリチェッリ・ボレッリ 」
参照日:2024.8.5
「エドワード・マイブリッジ (Eadweard Muybridge) 」
参照日:2024.8.10
参照日:2024.8.10
「VR・MR・AR用センサーとしてモーションキャプチャーを活用 」