医療の現場における輸血について調査するため、社会医療法人社団蛍水会名戸ヶ谷病院の方々に直接お話をうかがうことができました。 ご協力ありがとうございました。
医療の現場
説明と同意
輸血が必要になった患者さんに、輸血同意書に署名をいただきます(インフォームド・コンセント)。
- 輸血療法の必要性
- 使用する血液製剤の種類と量
- 輸血に伴うリスク
- 記録の保管と検体保管
- その他注意点
上記の項目が説明されます。
適合試験
ABO血液型検査・RhD血液型検査
↓
不規則抗体検査
感染症の検査
↓
血液製剤との交差適合試験
患者さんと製剤の照合
- 照合のタイミング
- 受渡時→準備時→輸血実施時
- 照合する項目
- 氏名とID(同姓同名に注意)、血液型、製剤名、製造番号、有効期限、交差適合試験の結果、放射線照射の有無など復唱して行います。
- 照合は輸血開始直前に患者さんのそばで実施します。
輸液方法 ― 輸液セット
そのまま直ちに使用でき、かつ、1回限りの使用で使い捨てます。
例:血小板輸血セット↓
輸血方法 ― 速度
- 成人の場合
- 輸血開始から最初の10分~15分は1ml/分程度、その後は 5ml/分程度の速度で行います。
- 患者さんの状態によっては、急速輸血やゆっくり輸血することがあります。
患者の観察
患者の観察は看護師が行います。
- 輸血前
- 体温、血圧、脈拍を測定します。
- 輸血中
- 輸血開始から5分間、急性反応確認のためにそばで観察します。
- その後も開始から10分、15分、20分が経過した時点で再度体温、血圧、脈拍を測定します。
- 看護師が副作用と考えられる症状を認めた場合、輸血を中止し医師へ報告します。
- そして生食に取り替えて症状に合う薬を投入します。
- 輸血後
- 輸血関連性の障害や細菌感染症の副作用が起こることがあるので、輸血終了後も継続的に観察します。
記録の保存
輸血用血液製剤は特定生物由来製品に該当するので、使用した場合は20年間保存します。
血液製剤の保管
専用の部屋で、自記温度記録計と警報装置がついた輸血用保冷庫で、厳重に管理されています。
- 赤血球+保存液・・・・2~6℃
- 血漿・・・・-20℃
- 血小板・・・・・20~26℃
各輸血製剤は上記の温度で保存されます。
また輸血用保冷気に保管されている製剤の在庫は、A型が4パック、B型が2パック、O型が3パック、AB型が1パックです。
輸血に関するQ&A
型の違う血液を輸血することはありますか?(例:A型の患者さんにA型製剤以外を輸血する)
ここ数年はありませんが、緊急を要する場合は可能性があります。
適合血↓
外国人の場合は出身国によって、不規則抗体で変わってきます。
血液製剤は単独投与が原則ですが、輸血が足りない場合はどうしますか?
医師の指示のもと、2パック3パックと追加していきます。
手術などで大量に血液製剤が必要な場合、事前に自己血輸血用に採血することはありますか?
出血が大量と思われる手術や、緊急を要しない場合、貧血をしないよう期間を設けて採取します。 自己血輸血は患者さんのリスクや負担が少なくなります。
輸血製剤の保存期間はどれぐらいですか?
赤血球製剤は3週間、血漿製剤は6ヶ月間、血小板製剤は4日間保存しています。
輸血製剤は保存期間が過ぎたらどうなりますか?
期限を迎えた製剤は決められた業者に依頼して廃棄します。
病院では、厳重な管理のもと輸血時にミスが起きないよう何重にもチェックを重ねて安全安心な体制が取られています。 また、有限で貴重な血液を「1滴でも無駄にはしない」という意識が浸透されていて、献血者の気持ちも一緒に受け継がれているように感じました。 献血の行き着く先を確認できて、ますます献血が大切だと改めて思いました。