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地球温暖化
地球温暖化は害獣の増加と分布拡大に重大な影響を与えており、農業や生態系に深刻な問題を引き起こしています。
この現象は複数の要因が複雑に絡み合って生じており、その影響は広範囲に及んでいます。
積雪
温暖化などの影響で積雪が減ったことも一因とされています。積雪が少ないとシカの行動範囲が広くなります。かつては冬を乗り越えられないシカもいましたが、雪が少ないと広範囲を歩き回ってエサを求めることができるようになります。
結果として、餓死するシカが減ってシカの生存率が上がったのです。
さらに、温暖化の影響で山岳地域の積雪量や積雪期間が減少しています。
これにより、冬季の生存率が向上し、特にシカやイノシシなどの大型獣の個体数が増加しています。積雪が少なくなることで、これらの動物が冬季に餌を見つけやすくなり、厳しい冬を乗り越える個体が増えているのです。この結果、春から秋にかけての農作物被害が増加するだけでなく、通年で被害が発生するようになっています。
気温の上昇
まず、気温の上昇により、これまで寒冷地であった地域の気候が温暖化し、害獣の生息可能な範囲が北方や高標高地域へと拡大しています。
例えば、静岡県の中山間地では、野生鳥獣による農作物の食害や茶園の踏み荒らしなどの被害が増加しています。
特にニホンジカの生息域拡大が顕著で、高山帯や多雪地域にまで分布を広げており、これらの地域の固有の生態系に大きな影響を与えています。高山植物の食害や、これまで害獣の影響を受けていなかった農地での被害が新たに報告されるようになっています。
気温上昇は植物の生育環境も変化させ、害獣の餌となる植物の分布や生育時期に影響を与えています。これが害獣の行動パターンや生息域の変化を引き起こし、従来とは異なる地域や時期に被害が発生する原因となっています。例えば、特定の果実の収穫期が早まることで、害獣の活動時期と農作物の収穫期が重なり、被害が増加するケースが報告されています。
春の訪れのはやまり
また、温暖化により春の訪れが早まり、秋が遅くなることで、害獣の活動期間が延長されています。
これにより、繁殖の機会が増え、個体数の増加につながっています。
特に、イノシシなどの繁殖力の高い動物では、年間の出産回数が増加する可能性があり、個体数の急激な増加を引き起こしています。
ニホンジカの増加は、生態系にも深刻な影響を与えています。
例えば、静岡県では、ニホンジカの採食圧や踏み付けにより自然植生が消失し、裸地化して土壌浸食が起きています。これは単に植生の問題だけでなく、土砂災害の危険性の増加にもつながると懸念されています。
異常気象
気候変動に伴う極端な気象現象の増加も、害獣問題に影響を与えています。
大雨や干ばつなどの自然災害により、害獣の生息地が破壊されることがあります。
その結果、新たな生息地を求めて人里に近づく個体が増え、農作物被害や人との軋轢が増加しています。
また、極端な気象は害獣の餌となる野生の植物の生育にも影響を与え、食料不足から人里に餌を求めてくる害獣が増加する可能性もあります。
対策
長期的には、地球温暖化の抑制に向けた取り組みが不可欠です。同時に、生態系全体のバランスを考慮した害獣管理計画の策定や、農業生産方式の見直し、耕作放棄地の管理、森林の適切な管理など、人間の土地利用のあり方も含めた総合的なアプローチが求められています。
また、地域ごとの詳細な調査と対策が重要です。気候変動の影響は地域によって異なるため、各地域の特性に応じた柔軟な対応が必要となっています。
わな
また、ICTシステムを活用した囲いわなのような先進的な技術の導入や、林業経営体に対するニホンジカによる幼齢木の食害や皮剥ぎを防ぐ防護柵等の設置支援など、総合的な対策を推進しています。
しかし、これらの対策だけでは十分ではありません。地球温暖化と害獣問題は、農業生産や生態系保全、さらには人間の生活環境に大きな影響を与える重要な課題です。この問題の解決には、環境保全、農業政策、野生動物管理など、多岐にわたる分野の専門家や地域住民の協力が不可欠であり、社会全体で取り組むべき課題となっています。