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鳥獣保護管理法
生物保護や自然環境保全の観点から重要である鳥獣保護法は、なくてはならないものですがそれが一因で獣害増加も引き起こしています
保護重視の姿勢による影響
当初の鳥獣保護法は、野生動物の保護に重点を置いていました。
これにより、一部の動物種、特にシカやイノシシなどの大型獣の個体数が急激に増加しました。
例えば、環境省の調査によると、ニホンジカの個体数は1989年から2014年の間に約3倍に増加したとされています。
狩猟規制の強化による影響
法律により狩猟期間や狩猟可能な動物種の制限が強化されました。これにより、害獣の個体数調整が難しくなりました。具体的には、狩猟期間が短縮されたり、一日当たりの捕獲数に制限が設けられたりしました。その結果、効果的な個体数管理が困難になりました。
狩猟者の減少と高齢化
規制強化や狩猟免許取得の厳格化により、狩猟者の数が減少し、特に若い世代の狩猟者が減少しました。環境省の統計によると、狩猟免許所持者数は1975年の約51万人から2015年には約20万人まで減少しています。
また、狩猟者の平均年齢も上昇しており、2015年時点で60歳を超えています。
生息環境の変化への対応の遅れ
耕作放棄地の増加や里山の管理不足などの環境変化に法律が対応できませんでした。
例えば、農林水産省の統計によると、耕作放棄地面積は1975年の約13万ヘクタールから2015年には約42万ヘクタールまで増加しています。
これらの環境変化が害獣にとって好適な生息環境を提供し、個体数増加につながりました。
「管理」概念の導入の遅れ
当初の法律では「保護」に重点が置かれ、増えすぎた動物の「管理」という概念が明確に位置づけられていませんでした。これにより、害獣化した動物への対応が遅れました。
例えば、ニホンザルによる農作物被害が深刻化しても、長年にわたって効果的な対策が取られませんでした。
農作物被害の増加
これらの要因により、特にシカやイノシシなどの大型獣の個体数が増加し、農作物被害が深刻化しました。
農林水産省の統計によると、野生鳥獣による農作物被害額は2000年度の約200億円から2010年度には約239億円まで増加しました。
生態系への影響
害獣の増加は農作物被害だけでなく、生態系にも大きな影響を与えています。
例えば、奈良県の大台ヶ原では、シカの食害により森林の下層植生が著しく減少し、土壌流出や希少植物の絶滅危機などの問題が生じています。
法律改正
これらの問題に対応するため、2014年に法律が改正され、「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律(鳥獣保護管理法)」となりました。
この改正により、「管理」の概念が明確に導入され、増えすぎた鳥獣の個体数を適切に管理することが可能になりました。
また、指定管理鳥獣捕獲等事業が創設され、都道府県が主体となってニホンジカやイノシシなどの捕獲を強化できるようになりました。
例えば、長野県では「野生鳥獣被害対策本部」を設置し、関係部局が連携して総合的・効果的な対策を推進しています。
しかし、長年の個体数増加の影響は大きく、現在も多くの地域で害獣被害が問題となっています。効果的な害獣対策には、法律の枠組みだけでなく、地域の実情に応じた総合的なアプローチが必要とされています。
これには、適切な個体数管理、生息環境の管理、被害防除対策、そして地域住民の協力など、多面的な取り組みが含まれます。