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高齢化
獣害の増加の原因の一つに日本の高齢化があります。
農村部の高齢化の現状
日本の農村部では、急速な高齢化が進行しています。2020年の国勢調査によると、日本全体の高齢化率(65歳以上の人口比率)が28.6%であるのに対し、農村部ではこの数字がさらに高くなっています1。
農村の高齢化率は2020年時点で35.0%となっており、推定される都市部の高齢化率から20年程度先行しているのが現状です。
なお、農村の高齢化率は1970年には8.7%でしたが、1980年に10%、2000年に20%、2015年に30%を突破しました。
具体的な例として、和歌山県の事例が挙げられます。和歌山県では2000年から2020年の間に約15万人の人口減少があり、1年あたり約7,000人のペースで人口が減少しています。
この傾向は多くの農村地域で見られ、高齢化率が40%を超える自治体も珍しくありません。
農地の管理不足
高齢化により、農作業や農地の維持管理が困難になっています。
耕作放棄地の増加:高齢農家が農業を続けられなくなり、耕作を放棄する土地が増えています。
これらの放棄地は野生動物の隠れ家や餌場となります。
・農地周辺の環境悪化:草刈りや藪の管理が行き届かなくなり、野生動物が接近しやすい環境が生まれています。
・作物残さの放置:高齢者には収穫後の作物残さを適切に処理する体力がない場合があり、これらが野生動物の餌となっています。
獣害対策の実施困難
高齢者には、物理的な獣害対策を実施することが難しくなっています。
・電気柵の設置・維持管理の困難:重労働である電気柵の設置や日々の点検・修理が困難になっています。
・見回りの減少:体力の低下により、頻繁な農地の見回りが難しくなり、獣害の早期発見・対策が遅れがちです。
・新技術導入の遅れ:ICTなどの新しい獣害対策技術の導入に抵抗感がある高齢者も多く、効果的な対策が遅れる原因となっています。
地域コミュニティの弱体化
高齢化と人口減少により、地域全体で獣害対策に取り組む体制が弱くなっています。
・集落ぐるみの対策の減少:かつては地域ぐるみで行われていた見回りや追い払いなどの活動が減少しています。
・情報共有の不足:高齢者のみの世帯が増えることで、獣害に関する情報共有が滞りがちになっています。
・若い世代の不在:後継者不足により、新しい対策方法の導入や長期的な計画立案が困難になっています。
狩猟者の減少
狩猟者の高齢化と後継者不足により、個体数管理が難しくなっています。
・狩猟者の引退:現在の狩猟者は高齢化により引退が相次いでいます。
・後継者不足:若い世代の狩猟者が増えていないため、野生動物の個体数管理が困難になっています。
・捕獲技術の継承不足:熟練した狩猟者の減少により、効果的な捕獲技術が次世代に継承されにくくなっています。
農業の担い手不足
高齢化による農業の担い手不足は、間接的に獣害増加につながっています。
・農地の縮小:耕作面積の減少により、野生動物の生息域が人里近くまで拡大しています。
・農業技術の継承不足:獣害に強い作物の選択や栽培方法などの知識が次世代に継承されにくくなっています。
・新規就農者の獣害対策スキル不足:経験の浅い新規就農者は、獣害対策のノウハウが不足しがちです。
集落機能の低下
高齢化による集落機能の低下は、獣害対策の実施を困難にしています。
・リーダーシップの不在:獣害対策をリードする人材が不足し、組織的な取り組みが難しくなっています。
・資金不足:高齢者のみの世帯が増えることで、獣害対策に必要な資金の確保が困難になっています。
・行政との連携不足:高齢化により行政との連携が弱まり、補助金や支援制度の活用が進まない傾向があります。
これらの要因が複合的に作用し、高齢化は獣害の増加に大きな影響を与えています。解決には、ICTの活用>や地域間連携、新規就農者の支援など、総合的なアプローチが必要です。
また、都市部の住民との具体的なつながりを作り、地域全体で獣害対策に取り組む体制を構築することが重要です。